全身麻酔の疑問 親知らずや胃カメラでも必要?喘息患者や生理中はだめ?
- 作成:2016/09/01
「全身麻酔」というと、大きな手術をイメージするかもしれませんが、親知らずや胃カメラの際にかけることもあります。喘息患者や生理中の患者にかけられるかどうかを含めてい、全身麻酔の疑問を、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
親知らずでも全身麻酔をかけることがある?
いわゆる「親知らず」という歯は正式には「智歯(ちし)」と呼ばれ、前歯の中央から数えて8番目の歯を指します。下顎(したあご)の智歯の多くは、曲がって生えてきたり、正常に表に出ず埋没したまま(正式には埋伏智歯)の場合も多くあります。
親知らずの抜歯と言っても、歯科医院や病院の外来への通院で簡単に抜歯出来るものから、入院で全身麻酔下に行わなければならないものまで様々のようです。特に、埋伏智歯では、近くの太い血管や神経を巻き込んでいるものは、出血や神経損傷の危険があり、また、あごの骨の深くにある場合は骨を削る必要があるため、全身麻酔が選択されます。
最近では、複数の埋伏智歯を安全・快適に除去するために、全身麻酔下に抜歯することは、多くの患者さんが希望するなど社会的な要求があり、病院口腔外科の主要な業務の1つになっているようです。
胃カメラでも全身麻酔をかけることがある?
胃カメラなどで行われている麻酔は全身麻酔の1つです。ただ、手術などで用いられる一般の全身麻酔(正式には「閉鎖循環式」麻酔)とは異なる「静脈麻酔」といわれるものです。
胃カメラに対して過度の恐怖感のある方、のどの反射(正式には「咽頭反射」)が強すぎる方などに適応されています。
静脈注射用の麻酔薬である「ミダゾラム」などが使われることが多いようですが、意識を消失させる、いわゆる催眠作用が主で、痛みをとる効果はありませんが。呼吸はやや抑制されます。
10分未満の短時間の場合はともかく、麻酔がそれ以上の時間に及ぶ場合には、安全性の観点から、呼吸抑制を観察し、速やかにマスクなどによる閉鎖循環式麻酔に移行できる準備とモニターなどを用いた十分な監視下で行う必要があります。
喘息患者全身麻酔上に問題がある?どう対応?
手術を受ける患者さんが喘息をわずらっている場合があります。喘息は全身麻酔に対してリスクの高い合併症の1つとされています。
麻酔中に喘息発作を起こす頻度は、1%から6%と報告にばらつきがありますが、以下の2つの要素などが関係しているとされます。
(1)術前に気管支拡張薬が使用されていること
(2)最終の喘息発作から手術までの期間
術前に喘息発作のコントロールがうまくできていない患者さんでは、定時手術(緊急性のない予定の手術)は延期されることがあります。
喘息患者さんの全身麻酔では、麻酔をかける(麻酔導入)時と麻酔からさめる時に発作が誘発されやすく、とくに注意が必要です。理由は、本来最も刺激を避けるべき部位である気管に、「チューブが挿入される」、「気管内の痰(たん)など分泌物を吸引する」、「チューブを抜きとる」などの操作が加えられるうえに、自律神経のアンバランスから気管支の収縮が引き起こされやすい時期でもあるからです。
とはいえ、現在、コントロール良好な喘息患者さんは、全身麻酔は気管支拡張作用のある吸入麻酔(特に気道の刺激性の少ないもの)を中心に行い、麻酔薬や、その他の薬剤で気管支収縮作用のあるものを避け、麻酔の導入・覚醒時期を十分にケアすることで、発作を起こすことなく安全に行えるようになっています。
生理中の患者は全身麻酔上に問題がある?
全身麻酔を受ける患者さんが生理中である場合、生理であること自体は麻酔に対して何ら問題はありません。手術中の生理からの出血に対しては、紙オムツなどで看護婦さんが、しっかり対処してくれますので安心して下さい。
問題となるのは、術前の生理の出血がひどく、貧血が高度になっている方です。目安としては、血液検査のHb(ヘモグロビン)値が「8.0 g/dl以下」、Ht(ヘマトクリット)値「25%以下」の貧血がある場合です。
前もって予定された手術で延期できるのであれば、鉄剤などで貧血の改善を待ってからにした方が良いということになるでしょう。緊急手術では、輸血の準備をして行われることが多いと思われます。
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全身麻酔の疑問について、ご紹介しました。全趾麻酔に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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