適応障害で休業1年。主治医は復職を勧めてくるが、まだ怖い…

  • 作成:2021/11/30

AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、適応障害で休職し、仕事への復帰に不安を感じているというご相談です。

この記事の目安時間は3分です

適応障害で休業1年。主治医は復職を勧めてくるが、まだ怖い… 適応障害で休業1年。主治医は復職を勧めてくるが、まだ怖い…

【今回のお悩み】
仕事へのプレッシャーやストレスから適応障害になり、1年ほど休職しています。当初は睡眠障害や通勤電車の中で吐き気をも催す等の症状があったのですが、休暇を取得したことや、薬のおかげで快方に向かっています。
しかし、仕事でミスを繰り返していた経験がトラウマになっているのか、現在でも会社に行くのが怖い状況が続いています。通院中のクリニックで勤務時の状況を詳細に伝えているのですが、「少しずつ仕事に戻り、克服していくしかない」と言われてしまいます。でも、自分としては、また同じ状況を繰り返してしまう気がして、復職するのが怖いです。
このような状況の克服法について、ネットで調べた限りでは「認知行動療法」というものがあるようですが、実際にどのようなことをするのか、今の自身の状況とマッチするものなのかよくわかりません。(20代・男性)

【医師の回答】「リワークプログラム」でサポートを受けながら対策を練っては

身体に症状が出てしまうほどですので、さぞかし大変な思いをされたことでしょう。
ただ、厳しいかもしれませんが、すでに1年間の休職と治療を継続されている状況ですので、主治医の先生の判断はもっともかと思います。
どうしても会社に対して恨みに思ってしまう側面があるかもしれませんが、これほど長期間の解雇猶予期間である休職制度を設けられる企業は大企業に限られ、通常は3か月程度であることは申し添えておきたいと思います。

相談者さんが気になっておられる「認知行動療法」とは、考え方や行動の癖を把握して、変えやすい部分から少しずつ修正を加えることで、心の負担を軽くしていく治療法です。
1回あたり30分~1時間、1~2週間に1回、複数回実施されることが一般的です。回復率が高く、再発率が低いとても効果的な治療法ですが、もちろんデメリットはあります。

認知行動療法では、過去のつらかった出来事やその時の感情や行動を具体的に話す必要があるため、一時的に調子が悪くなってしまう方がいらっしゃいます。また、すぐに効果が出るわけではないこと、ご自身が主体的に取り組まないと変化が見込めないこと、費用が高いこと、どこでも実施できるわけではないこと、などがデメリットとして挙げられます。

「会社に行くのが怖い」「仕事のプレッシャーやストレスで、またミスを繰り返し、眠れなくなったり吐き気に悩まされたりする日々が続くのが怖い」という具体的なお悩みに対しては、「リワークプログラム」をご利用された方がより良い結果が得られるかもしれません。
リワークプログラムは、スムーズに復職するための練習をするプログラムです。精神科クリニックなどで実施する「医療リワーク」、会社が従業員向けにリワークプログラムを用意している「職場リワーク」などがあります。

プログラムの内容は様々ですが、例えば決まった時間に施設に通うなど、会社への通勤を想定した訓練を行います。事務作業や軽作業といった実際の業務に類似した負荷をかけてのトレーニングや、集団生活に慣れる目的でのレクリエーション、最終的にはディスカッションなども設定されています。リワークプログラムを通して把握した自分の得意不得意や不調になりやすい原因を説明できるようにするといった目的で、「自分の取扱説明書」を作ることを最終目標とされるような場所もあります。
数か月単位の長丁場のプログラムが主体ですが、最適なサポートを得ながら、休職に至った要因を探り、対策を練ることが可能となります。

プログラムの中で、認知行動療法などの心理療法も行われますので、まずは医療リワークや職場リワークなどの制度がないか、主治医や会社にご相談されてみてはいかがでしょうか。

せっかく大企業に就職できるほどの優秀な力を持ってらっしゃる方です。ご自身の能力を存分に発揮し、ご活躍できる状態に回復されることを、心より祈っております。

林 安奈(はやし・あんな)/精神科医・産業医

VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 パートナー医師

東京女子医科大学医学部医学科卒業。東京女子医科大学病院にて臨床初期研修修了後、東京女子医科大学精神医学講座に所属し、同大学の緩和ケアチームや吉祥寺病院等で精神科医として研鑽を積みつつ、医学博士号取得。現在は多くの企業で産業医としても活動している。

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