うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟− 長女に発達障害を告知したその後…。そして、長男にも告知した時の驚くべき反応
- 作成:2021/10/30
外科医のちっちです。前回の記事では、当時小2だった長女いっちに自閉スペクトラム症であることを告知したときの話を書きました。今回は、告知後のいっちはどうなったのかと、長男にっちへの告知についてお話しします。
この記事の目安時間は3分です
発達障害の告知から1年後、本人の気持ちは
いっちは、子ども向けの自閉症に関する本のおかげで、自分が自閉スペクトラム症だと納得したようでした。
その後の診察の時に、いっちの発言など(自分で図書館に行って自閉症を調べたうえで、自分は障害者ではないと言ったこと)を児童精神科医に伝えました。先生は「本人の気持ちを尊重して、次回(2年後)の療育手帳の更新はやめてもいいかもしれませんね」ということでした。
その後1年ほど経って、本人に次回の更新をしたいかどうか尋ねてみました。
「手帳を持っていてどうだった? これからもあったほうがいいかな? 最近できることがたくさん増えて困っていることがないから(まだ少々あるけれど)、更新しても、しなくても、あなたの好きにしていいよ」
するといっちは、「療育は楽しいから行きたいし、(手帳割引で)美術館とか行けるから更新しようかな」と、前向きな気持ちを持っているようでした。希望通りに手帳も更新しました。親としてもポジティブにとらえていることを知り、安心しました。
かんしゃくやパニックを起こしやすい長男への告知
さて、いっちはなんとかなりました。一方、長男にっちに自閉症のことを伝えることは怖かったのです。
診断を受けた年長の頃は、些細なことで「殴る蹴る壊す暴れる」ことが多かったにっち。被害妄想も強く、なんてことない言葉も、すべて否定的にとらえて怒る子どもでした。
「あなたは自閉症だ」と伝える前に我々が予想した、にっちの反応は怒って暴れるだろうというものでした。
さぁ暴れるにっちに、殴らせない、殴られない、そんな覚悟をして切り出します。
「あのね、にっちは自閉症という変わったところがあるんだ。にっちはほかの人より心が大きくて、まだ体が小さい今は持て余してしまっているみたい。だから、一回、嫌だなとか、怖いなとか思ってしまうと、その気持ちが大きくなりすぎて体が困ってしまう。
だけど、その分、嬉しいとか、面白いとかのいい気持ちも沢山持てるよ」
イメージとしてその時に書いたイラスト↓
人それぞれの個性だし、手帳は色々お得だし
恐る恐る切り出した時の、本人の反応はというと
にっち「………………」
我々の予想に反し、黙って聞いていました。
にっちは頼りにしている姉もそうだと聞いているためか、自閉症だと言われることに抵抗はないようでした。
通級指導教室へ新たに行くことになったときも、祖父母に「今度にっちは通級に行くんだ」とか、「にっちはジヘーショーだから」と話していたのです。
先日、機嫌のよさそうなとき、にっちに「自閉症って言われるの嫌じゃないの?」と聞いてみると、「にっちはすぐ怒っちゃうけど、それは人それぞれの個性だし、手帳は色々お得だし。みんなにも聞かれないし全然平気」と前向きにとらえているようでした。
親は「なんてことない」と、どっしり構えていたほうがいい
前回の記事でお話ししたとおり、自閉症や発達障害の告知を「いつ」行うかについては、考えが分かれます。
ただ、知的障害を伴わない場合や、療育や通級を利用する場合などは、本人たち自身が「周りと違うこと」を薄々気づいています。それなのに説明せずにこのまま生活することは、悪いことではないのに隠し事をしているようで、私たちには違和感がありました。
そのため、わが家では年長・小学校低学年の診断を受けたときに、「障害に対する、自分たち親の理解を噛み砕いて伝える」形で告知しました。
これは医師として思うことですが、臨床では「エビデンスの高い研究結果から、効率がよく成功の可能性が高い選択肢がわかっていても、目の前の症例に対しその選択肢を選んで本当に正解か」はわかりません。
簡単に言うと「その治療方法が成功する可能性が高いという実験結果があっても、その人に効くかどうかはわからない」ということです。
ただ、「発達障害だろうがなんだろうが関係なく、3人の子どもたちが大切で大好きだ」「あなたは素晴らしい人間だと私たち両親は思っている」ということには自信があります。親としても人間としても未熟な我々は、そこを頼りに日々生活しています。
外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟」
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる」
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti
関連するQ&A
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
-
「障害者手帳はあったほうがいい?」迷いの解決は、メリット・デメリットを知ることから。
発達障害
子育て
-
うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟— 前兆なし。突然始まった不登園…ひきこもりになった4歳次男〈前編〉
発達障害
子育て
-
うちの凸凹?外科医と発達障害の3人姉弟?? 次男の「かんしゃく」を防ぐために、外科医が手作りした「気持ちカード」の効果
子育て
発達障害
-
うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟— 4歳次男の不登園と引きこもり。園長の「ある一言」が氷解のきっかけに〈後編〉
発達障害
子育て
-
うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟− 発達障害の「告知」…子ども自身にいつ、どうやって伝える?
発達障害
子育て
-
うちの凸凹―外科医と発達障害の3人姉弟――ようやくたどり着いた発達障害の診断
発達障害
子育て
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。