うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟— 4歳次男の不登園と引きこもり。園長の「ある一言」が氷解のきっかけに〈後編〉
- 作成:2022/01/15
日に日に冬が近づいてきましたね。外科医のちっちです。前回(前編)は次男さんちに突然始まった不登園とひきこもりについてお話ししました。妻と2人で悩む中、夫婦で出した答えは…後編は我が家の解決方法をご紹介します。
この記事の目安時間は3分です
不登園の対策は「何もしない」を極める
自閉傾向のある次男さんち。喘息の発作で1週間、幼稚園を休んで以降、不登園が始まりました。
最初のうちは、意識的に「せめて散歩くらいは」と、本人はあまり気が進まない中、誘ったりしていました。しかし、むしろ悪化していく様子だったので散歩にも行かず、完全に引きこもり生活になりました。
色々と考えすぎて疲れたので、私は仕事に集中し、妻は特別に何かをしないことを徹底しました。幼稚園どころか、外は行かないのが当たり前。この頃のさんちは、コロッケと動画に強いこだわりがあったので、言われたらコロッケを買って食べさせる、動画を見せる。これだけです。
「焦ってはいけない」という大原則に従っていたものの…
引きこもって2カ月くらい経ってからは、少しずつ家の外に出られるようになったので、幼稚園の話題は出さず、動画以外のさんちのやりたいことを積み重ねていきました。
- 遊園地に、はっは(妻)と2人で行った
- ドクターイエローの通過時間を調べて、新幹線の駅まで見に行った
- 公園まで行って、とんぼ返りで帰った
- 忍者が好きなので、忍者ショーを見に行った
このやりたいことを引き出すのも、なかなか苦労しました。
なぜなら、さんちは完全に自分を閉じて、 自分の世界に入っていたからです。そんな風にすごしているうちに、少しずつ、元のたれ目で穏やかなさんちに戻っているように見えました。
「焦ってはいけない」という大原則に従ってはいたものの、当事者目線から見るとびっくりするほど毎日変化が感じられません。
「少し外に出たら数日出ないで家にいる」の繰り返し。何度も何度も、このままでいいのだろうか、いや本人が外に行きたがるまで放っておくしかない、と自問自答しました。
季節も変わり、4カ月が経った春頃、やっと表情は和らぎ、家では楽しく過ごすようになりました。
家の外に抵抗なく出かけられるようになったこと、「まだ幼稚園だし行かなくても別にいいか」と親として焦らずに余裕を持てたことから、やっと私たちの気持ちも上向きました。
同時に、これが就学後で、学校に行けないとなっていたら、学習の遅れで焦ってしまうだろうと感じました。
不登園(校)児についてどこに相談すればいい?
さんちも、きっと長女や長男と同じで、発達障害なのだろう、と思いました。
「療育を含め、介入するならば早い方がいい」と夫婦で意見は一致し、児童相談所に電話をしました。そして、状況を説明して心理検査を受ける予約をしましたが、6カ月待ちです。相談の電話で、「さんちくんは頑張りすぎたようなので、少し休ませてもいいのでは」と言われました。
私たちはさんちが不調になる前から、長女いっちと長男にっちのことで小学校のスクールカウンセラーの先生と月に一度面談していました。ですから、さんちの引きこもりが始まり、心と生活が乱れてからは親の気持ちの整理、アドバイスをいただくことができました。
そして、「子育てに困ったら児童相談所に相談する」という手段を知っていたので、孤立せずにすみました。
しかし、外部に助けを求めても日単位ではまったく変化がなく、気持ちが焦り、沈みがちになることが、身に染みてよく分かりました。
ちょっとしたきっかけで不登園から脱出!
乱れたさんちの心と体。再び幼稚園に行けるようになったきっかけは、園長先生の「日曜日に誰もいない幼稚園に遊びに来ませんか?」とのお誘いでした。
「おともだちいないならいってみようかなぁ」というさんちを連れて、1カ月ほど遊びに行くうちに、コロナで完全に休園になりました。このとき、仕事や事情のある家庭のみが通園ができました。実は我が家は、その頃、妻が手術をして自宅療養中でした。おかげで、というのも変ですが、さんちは通園の許可が出ました。
毎日1人か2人しかいない幼稚園に2カ月。そこから、園が再開してもそのまま行くことができるようになりました。幼稚園との関りを少しずつ保ち、スモールステップで通園できたこと、そこが良かったのだろうと思います。園長先生の心遣いに感謝しています。
見守ることは、かなりの忍耐が必要
その後のさんちですが、ときどき「行きたくない」と言い出すこともあります。そのときには否定せず「そっかぁ」と休んで家でのんびりしています。そうすると、2~3日で「明日は行こうかな」と気持ちを立て直せるようです。
見守ることは、かなりの忍耐が必要です。でも、生命力にあふれる子どもはいつか必ず、また外の世界で生きていける、そう信じて今後も見守ろうと思います。
外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟」
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる」
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti
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