実は主治医に言いにくい…「がんの痛み」を上手に伝えるポイント――第6回Club CaNoWオンラインセミナー
- 作成:2022/12/10
10月28日(金)、第6回Club CaNoWオンラインセミナーが開催されました。今回のテーマは「治療に良い影響を与える痛みの伝え方とは」。がんの患者さんは治療中にさまざまな痛みを感じていますが、医師に伝えることを遠慮したり、相談の仕方に悩んだりすることも少なくありません。しかし、痛みを上手に伝えてコントロールできると、QOL(生活の質)だけでなく治療選択にも良い影響をもたらすことがあります。セミナーでは治療を前向きに進めるための「痛みの伝え方」について、青森県立中央病院副院長で緩和医療科部長の的場元弘先生にお話しいただきました。進行役は、悪性リンパ腫のサバイバーで、患者会「グループ・ネクサス・ジャパン」と全国がん患者団体連合会の代表を務める理事長の天野慎介さんです。
この記事の目安時間は6分です
「どこが」「いつから」「どんなふうに」痛いのか
セミナーの前半は、的場先生による講演でした。
がんの患者さんに生じる痛みはさまざまで、がんの病巣に関連する痛み、治療による痛み、慢性の膝痛や腰痛などがんとは直接関係ない痛みもあります。がんの患者さんの1/4から1/3は診断時点から痛みがあり、病状が進行すると7~8割の人が痛みを経験すると言われているそうです。
医師に痛みを伝える時のポイントは、「どこが痛いのか」「いつから痛くなったのか」「どんなふうに痛いのか」を明確にすること。
「これらは痛みの原因を考える上でとても大事です。主治医は『この患者さんは腰が痛い』と思っていたけれど 実は違うところも痛かったということもあります。痛みの場所をうまく伝えるには、口頭で伝えるだけでなく、絵に書いて説明するといいでしょう。例えば、肩が痛いと言っても、腕の付け根の肩が痛いのか、肩甲骨が痛いのかでは、痛みの原因が違うこともあります」(的場先生)
また、痛みの影響でできなくなったこと、生活の中で困っていることも具体的に話してほしいと言います。
「がんの治療は『生活をしながら受ける』という視点がとても大切です。例えば、痛みで眠れないなどの困りごとを仰っていただければ、眠れるようにすることが痛みの治療の目標になります。また、医師だけでなく、看護師にも伝えることをおすすめします。看護師は生活支援が重要な役割なので、わかってくださる方も多いと思います」(的場先生)
痛みがあっても伝えていない患者さんも
しかし、的場先生は「すべての医師が痛みの治療に精通しているわけではないのも事実」と話します。主治医が痛みの訴えに耳を傾けてくれないというのも、実はよくあること。
また、「痛みについて聞かれなかったから言わなかった」「治療中止になるのが怖くて言い出せなかった」など、痛みがあっても伝えられていない患者さんも少なくありません。
「痛いなら患者さんのほうから伝えてくれるだろうと思っている医師もいるので、患者さん側も、きちんと伝えるよう心がけることが大事です。とくに治療の副作用による痛みは、『治療は続けたいが、痛みの対処も同時にしたい』など自分の状況と希望をきちんと伝えましょう。遠回しに言っても伝わらず、苦しい状況が続くことになりかねません」
的場先生はポイントを次のようにまとめました。
- 痛みは患者さんから言わなければ医師が知らないままで、痛みの治療が始められない。
- 痛みは悪化させないことが大事。痛み治療の目標は生活への影響を改善する。
- 主治医に伝えにくい時は、専門の看護師や薬剤師、がんリハビリスタッフなどに相談する。
- がんの治療による副作用は我慢しても回復しない。重症化すると回復が難しくなる。自己判断せずに医師に伝えること。
- 痺れは、内容に応じて治療や対処の方法が変わることがあるので、「こんなふうに痺れている」と詳しく伝えていただきたい。
主治医とのコミュニケーションの問題や痛み止めの疑問に回答
セミナーの後半は「教えて先生」と題し、事前に用意した質問やセミナー中に視聴者から寄せられた質問に、的場先生が回答しました。
1つ目は「忙しそうな主治医に、賢く痛みを伝えるコツを教えてください」という質問です。的場先生は「メモを作っておき、診察の最初に『ご相談したいことをメモしてきたので診察後にお話しさせてください』と伝えておくのも、大事なコミュニケーションの方法」とアドバイスしました。
続いての質問は「主治医に『院内の緩和ケアチームに診てもらいたい』と言ったら、嫌そうな顔をされた」。
緩和ケアはがんが進んだ状態になってからのケアだと誤解されがちですが、本来は治療のどの段階であっても受けられるもの。しかし主治医側に緩和ケアチームに頼む習慣がないと、スムーズにいかないこともあると言います。また、いきなり主治医に「緩和ケアを受けたい」というと、「間接的に治療をやめたいんだな」と誤解されてしまうことも。
的場先生は、主治医への伝え方のポイントや具体的な言い方を紹介。さらに「看護職や薬剤師を通じて医師に伝えるのも一つの方法」と、回答しました。
「痛み止めを使いすぎると効かなくなるような気がして不安」という質問も。医療用の麻薬を含めて痛み止めはだんだん慣れて効かなくなるものだと思われがちです。
しかし的場先生は「痛みを抑える量の医療用麻薬を使っても、効かなくなる(耐性ができる)ことはない。耐性は起こりにくいことが科学的に証明されています」ときっぱり。
さらに、働きながらがんを治療している人からは、「会社の同僚たちにどこまで痛みを伝えていいのかわからない」といった相談や、現在受けている痛みの治療に関する質問も寄せられました。
主治医に話せない時は他の医療従事者に相談を
セミナーの最後に、的場先生は視聴者に向けてこう語りかけました。
「今日は主治医に伝えることの大切さについてお話させていただきましたが、どうしてもうまくいかない時には治療に携わっている主治医以外の医療従事者に相談をしてください。自分のかかっている医療機関にはどんなスタッフがいるのかを知っておき、スタッフと情報交換ができるしくみをご自身で作るようにしていただければと思います」
今回のセミナー後に実施したアンケートでは、参加したClub CaNoW会員の87.8%が「セミナーに満足した」と回答しました。皆様からは「医師側は言われない限りは分からない、とはっきり明言いただいたことがありがたかった」「非常に実践的な内容だった。さっそく次回の診察で主治医に痛みの場所や困っていることを書いたノートを見てもらいながら伝えようと思う」などのコメントが寄せられました。
Club CaNoWでは、今後も月1回、専門家の先生をお呼びして、治療の助けになるような医療知識をどこよりもわかりやすくお届けする医療セミナーを開催予定です。加えて、月1回、治療生活を応援するための会員向けイベントも企画しています。
次回のセミナーは2022年12月12日(月) 18:30~19:45を予定。
テーマは「【がん治療医100名が選ぶ】今後1~3年の大腸がん治療を変える注目トピックス」です。特定のがん種をテーマにしたセミナーシリーズ、7月の乳がん・9月の肺がんに続く第3弾は大腸がんを取り上げます。大腸がん治療医100名へ「今後1~3年の大腸がん治療を大きく変える可能性のあるトピックス」を募ったアンケート結果を元に、最先端の薬物治療や、大腸がん特有の治療の選択肢、QOLを維持した治療選択の方法について、愛知県がんセンターの室圭先生にご解説頂きます。
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