「自律神経」の乱れで体に症状が現れるのはなぜ?

  • 作成:2022/01/18

自分の体調不良の原因を調べていると、「その不調は自律神経の乱れが原因かも……?」という情報によく出会うと思います。確かに、この「自律神経」が乱れることでさまざま な身体の不調が現れることは有名ですが、そもそもこの「自律神経」というものが何なのかをきちんと理解している人は多くありません。今回はこの「自律神経」というものが何なのかを簡単に解説します。

アスクドクターズ監修ライター アスクドクターズ監修ライター

この記事の目安時間は3分です

「自律神経」の乱れで体に症状が現れるのはなぜ?

「自律神経」とは、環境に合わせて人体を制御するコントロール機能

自律神経とは、簡単に言うと人間の体温や汗、血圧、心拍数、呼吸数・・・などといったさまざまな生理機能を、外の環境に合わせてうまくコントロールしている神経系のことです。たとえば、寒い環境に居ると動物の体温はどんどん下がっていってしまいますが、ヒトの身体は毛細血管を縮めて熱の放出を減らしたり(※血管が縮まるので顔色は青っぽくなる)、身体を小刻みに動かして熱を生み出したり(※そのため寒いと震える)して、体温を上げる方向に動きます。逆に、暑い環境にいると体温はどんどん上がっていってしまいますが、ここでは毛細血管を広げて熱を放出したり(※血管が広がるので顔色は赤っぽくなる)、身体の表面に水分を出して気化熱で身体を冷やしたり(※そのため暑いと汗をかく)して、体温を下げる方向に動きます。

こうした身体の反応は、特に人間が「体温を上げなければ!」とか「体温を下げなければ!」と意識しなくても、勝手に行われます。つまり、自律神経というのは、人間の意識とは関係なく、自動で自律的に働くのが特徴です。そのため、自律的に働く神経系・・・「自律神経」と呼ばれます。

自律神経の2タイプ~「交感神経」と「副交感神経」

自律神経系は大きくわけて「交感神経」と「副交感神経」の2種があります。この2種は、お互いに真逆の方向へ身体を調整するもので、普段はちょうど良いバランスのところでコントロールされています。

「交感神経」は闘争・逃走の神経とも呼ばれ、獲物を仕留めたり強敵から逃げ切ったりするために、動物としての攻撃力や防御力、素早さといった能力を一時的にブーストする方向に働く神経です。現代社会では、主に強いストレスに曝されたときや、身に危険を感じたとき、凄く楽しい出来事があった時などに働きます。たとえば瞳孔が広がり、心臓はドキドキし、呼吸は荒くなり、汗をかきやすくなったりしますが、これらには全て意味があります。

交感神経が優位になると起こる現象

  • 目:瞳孔が開く(視界からたくさんの情報を得られるようになる)
  • 循環器:心拍数・収縮力がUP(全身にたくさんの血液を送り込み、多くのエネルギーを使えるようにする)
  • 呼吸器:気管支が広がる(たくさんの酸素をとりこみ、活発に動けるようにする)
  • 皮膚:汗をかく(活発に動いて体温がオーバーヒートしないように調整する)
  • 肝臓:ブドウ糖を放出する(脳や身体を活発に動かすために必要なエネルギーを大量に供給する)
  • 消化器:消化能力を低下させる(もっと必要な場所にエネルギーを供給するため)

一方で「副交感神経」は、特に身に危険がない環境で身体を休めたりエネルギーを蓄えたりするために働く、いわば休息や回復のための神経です。現代社会では、主に家でくつろいでいる時や、布団で眠りにつくときに働きます。たとえば、心拍数や血圧は低下して身体の活動は鈍くなるほか、食べ物を消化することにエネルギーを使い、不要物を排泄するといった機会も増えます。

副交感神経が優位になると起こる現象

  • 目:瞳孔が狭まる
  • 循環器:心拍数・収縮力がDOWN(無駄なエネルギーを使わない省エネモードになる)
  • 呼吸器:気管支が狭まる(必要な酸素だけ取り込めたらOKなため)
  • 皮膚:汗をかかなくなる(体温が上がらない状況で水分や塩分を節約するため)
  • 肝臓:ブドウ糖を貯蓄する(次の“いざという時”に備えた働き)
  • 消化器:消化を活発に行う

「自律神経」の働きが乱れると、全身にさまざまな症状が現れる

上記のように、全身のさまざまな臓器の働きは「交感神経(闘争or 逃走)」と「副交感神経(休息 or 回復)」という2つの自律神経のバランスによって調整されています。そのため、本来は休息や回復を行いたい状況で「交感神経」が優位になったり、あるいは闘争や逃走が必要な場面で「副交感神経」が優位になったりすると、いろいろと不都合なこと……平たく言うと、“場違いな方向”に身体の状態が進んでいくことになります。

たとえば、「家でゆっくり過ごしていたら、暑くもないのに身体が火照って汗が出てきてドキドキして落ち着かない……」といったような症状は、本来は副交感神経の働きで休息したい場面で、交感神経が優位になってしまったことで起こります。

こうした自律神経系の乱れが厄介なのには、大きく2つ理由があります。

まず、自律神経は文字通り自律しているために意識して整えるのが難しい、という点です。たとえば、妙に汗が出て困っているときに、「今は汗をかく必要がないので、汗を止めよう」と思っても汗が止まるわけではありません。そのため、基本的には“自律的に整う”のを待つほかありません。

また、この自律神経系は全身のあらゆる臓器の働きを制御しているため、働きが乱れると全身のあらゆる臓器でさまざまな不調が現れる、という点です。たとえば、「汗が少し出るだけ」に留まらず、「顔も火照るし、心臓もドキドキするし・・・」といったように、一度にいろいろな症状がまとめて現れてしまう傾向にあります。

このように、自律神経の乱れは非常にコントロールしづらく厄介なもののため、多くの人の生活を困らせる原因となっていますが、現在のところ薬などでピタっとまとめて整えてしまうようなことはできません。自律神経を乱れさせている原因(例:夜更かし、偏食など)を少しずつ取り除いたり、自分が困っている症状に焦点を当てた治療を行ったり、といった方法で対処していく必要があります。

市販の漢方薬などでも効果が期待できるケースもありますが、自律神経の乱れの背景に大きな病気が潜んでいることもあるため、症状が長く続く場合や重い場合には、一度病院で相談することをお勧めします。

病気・症状名から記事を探す

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師