高血圧性脳症の原因、症状、治療 後遺症や死亡の可能性も?頭痛との違いは?
- 作成:2016/04/19
「高血圧性脳症」とは、血圧の上昇が原因で、脳にむくみができる状態です。吐き気や嘔吐が主な症状ですが、治療をしないと後遺症が残ったり、死にいたることもあります。基準値や症状などを、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
高血圧性脳症のメカニズム
脳は、血圧の変化に対応して、血圧が上がった場合は血管を拡張させ、血圧が下がった場合は血管を収縮させて、脳の血流が一定になるように調整をしています。しかし、調整には限界があり、調節できないほど血圧が上昇すると脳の血流は増大します。その結果、血管から液体成分が脳にしみだして、脳がむくみ、頭蓋骨の中の圧力がかかって、様々な症状が表れます。これが「高血圧性脳症」です。
高血圧性脳症の原因
高血圧性脳症を引き起こす原因となる、基礎疾患として、きちんと治療されていない慢性の高血圧や動脈硬化、腎不全、妊娠高血圧症候群、「褐色細胞腫」と呼ばれるホルモン異常、血管炎、薬物中毒などがあります。
高血圧性脳症と頭痛の違い
高血圧性脳症において、厳密に血圧の目安となる数値はありませんが、1つの目安として普段から高血圧と診断されている人で、「220/110mmHg以上」となることが多いです。血圧が高くて頭が痛いという人はよくいますが、血圧が「220/110mmHg以上」でなく、普段の血圧よりも20mmHg程度高い場合は、血圧が高くて頭痛がするのではなく、頭痛があって、痛みのストレスなどにより血圧が上がっている状態です。これは「高血圧性脳症」とは考えません。
痛みによる血圧の上昇の場合は、鎮痛剤などで頭痛がおさまり、血圧が元の数字に戻れば問題はありません。自分の判断で降圧剤(血圧を下げる薬)を増やしたりしてはいけません。
高血圧性脳症の症状と検査 「体の一部のみ」はまれ
高血圧性脳症でよくみられる症状は高血圧、吐き気、嘔吐です。そのほかに意識障害、けいれん、視力低下なども起きることがあります。体の一部分だけに症状が出ることはほとんどありません。
頭の画像検査を行うと、脳がむくんだ状態を反映した結果が出ます。眼底検査を行うと、「乳頭浮腫」と呼ばれる状態や出血、白斑といった高血圧性の変化があります。ただ、治療は緊急を要するため、検査を行わず治療に入ることもあります。血圧が低下して症状が改善すれば、診断的治療(特定の病気を想定して治療すること)として、「高血圧性脳症だった」と判断します。
高血圧性脳症の治療
治療は血圧を下げることが優先されます。内服薬(飲み薬)もしくは点滴で降圧剤を投与します。ただし40%以上の急激な降圧は逆に脳血流を低下させて脳虚血を引き起こす危険性があります。そのため最初の1時間は25%以内の降圧にとどめ、次の6時間で拡張期血圧(いわつる「下の血圧」)を110mmHg程度になるよう調節します。
そのほかに、脳のむくみをとる治療として「抗浮腫薬」と呼ばれる薬を投与することもあります。またけいれんが出ている場合は、抗けいれん剤を併用します。
高血圧性脳症になると後遺症は残る?
治療が早急に行われれば症状は改善し、脳のむくみも消えます。通常は2、3日、遅くとも1週間以内に症状は消失します。しかし血圧を下げる治療が行われないと症状は進行し、死に至ることもあります。
高血圧性脳症は脳だけでなく、全身の血圧が上がっている状態の為、他の臓器の後遺症を残すこともあります。眼底出血や心不全、腎不全などとなることがありえますので、治療が重要です。
高血圧性脳症についてご紹介しました。高血圧性脳症に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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