脳死状態とは?5つの判定基準は何?回復する可能性はある?
- 作成:2016/03/30
「脳死」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思いますが、「脳死」とは一体どのような状況か理解している人は少ないと思います。脳死からの回復可能性も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
脳死とはどんな状態?どんな原因でなる?回復する可能性はある?
脳は、大脳、小脳、脳幹(のうかん)からなっています。中脳、橋(きょう)および延髄(えんずい)は「下位脳」幹といわれ、呼吸や循環などの生命維持機能の中枢です。
脳死とは「脳幹を含む全脳髄(のうずい)が不可逆的に機能を消失した状態」と定義されています。脳死状態では、呼吸機能の中枢である脳幹の機能が失われているので、自力の呼吸(自発呼吸)は止まります。一方、いわゆる「植物状態」では、大脳や小脳の機能が失われているので、目をさますこともなく寝たきりとなりますが、脳幹機能は残されているので、自発呼吸は保たれていることも多く、心臓の運動も止まりません。
脳死となってしまう原因としては、くも膜下出血や脳出血などの脳血管障害、脳挫傷(ざしょう)などの頭部外傷のほか、子どもでは脳炎や脳症なども多いようです。脳死状態では、自発呼吸が止まるので人工呼吸を行いますが、一定時間後には心臓の動きも止まるとされています。しかし、特に子どものケースに多いのですが、長期間にわたって心臓が動き続けたという報告があります。脳死は植物状態と異なり、脳幹も死んでしまっています。現在の医学では回復する可能性はないと考えられています。
「脳死判定」の前提条件
法律上の脳死判定を行う場合には、前提となる条件が定められています。「脳血管障害や頭部外傷などの脳障害により、深昏睡(しんこんすい;後述)および自発呼吸の消失した状態」となっていて、かつ「原因の脳障害が確実に診断されている」、さらに「原因の脳障害に対して行い得るすべての適切な治療を行っても回復の可能性がない」と判断される場合です。原因不明の病気で、脳死状態となった患者さんに対しては、脳死判定は行えないことになります。
脳死の5つの判定基準
脳死とするために必須である5項目の判定基準があります。
1. 深昏睡の状態であること;
強い痛みなどの刺激に対しても覚醒しない(目を覚まさない)状態を「昏睡」といいますが、あらゆる刺激に対して何の反応もしないのが深昏睡です。
2. 両側の瞳孔の直径が4mm以上で、瞳孔の大きさが固定していること;
これは、脳幹(主に中脳)の機能不全をあらわしています。
3. 脳幹反射が消失していること;
脳幹反射とは、さまざまな刺激により起こる反射の中枢(神経核という細胞)が脳幹にあるものです。以下に主な反射を挙げますが、判定においては7つの脳幹反射のすべてが失われていることが必須です。①対光反射:瞳孔に光を当てると瞳孔が縮む(縮瞳;しゅくどう)反射。②角膜反射:綿捧の先をよって細くしたもので眼球表面の角膜に触れると、まばたきをする反射。③咽頭(いんとう)反射:吸引用のカテーテルで咽頭の壁を刺激すると、筋肉が収縮し吐き出すような動きが起こる反射。④咳(せき)反射:吸引用カテーテルで気管を刺激したときに咳が起こる反射。
4. 脳波が平坦となっていること;
脳の神経細胞の電気信号をとらえる脳波計で、脳波の活動が全く消失していることを確認します。高感度での記録を含めて、全体で30分以上の計測、記録が求められています。
5. 自発呼吸が消失していること;
人工呼吸を中止して行う「無呼吸テスト」により、自発呼吸が不可逆的に消失していることが確認されます。
脳死と臓器移植の関係 全員が移植になるわけでない?
脳死の判定には2種類あります。1つは臓器移植法に定められた「法的脳死判定」で、あくまでも臓器の提供を前提とした脳死の判定です。また、臓器移植に関係する場合のみ、脳死が“人の死”として法的にも認められています。一方、臓器移植とは関係しない「一般の脳死判定」があります。臨床の現場では脳死状態が疑われる状況が、臓器の提供を前提としていない患者さんにも、もちろん起きます。治療方針の決定などのために、これまで通りの一般的な脳死判定が行われています。この場合は脳死と判定されても、患者さんは移植とは何ら関係はありません。
【関連の他の記事】
植物状態(遷延性意識障害)とは?回復可能性、定義、脳死との違い、原因などを解説 意識はある?ない?
脳死の判定基準などについてご紹介しました。身内や知り合いの状況に不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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