1カ月の休職から復職したものの、仕事がイヤでたまらない…精神科医がいう「4大ストレス」と回復への近道は?
- 作成:2022/05/18
AskDoctorsに寄せられたお悩みをマンガで紹介し、医師からの回答を紹介する本シリーズ。今回ご紹介するのは、欠勤を機に仕事がいやになってしまった男性からのご相談です。
この記事の目安時間は3分です
【今回のお悩み】
人事異動により、勤務地、仕事の内容と量、人間関係が変わりました。最初の2カ月は、がむしゃらに頑張っていました。しかし、その後に咽頭炎をわずらい、数日間欠勤しました。すると、今まで我慢して頑張ってきた緊張の糸が切れ、仕事に行きたくない気持ちが強く出てきて、医師からもらった診断書や、喉の痛みを理由に、1カ月間の欠勤をしてしまいました。
最近、職場に復帰したのですが、仕事に全く興味が湧かず、一刻も早くこの人間関係から逃れたい強い気持ちがあり、喉の痛みを理由に定時帰宅させてもらっています。同僚から冷たい目で見られ、目を合わせてくれない人も数人います。上司に全てを打ち明けて所属部門を変えて欲しいとお願いしたのですが、できないそうです。鬱までいかないまでも、精神的にかなり参ってしまって何も手につきません。精神科に通院することも検討しています。アドバイス、お願いします。(40代・男性)
医師の回答
ポジティブな変化もストレスになる
ご相談ありがとうございます。かなりお辛いご様子ですね。
相談者さんの状況は、非常にストレスフルなものだったのではないかと推察します。
働く人には、大きく分けて4つのストレスがあります。
- 業務(量×質)
- 人間関係
- 働く環境
- プライベートの要因
私はこれを「4大ストレス」と呼んでいるのですが、相談者さんは人事異動によってこのうちの3つ(業務、人間関係、働く環境)が大きく変化しています。もしかして引っ越し等があれば4つ全てが変化したのかもしれません。
人間はたとえポジティブなものであっても、変化にはストレスを感じる生き物です。例えば、結婚や出産、昇進など喜ばしいと考えられるものでも、変化そのものにストレスを感じます。
相談者さんは何とか乗り越えようとがむしゃらに立ち向かった結果、燃え尽きたような状態になっているのかもしれません。燃え尽きたままでは、変化とストレスには立ち向かえません。まずは一度しっかり体調を立て直すことが重要です。
しっかり休むことは実は近道
ある程度の元気を取り戻すためには、精神科への通院で専門家の助けを借りることが近道になります。不眠や不安などの症状が強ければ、必要に応じてお薬を使うのは非常に良い方法です。また、しっかりとまとまった休みを取ることも重要です。
この1ヶ月はお休みされていたとのことですが、おそらく「仕事はどうなっただろう」「なんて説明しよう」「明日こそはいかなきゃ」と 様々なことを考えてしまい、しっかり休めなかったのではないでしょうか? 気持ちばかりが急いてしまっていませんでしたか?
そういった意味では、きちんと見通しを立てて、まとまった期間の休みを取ったほうがかえって近道になります。
職場のことが心配になってしまうでしょうが、一人が休んでも回っていくのが組織です。また、ある程度、見通しが立ったほうが職場としても計画が立てられますから、心配しすぎる必要はありません。しっかり体調を整えてから、また活躍すればいいのです。
働きながら治療を続けるのが良いか、いったん休む方が良いかは相談者様の体調や状況によって変わりますのでこちらも主治医に相談するとよいでしょう。
安心して休むための、傷病手当禁や自立支援医療制度
おやすみ中は、経済的な不安などがあると思います。そこで、傷病手当金や自立支援医療制度の利用など検討すると良いでしょう。
傷病手当金は、一定期間以上休んだ場合に、お給料の約2/3を支給してくれる制度です。詳しいことは会社や所属している健康保険組合に問い合わせるとよいでしょう。
自立支援医療制度は、精神科の継続的な通院を補助してくれる制度です。お住まいの自治体に申請する必要がありますので、受診したら主治医に相談すると良いでしょう。
詳しいことは、下記のリンクやお住まいの自治体の窓口等で聞くと良いでしょう。
最後になりますが、仕事を辞めるなどの大きな決断は、体調が回復してからにしましょう。なかなか今は事態が好転する兆しが見えないかもしれませんが、体調が回復し、心にゆとりができれば打開策も浮かぶはずです。慌てずに、体調の回復を優先させましょう。
全国健康保険協会(協会けんぽ)
厚生労働省
堤多可弘(つつみ・たかひろ)
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷 副院長/精神科医・産業医
弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。 現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長とスタートアップへのアドバイザー業務を務めるとともに、企業や行政機関の産業医を10か所以上担当。ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。 共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医 」(祥伝社新書)がある。
note: https://note.com/music_takahiro
Twitter: https://twitter.com/djbboytt
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