抱っこしないと眠らない…赤ちゃんの「夜泣き」と「寝かしつけの習慣」の関係
- 作成:2021/12/21
こんにちは、森田麻里子です。私は医師で、赤ちゃんの睡眠トラブルについて情報発信やアドバイス等を行っています。この連載では、夜泣きや、なかなか寝てくれない、朝起きるのが早すぎる、といったお悩みについて、解決のヒントをお伝えしていきたいと思います。
この記事の目安時間は3分です
環境を整えるだけでは夜泣きは収まらない!?
ここまでの3回の連載では、赤ちゃんにぐっすり眠ってもらうための生活習慣や寝室環境の整え方についてお話ししてきました。しかし、生活習慣や寝室環境を改善するだけでは、 夜泣きがなかなか改善しないこともあります。特に、夜中1〜2時間ごとに起きて、抱っこや授乳をしないと眠ってくれない、というパターンが典型的です。
実はそのような場合、寝かしつけの習慣が原因となって夜泣きが起こっているケースが多いのです。このような夜泣きを改善するためには、保護者の方がしっかりと睡眠の仕組みを理解した上で対処することが大切です。そこで今回は、なぜ寝かしつけの習慣が原因となって夜泣きが起こるのかについて、詳しくご説明します。
睡眠にはサイクルがある
まず知っていただきたいのは、私たちの睡眠の構造です。睡眠は、ただ「寝ている」というひとつの状態ではなく、2つの状態に分けられます。それが、レム睡眠とノンレム睡眠です。この名前は、耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
レム睡眠の間は、身体は休んでいますが、脳は活動していて、比較的リアルな夢を見やすいと言われています。
レム睡眠中の人を観察していると、まぶたの下で眼球が素早く動くのがわかります。一方ノンレム睡眠は、さらに3つの段階に分けられます。特にステージ3の深いノンレム睡眠では、脳は休息しています。
通常眠りに入ると、まずノンレム睡眠が現れ、そのあとにレム睡眠、そしてまたノンレム睡眠…と、交互に2つの状態が繰り返されます。この、ノンレム睡眠からレム睡眠の流れひとつ分を「睡眠サイクル」と言い、ひと晩の睡眠は、この睡眠サイクルが何回も繰り返されることによって構成されています。睡眠サイクルの長さは、おとなでは1サイクル90分前後と言われていますが、赤ちゃんではもう少し短く、50〜60分程度と言われています。
睡眠サイクルが発達すると、夜中に誰でも目を覚ます
この睡眠サイクルは、生まれたばかりの赤ちゃんではまだぼんやりとして、はっきりとは区別ができません。 しかし生後2〜6カ月の間、経験的には特に3〜4カ月のうちに、睡眠サイクルが発達してくるのです。睡眠サイクルが発達すると、睡眠はしっかり深くもなりますが、睡眠サイクルどうしの境目では、逆に浅くなるタイミングが出てきます。
実は誰でも、このような睡眠サイクルの境目で、夜中に何度か目を覚ましています。私たちおとなもそうです。「でも、子どもが産まれる前までは、いつも朝までぐっすり眠れていました」という方もいらっしゃるでしょう。いつものお布団でいつも通り寝ていると、ちょっと寝返りをうったりお布団を直したりしてそのまま再び寝つきますから、夜中に目を覚ました時のことは覚えていないのです。
「抱っこや授乳でないと眠れない」が夜泣きにつながるケースも
では、これが、「抱っこされていないと眠れない」、「授乳されていないと(または、ミルクを飲みながらでないと)眠れない」という赤ちゃんだったらどうなるでしょうか?
最初就寝時に寝ついたときには、ママやパパに抱っこされたり授乳されたりしていたはずなのに、目を覚ますと一人でお布団やベッドに寝かされています。緊急事態です! まだ眠いのでもう一度眠ろうとしても、抱っこや授乳をされないと眠れません。そこで、泣いてママ・パパの助けを呼ぶのです。
ママ・パパがやってきて、抱っこや授乳で寝かしつけたとしても、睡眠サイクルの境目がやってきて睡眠が浅くなると、また同じことが起きます。 これが、夜中1〜2時間ごとに起こり、抱っこや授乳をしないと眠れない、という赤ちゃんになってしまうのです。
もちろん、生まれたばかりの赤ちゃんでは、抱っこ、授乳などおとなのサポートが必要なのは普通のことです。また、寝つくときは授乳や抱っこでないとダメでも、夜中は自然と自分で寝つくようになり、夜泣きをしないという子もたくさんいます。ですから決して、抱っこや授乳で寝かしつけてはいけない、ということではありません。
しかし、もし寝かしつけの習慣が原因で夜泣きが起こっているなら、おとなのほうから働きかけてその習慣を変えていくことで、夜泣きを改善することができるのです。
どのようにしたら寝かしつけの習慣を変えることができるのでしょうか。その方法については、次回の連載でお伝えしたいと思います。
森田 麻里子(もりた・まりこ)
医師・小児スリープコンサルタントChild Health Laboratory代表。1987年、東京都生まれ。2012年、東京大学医学部医学科卒業。亀田総合病院での初期研修を経て、2014年、仙台厚生病院麻酔科、2016年より南相馬市立総合病院麻酔科に勤務。
2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より現活動を開始。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務。乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや、育児支援者・医療従事者向け講座などを行う。
著書:『医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』ダイヤモンド社、『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』光文社新書、『子育てで眠れないあなたに』KADOKAWA
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