高齢者が薬の副作用を起こしやすい、主な2つの理由
- 作成:2021/10/24
薬には副作用が付き物ですが、その副作用は、若い人よりも高齢者の方が出やすい傾向にあります。そのため、昔からずっと飲んでいる薬、昔よく使っていた薬・・・といったものであっても、改めて服用した際に思わぬ副作用を起こすことがあります。こうした副作用を起こしやすくなるのはなぜでしょうか。
この記事の目安時間は3分です
高齢者が薬の副作用を起こしやすい、大きな2つの理由
高齢者が薬の副作用を起こしやすい理由にはさまざまなものが考えられますが、大きな理由としては、下記の2点が挙げられます。
①いろいろな疾患を抱えていることが多い
② 腎臓や肝臓などの機能が衰えている
たとえば、高齢者では複数の病気を抱えている人が多いため、必然的にたくさんの薬を使うケースが増えます。使う薬の数が増えればそれだけ副作用のリスクは高くなりますし、また使う薬の組み合わせや持病との兼ね合いによっては、薬の副作用が出やすくなってしまうこともあります。
抱えているトラブルも“高血圧”や“糖尿病”のように治療が長期間に渡るものが多くなり、薬を使う期間が長くなることも副作用を起こしやすくする要因になります。
一方、薬は肝臓や腎臓で分解・代謝されて体の外へと出て行きますが、分解・代謝の能力は加齢によって確実に衰えていきます。そのため、同じ薬を同じ量だけ使ったとしても、若い人より高齢者の方が副作用が出やすくなるのです。他にも、体の筋肉量や水分量が少ないことから、若い人とは違った薬の分布(薬の体内における吸収や移動)のしかたをすることもあります。
日常生活の様々なところに、副作用リスクを高めるものがある
身体的な理由のほかにも、副作用リスクを高める要因は、日常生活のいたるところに潜んでいます。
たとえば高齢になると、トイレが近くなるのを嫌がってあまり水を飲まなくなったり、暑さや喉の渇きを感じにくくなったり、「エアコンは体に悪い」という思い込みで冷房を使わなかったりするため、熱中症や脱水症を起こしやすい傾向があります。脱水症状は、薬による腎障害のリスクを高めてしまうことがあります。
また、高齢になると薬に書かれた小さな文字や数字が見えにくくなったり、耳が遠くなり薬をもらった際に医師や薬剤師の説明を聞き間違えることもあります。 これによって、使う薬や用法・用量を間違え てしまうケースも 増えてくるでしょう。こうした要因も、薬の副作用に大きく影響します。
「いつもの薬」「使い慣れた薬」であっても、こまめに医師や薬剤師と相談を
ドラッグストア等で購入できる風邪薬(総合感冒薬)は気軽に広く使われていますが、50歳以上の男性の16人に1人は、尿が出にくくなるなどの副作用を経験している、という報告があります1)。
また、漢方薬は副作用の少ない薬として人気がありますが、これも若い人に比べると、高齢者では副作用が出やすい傾向があるといわれています2)。つまり、「いつもの薬」や「使い慣れた薬」であっても、歳をとってくると“これまで通りに安全に使える”とは限らなくなってくる、ということです。
こうした副作用を避けるためには、医師や薬剤師とこまめに相談をするのがお勧めです。医師には、普段の生活で困っている症状や、気になる副作用の症状をしっかりと伝え、より自分に合った治療方針を選んでもらいましょう。
薬剤師には、他の病院から処方されている薬や市販薬・健康食品の内容、また薬の扱いで困ることを正確に伝え、いま処方されている薬に思わぬリスクが潜んでいないかどうかを確認してもらいましょう。こうした日頃からの地道なコミュニケーションで、自分の身体と健康を守るようにしてください。
1) 薬学雑誌.128(9):1301-9,(2008)
2) 日本東洋医学雑誌.61(3):299-307,(2010)
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