科学的に「死」とは?3つのサイン、死亡確認の方法とは?医師しかできない?
- 作成:2016/09/28
「死」という言葉を知らない人はいないかもしれませんが、実際に科学的に「死」が何を意味するのか理解している人は多くないと思います。死の3つのサインや死亡確認の方法、日本で、医師しか「死亡確認ができない理由」を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
目次
科学的に「死」とは何か?
「人の死」(専門的には“個体死”)の定義のうち、「生命の環(わ)を構成する“心臓”、“肺”、または“脳”の少なくとも1つの機能が永久的に停止すること」とされるものは、「医学的死」または「臨床的死」といわれています。「医学的死」または「臨床的死」は、一般的な死亡のイメージに近いと言えます。
なかでも、肺と心臓とによって営まれている呼吸機能と循環機能(心臓を中心とした血液の流れ)の消失は、比較的に識別しやすいので、古くから、個体死は心臓の拍動と呼吸運動の消失とされてきました。「心臓が止まった」とか「息を引き取った」という世間一般の人の死を表す表現は、とても的を射ていると言うことができます。
一方、個体を構成するすべての細胞が死滅してはじめて個体死とする考え方としては「生物学的死」がありますが、一般的ではありません。
体の機能が停止すれば、体全体の細胞は結果的に全て死ぬことにます。その意味では、臨床的死は、最終的には生物学的死に至ります。「生物学的死」は、「臨床的死」の結果として起きますが、体のすべての細胞が死ぬのを待つのは、死を判定する上などでは実際的ではありません。
死亡確認の方法 4つ(3つ)の条件と科学的根拠
個体死の判定の根拠の1つとして、「3徴候説(「死の3徴候」とも)」があります。以下の3つが条件となります。
(1)心拍の停止
(2)呼吸の停止
(3)対光反射(後述)の消失など脳機能の停止
3つが揃ったことによる死の判定は、臨床的に日常用いられ、法医学的・社会的にも受け入れられています。「3徴候説」に対し、心臓、肺、または脳のいずれか1つの臓器の不可逆的な(もとに戻らない)機能停止による死の判定は「1徴候説」というものがあります。新しい概念である「脳死」の判定の根拠にもなっています。一般に受け入れられている3徴候死は、「心臓死」ともよばれています。
臨床の現場における死亡確認(死の判定)は、死の3徴候を確認する方法がとられています。医師により行う順番など多少の違いはあるようですが、一般的には次のような手順で3つ、あるいは4つの方法により行われます。
(A) 手首の動脈(橈骨動脈(とうこつどうみゃく))、または首の動脈(頚動脈(けいどうみゃく))に触れて、脈拍がないこと;(1)の確認
(B) ペンライトなどによる対光反射の消失、および瞳孔の散大など;(3)の確認 。対光反射とは、生存している人に瞳孔に外から光を当てると、収縮する反応です
(C) 胸部の聴診による心音および呼吸音の消失;(1)(2)の確認。
(D) 心電図モニターにおいて心拍(波形)がなく、フラット(平坦)になっていること。心電図が利用できない状況では、省略されます。
日本の病院などでは、慣習的に心電図がフラットになってはじめて死亡確認をおこなうところも多いようです。
死亡確認は医師しかできない?なぜ?
死亡診断書(死体検案書)は、人の死亡を医学的・法律的に証明する公的文書であり、死亡の届けを行う際の添付書類としても重要なものになっています。法律的には医師によって交付されることが義務付けられています。
「死亡確認」すなわち「死亡の診断」は、死亡診断書の作成に関連して、医師によってのみ行われることになっています。医師法20条では、医師には「自ら診察しないままの診断書の交付、自ら検案しないままの検案書の交付を行ってはならない」旨などが規定され、無診察治療などの禁止が規定されています。
死亡を確認する行為は、当然、死体を対象とする検査ですが、実際は、生前の診察と一連の行為として考えられ、「診察」という概念に含められています。実際には、臨時の当直医が死亡確認を行い、後に主治医が死亡診断書を作成するという例外も認められているようですが、原則的には医師が診察をして死亡確認をした後、死亡診断書を作成・交付することになっています。いずれにせよ医師が確認することが必須となります。
死亡診断書は、亡くなった方の死亡に至るまでの過程を可能な限り詳細に論理的に表すものです。死亡確認が医師のみしかできない理由としては、死亡確認を含む死亡の診断を行うにあたっては、「人体の解剖、生理、病理などについて総ての知識を有する医師のみが、正確に判断する能力を持っていると認められる」というのが理由とされています。
死の定義や死亡確認の方法などをご紹介しました。疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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