ニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)の原因、症状、治療、再発可能性

  • 作成:2016/05/10

ニューモチス肺炎(カリニ肺炎)は、真菌の1種類が原因となって発症する肺炎です。通常は発症しませんが、エイズやがんの治療などで、免疫(体の中の病原体と戦う機能)の力が落ちている場合に、発症します。症状や治療を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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ニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)とは

ニューモシスチス肺炎の病原体(原因となるもの)は「ニューモシスチス・イロベチー」という真菌です。以前はこの病原体を「ニューモシスチス・カリニ」と呼んでいましたが(そのため、ニューモシスチス肺炎は「カリニ肺炎」とも呼ばれていました。)、動物に感染するものだけを「カリニ」と呼び、ヒトに感染するものは「イロベチー」と区別するようになりました。

この病原体はどこにでもいて、多くの人が子供のうちに感染していますが、健康な人であればその免疫力で容易に退治できるため、通常発症することはありません。しかし、免疫力が低下するような状態になると、日常生活で再感染することにより、肺炎を発症します。免疫力が低下した状態とは具体的に以下のような場合です。

・エイズの発症している場合
・臓器移植や膠原病などでステロイド・免疫抑制剤の服用している場合
・癌で抗癌剤を使用している場合

ニューモシスチス肺炎の症状は?何科で、どんな検査?

初めは風邪のような症状で、その後肺炎に特徴的な症状が現れ始めます。発熱・咳・全身倦怠感などです。ニューモシスチス肺炎の特徴として、咳は痰(たん)の排出を伴わない乾いた咳です。肺から酸素を取り込む力も低下するので、息苦しさが現れたり、「チアノーゼ」と呼ばれる皮膚が紫色になる変化が現れることもあります。

症状を考えると、通常は呼吸器内科を受診することが多いですが、初めは内科でも問題ありません。可能であればレントゲンが撮れる施設がよいと思われます。胸のレントゲンは簡単に検査でき、ニューモシスチス肺炎に、特徴的な結果を見分けることができます。基本は左右の肺の全体がすりガラスのように白くなっています。また、CTでみると、「嚢胞(のうほう)」と呼ばれる空気の袋がみられます。診断の際、ニューモシスチス肺炎を発症する土台となる免疫力の低下が不明な場合は、エイズなどの病気がないかをあわせて診断します。確定診断(この病気で間違いないという診断)には「気管支洗浄液」と呼ばれるものを採取します。これは気管支にカメラを入れて、目的の場所に対して生理食塩水を入れ、その水を回収し、特殊な染色をして病原体を確認する方法です。

ニューモシスチス肺炎の治療

ニューモシスチス肺炎はもともと免疫力が低下している人に発症するので、残念ながら発症すると死亡率の高い疾患です。ただ、早急に治療を開始できた場合は、救命率が上がります。早い治療開始が重要なため、場合によっては検査の結果を待たずに治療を始めることもあります。治療の基本は薬物療法です。飲み薬や点滴で病原体であるニューモシスチス・イロベチーそのものの治療をします。肺炎の状態が重症である時にはステロイドを併用します。

同時に免疫力が低下している状態に対しても治療を行います。エイズの場合はエイズの治療を、ステロイドや免疫抑制剤を服用している場合は可能であれば薬を中止する場合があるほか、別の免疫力に影響のない治療方法がある場合は、治療を変更します。

ニューモシスチス肺炎は再発する?予防方法は?

免疫抑制状態が継続していれば、ニューモシスチス肺炎は再発する可能性があります。そのため治療により肺炎が改善しても、免疫抑制状態が続いていれば、その後再び感染しないように薬を継続します。

また、エイズと診断された直後や、ステロイド・免疫抑制剤の長期の使用で、免疫力が低下することが予想される場合は、ニューモシスチス肺炎を発症していなくても、予防的に薬を使うこともあります。

ニューモシスチス肺炎についてご紹介しました。肺炎のような症状で原因がわからなくて不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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