心にぽっかり穴が空いたような虚脱感…「荷下ろしうつ病」って何?リスクが高い人の共通点は?

  • 作成:2021/09/28

AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、長年勤めた会社を退職後、虚脱感に苦しんでいる方からのご相談です。

この記事の目安時間は3分です

心にぽっかり穴が空いたような虚脱感…「荷下ろしうつ病」って何?リスクが高い人の共通点は?

【今回のお悩み】
半世紀近くも同じ会社に勤め、充実したサラリーマン人生を生きてきました。
家族もほったらかしで、仕事一筋でした。しかし、66歳で会社を退職しました。
達成感と開放感が訪れるものと思っていましたが、心に大きな穴が開いたような虚脱感と全身倦怠感が襲ってきました。心療内科の受診をしてみるか、迷っています。

「誰かに貢献する癖」をやめて、もっと自分を優先して

長らくのお勤め、大変お疲れ様でございました。
ご自分の楽しみも興味も時間も体力も、全て会社に注ぎ込んで、一心に貢献されてきたご様子が目に浮かびます。これから家族との時間を作り、今までできなかったことを楽しもうと思われていたところでの心身の不調で、さぞかし戸惑われたかと思います。
ご相談を拝見すると、「燃え尽き症候群」や「荷下ろしうつ病」と言われる状態が懸念されます。燃え尽き症候群は、WHOが規定する国際疾病分類(ICD-11、2022年発効予定)によって、慢性的な職場のストレスの結果生まれる症候群と新しく定義づけられました。荷下ろしうつ病は正式な病名ではありませんが、長い間の頑張りが終わり、ホッとした時に生じやすいうつ状態のことです。

良いことであれ悪いことであれ、大きな変化は我々にとって強いストレスになります。
仕事という大切なパートナーを失ってしまった、というふうに脳が驚いてしまうと、これは当然ストレスです。このような変化で脳内の神経の働きが暴走してしまった結果として、気分の落ち込みや意欲の低下、身体のだるさといった不自由さが出現しても不思議ではありません。

燃え尽き症候群や荷下ろしうつ病では、他にも不安になりやすい、怒りっぽい、自分を責めてしまうといった症状が出ることがあります。人によっては、考えがうまくまとまらない、やめようと思っても繰り返し同じことを考えてしまう、記憶力が低下するという変化も生じます。また、眠れない、めまいや頭痛がする、吐き気がするといった身体面の変調が現れることもあります。

特に、責任感が強く、ひたむきに頑張り続ける力を持っている方ほど、燃え尽きやすい傾向があると言われています。ご相談者は、「誰かに貢献する癖」がついてらっしゃると思いますが、今後はご自分が大切にしたいことを優先して、もっとご自分に正直に生きていく練習をすると、より良い生活を送れるのではないでしょうか。

一人でできる努力は十分にされたと思いますので、これまで後回しにされてきたご自身の体を労わることからはじめることをお勧めします。心療内科や精神科の受診を是非なさってください。
こんなことを考えていて良いのだろうかと悩まれている心の内をお話いただくだけでも、随分楽になって元気が戻ることもあります。第二の人生を謳歌するための準備として、心療内科や精神科で心身のメンテナンスをしてみて下さい。

林 安奈(はやし・あんな)/精神科医・産業医

VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 パートナー医師

東京女子医科大学医学部医学科卒業。東京女子医科大学病院にて臨床初期研修修了後、東京女子医科大学精神医学講座に所属し、同大学の緩和ケアチームや吉祥寺病院等で精神科医として研鑽を積みつつ、医学博士号取得。現在は多くの企業で産業医としても活動している。

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