【いま読みたい】年上の部下から「バカじゃないの?」顔を合わせると動悸がして苦しいです。
- 作成:2023/03/20
AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、年上の部下に問い詰められて動悸がするというご相談です。
この記事の目安時間は3分です
【今回のお悩み】
自分より年上の部下が、質問に対して回答しても「本当に大丈夫ですか」「それでいいんですか」「責任取れるんですか」などと問い詰めてきます。バカじゃないの、と言われたこともあり、その頃から突然激しく動悸が始まるようになりました。
動悸が始まると、彼女の話が半分くらいしか入って来なくなります。彼女から離れて、しばらくすると治りますが、これは様子を見ていればそのうち良くなりますか?(50代・女性)
医師の回答
部下の言動であっても「パワハラ」にあたる可能性はある
ご質問ありがとうございます。
どうにもやりづらい状況かと思いますが、よく我慢されておりますね。
我慢は日本人の美徳と言われておりますが、最近は風潮が変わってきており、法改正までなされておりますので、ご紹介してみようかと思います。
かなり攻撃的なコミュニケーションをとられるお相手のようですので、ご自分を守るためにも「逃げ出したい」という気持ちになって当たり前ですし、動悸がしたり、頭がうまく回らなくなることは、体が危険を知らせてくれていると考えてよいでしょう。
これだけ症状が出ている以上は、よほどの環境変化がなければ、自然に良くなる可能性は低いように思います。
また、この環境が続けば、どんなにご体調が回復しても再燃のリスクがあります。改善のためには、ご自身の体調を回復させることと、職場環境を改善することの二つの柱が必要となります。
職場環境改善の根拠として、ご相談内容を拝見する限りでは、パワーハラスメント(以下、パワハラ)に該当するように見受けられます。
部下の言動であってもパワハラというのかと疑問に感じられるかもしれませんが、そもそもパワハラとは①優越的な関係を背景として、②業務上必要かつ相当な範囲を超えて、③労働者の就業環境が害される、場合に定義されます。
部下という立場であっても必要な知識や経験を有しており、協力が得られなければ業務が円滑に遂行できない場合や、集団による行為であった場合には部下から上司へのパワハラに該当することがあります。
今年4月から、すべての企業にパワハラ防止措置が義務付け
2020年よりパワハラ防止法が適用され、2022年4月からは、全ての企業に防止措置が義務付けられるようになりました。このように、ハラスメントが横行する事態を放置してはいけないという機運が高まっております。
厚生労働省の「あかるい職場応援団」のHPにパワハラの類型や対策、相談窓口などがとてもよくまとめてありますので、是非ご覧いただければと思います。
これ以上、我慢をする必要はありませんので、まずは職場の上司の方や、ハラスメント相談窓口があれば、そちらでもご相談してみてください。
また、そもそも体の病気が隠れていないかは確認しておく必要がありますので、内科を含めて心療内科や精神科など受診をしてみていただくことをお勧めいたします。
安心してお仕事に取り組める状況になることを、心より願っております。
林 安奈(はやし・あんな)
精神科医・産業医
東京女子医科大学医学部医学科卒業。東京女子医科大学病院にて臨床初期研修修了後、東京女子医科大学精神医学講座に所属し、同大学の緩和ケアチームや吉祥寺病院等で精神科医として研鑽を積みつつ、医学博士号取得。現在は多くの企業で産業医としても活動している。
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