「会社を休む度に診断書が必要で、お金がかかる…」第2回Club CaNoWセミナーは、がん患者の「お金と仕事の悩み」に専門家が直接回答!
- 作成:2022/07/26
がん患者さんとご家族のための会員制コミュニティ「Club CaNoW」(https://clubcanow.com/)は、毎月1回、がん医療に関するセミナーを開催しています。その第2回として、6月23日に「賢い患者になるために知っておきたい、仕事とお金の話」が開かれました。講師は、日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科教授・部長の勝俣範之先生。進行役は、がん経験者で全国がん患者連絡会・理事長の天野慎介さんが務めました。 セミナー後アンケートでは、参加したClub CaNoW会員の97.4%が「セミナーに満足した」と回答。治療や生活支援のための各種制度の使い方、忙しい主治医への伝え方など盛りだくさんの内容となりました。
この記事の目安時間は3分です
がん治療と仕事を両立できる時代に
前半の勝俣先生による講演は、「がんになったら仕事をやめなければならない、〇か×か」という問いかけからスタート。勝俣先生は厚生労働省の研究班ががん患者を対象に行った調査のデータを示しながら、「がんになったら仕事を続けるのは難しいと考えている人はとても多い。会社などに勤めている人の3割以上が依願退職をしたり解雇されたりしています」と現状を紹介しました。
しかし、近年のがん治療は、手術だけでなく放射線や薬物療法、つらい症状をやわらげてQOL(生活の質)を維持する緩和ケアも目覚ましく進歩してきています。鏡視下手術やロボット手術といった体に負担が少ない手術法の導入で、入院日数は短縮。抗がん剤治療も、副作用対策が充実して入院の必要がなくなり、通院で行う病院が増えてきました。
厚労省が、外来通院化学療法中の患者支援に診療報酬を付けるなど、患者さんが働きながら治療を受ける仕組みが整いつつあることも、勝俣先生は紹介されました。
高額な費用も、がんの「副作用」の一つ
その一方で、多くの患者さんを悩ませているのが、お金の問題です。分子標的薬のような新たな薬が続々と開発・承認され、使える薬が増えているのは喜ばしいことなのですが、費用が高額で、近年は「高額な費用も副作用の一つ」と言われているそうです。
勝俣先生は、こうした費用負担を軽減するためにさまざまな支援制度があることを紹介し、特に活用しやすい「高額療養費制度」「傷病手当金」「障害年金」の3つについて、内容や取得の条件、申請のコツなどを詳しく説明しました。いずれも患者さん側から申請をしないかぎり受給できないといった注意点も。「患者さんは制度を知って、活用してください」と呼びかけました。
講演の終盤で取り上げたのは、「治療中の仕事や生活のことは、病院側にどう相談すればいいのか」というトピック。がんと診断されたあとも毎日の生活は続いていきますし、治療での副作用で体調を崩し、仕事や家事を休まなければならなくあることもあるでしょう。お金のことだけでなく家族や将来のことなど、患者さんは多くの不安を抱えます。
がん経験者の天野さんは「主治医はいつも忙しそう、次の患者さんが待っているからといった理由で、遠慮してしまう患者さんもたくさんいます」という指摘しました。
勝俣先生は、主治医に相談の時間を確保してもらうための頼み方や、主治医に効率よく大切なことを伝えるコツなどを助言。さらに、がん診療拠点病院に設置されている「がん相談支援センター」、患者会、支援団体など、主治医以外にもさまざまな相談先があることも紹介し、活用を呼びかけました。
質疑応答には視聴者から仕事関連の切実な相談も
セミナーの後半は質疑応答でした。
まず、天野さんから、主治医とのかかわり方や支援制度、家族に関する心配事について、いくつか質問しました。その一つが「自分が使える金銭的支援だけを知りたい、どのように調べればいいのでしょうか」というもの。
勝俣先生は、手軽に調べられる方法として「がん情報サービス」や「がん制度ドック」といったサイトを紹介。さらに「制度をよく知るソーシャルワーカーや社会保険労務士に相談するのもおすすめです」と回答しました。
視聴者からもリアルタイムでたくさんの質問が寄せられました。抗がん剤治療をしながら働いている方々からは「会社の制度上、休むたびに診断書が必要でお金がかかる」「体力的に自信がないのに転勤になりそう。転勤しないで済む方法はないか」「主治医に障害年金申請のための診断書を依頼したら断られた。主治医以外に作成をしてもらえないか」といった切実な相談も。
勝俣先生が具体的にどう行動すればいいか助言したほか、天野さんも別の視点で問題解決につながるさまざまな知恵を提供してくれました。
一人で悩まず、誰かに助けを求めて
盛りだくさんの内容となったセミナーの最後に、勝俣先生はこう呼びかけました。
「がんの治療も大事ですが、それ以上に大切なのが『患者さんの生活』です。患者さんは治療以外のことは医療者に相談できないと考えがちですが、医療者側も相談に応じる態勢は作っているので、ぜひ相談してください。私たち医療者は患者さんの生活も大切にしながら患者さんと一緒に治療をしていきたいと思っています」
セミナー終了後は、視聴したみなさんから多くの感想が寄せられました。
「色々な専門家の人に相談し、突破出来る道を模索してみようと思えてとても良かった」「相談してみないと何も始まらないと背中を押していく勇気をもらった」「病気以外の不安要素を取り除くことが、治療自体を良い方向に向かわせる材料になると思った」といった前向きな感想も。勝俣先生と天野さんからの「一人で悩まないで。必ず味方になってくれる人はいる」という力強いメッセージは、みなさんにしっかりと届いたのではないでしょうか。
Club CaNoWでは、今後も月1回、専門家の先生をお呼びして、治療の助けになるような医療知識をどこよりもわかりやすくお届けする医療セミナーを開催予定です。加えて、月1回、治療生活を応援するための会員向けイベントも企画しています。
次回の医療セミナーは7月29日(金)19:00~20:15を予定。
乳がん治療医100名へ「今後1~3年の乳がん治療を大きく変える可能性のあるトピックス」を募ったアンケート結果を元に、「治療編」と「患者サポート編」の2つに分け、特に票数の多かったトピックスの中から厳選した内容について、がん研有明病院 乳腺内科部長の高野利実先生にご解説いただきます。
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