【いま読みたい】ストレス時代に動じない「レジリエンス」を手に入れるには、働く人の「4大ストレス」を自覚することから!
- 作成:2023/03/20
新型コロナの感染拡大によってリモートワークが普及するなど、変化のスピードがますます速くなる今日。ちょっとしたことで動じないメンタルや、たとえ凹んだとしてもしなやかに立ち直る「レジリエンス」は、以前より増して重要になっています。そこで、産業医・精神科医の堤多可弘先生を講師に招き、「『動じないメンタル』の保ち方セミナー」を開催しました。当日の様子を5回シリーズでお届けします。
この記事の目安時間は3分です
そもそもレジリエンスとは何?
今回のキーワードであるレジリエンスとは、ストレスに耐える力のこと。元々は物理用語で、柔軟性やしなやかさみたいな概念といわれています。メンタルが強い人というと、鉄のハートを持っている。何があってもへっちゃらみたいな人を想像しがちですが、実はそうではなくて、柳のようにしなやかにストレスを受け流せる人のこと、まさにこれこそがレジリエンスを持っている人だといえるのです。
このレジリエンスには、以下の3つの要素があります。
(1)弾力性(しなやかさ)
ストレスがあってもうまく跳ね返す、あるいは受け流す力です。この力があればストレスを真っ向から受け止めることはないので、ぐしゃっとつぶれることはありません。
(2)適応力
刻々と変化する環境にうまく適応していく力です。新型コロナ感染拡大で業務がリモートになるなど大きな変化があったときもこの力が問われたと思います。
(3)回復力
ストレスを受けて傷ついたり、気持ちが凹んだりしても、うまく切り替えて立ち直る力です。
今、このレジリエンスという言葉が注目され、個人のメンタルヘルスだけでなく会社などの組織マネジメントの概念としても注目されるようになっています。この背景として、時代の変化のスピードがますます速くなっていることがあります。2019年より以前には、新型コロナの感染拡大で一気にリモートワークやオンラインセミナーが普及するなんて誰も想像しなかったはずです。そんな変化の激しい時代だからこそ、人々がレジリエンスを高めて、ストレスを受け流す力を身に付けたり、自分を取り巻く環境に柔軟に対応することが重要視されているのです。
私は、企業の新入社員向けの講演などで、これからの社会人は「働く力」と「働き続ける力」の両方が必要だと話しています。働く力というのはいわゆるビジネススキル、例えばエクセルやパワーポイントなどができることですが、これらは実務を経験していけば自然と身に付くものです。それよりももっと重要でライバルと差がつきやすいのが働き続ける力、つまり心も体も健康なままパフォーマンスを維持する力で、そのためにもレジリエンスが必要だといえるのです。
若いころは、働く力が重視されますが、ベテランになってくると体力が落ちてくるので、自分をメンテナンスしながら働き続けることが非常に重要になります。働く力と働き続ける力のこの2つが交互に作用し合って人は成長していくことをこの機会に知っておいてほしいと思います。
改めてストレスとは何か?
ここまで、レジリエンス=ストレス耐性力が今ますます重要になっていることを解説してきましたが、改めてこのストレスとは何かについて考えてみたいと思います。普段、何気なくストレスという言葉が使われますが、実際にストレスの中身まで意識している人は少ないと感じています。ただ、その正体を知らないと対処できないので、まずは「働く人の4大ストレス」を以下に紹介します。
(1)業務
(2)人間関係
(3)環境
(4)プライベート
このうち、業務のストレスは「質×量÷スキル」で導かれます。人間関係のストレスは、上司、同僚、部下、顧客などとの関係で生じるものです。また、環境のストレスは体制の変化や仕事のやり方が変わること等で生じます。例えば会社がいきなり買収されて外資系になった、コロナで仕事のやり方が激変したことなどが挙げられます。さらに、プライベートのストレスとは、結婚・育児・出産・病気・介護など、ライフステージによって変わります。
この4つのストレスが相互に作用したり、足を引っ張り合ったり、支え合ったりして、私たちは生きているわけです。
働いている人は、この4つに起因するストレスを必ず持っています。私もカウンセリングをするときは「この4つのどこに一番つらさを感じていますか?」と聞いた後に、その対処法を一緒に考えていきます。
ストレスが心身に与える影響、自律神経の仕組みと対策
ストレスとは何かが分かったところで、この4つのストレスがたまっていくと、人間には何が起きていくかを見ていきたいと思います。ストレスは体のいろいろなところに作用するのですが、今日は自律神経に焦点を当ててお話しします。自律神経は、その名の通り、神経が自分自身でコントロールします。つまり勝手にスイッチをオンオフにして切り替わっているわけです。
上の図のように自律神経には交感神経と副交感神経があります。活動するときは交感神経が優位になって、スイッチがオンになるのです。また、リラックスするときは副交感神経が優位になります。つまりスイッチオフみたいな状態です。
私たちは、ざっくりいうと昼間は交感神経、夜間は副交感神経がメインになるリズムでオンオフを繰り返し、心身のバランスが維持されています。ところが、一日中PCやスマホ画面を見て刺激やストレスを受け続けていると交感神経優位のまま。なかなかスイッチオフができなくなって、自律神経が乱れがちになり眠れなくなったり、食欲がなくなったりしてきます。
こうした毎日を送っていると、次第に心と体に以下の図のようなさまざまな不調が起きてくるのです。
ここで大事なのはあなた自身にはどんな症状が出やすいかということです。私はこれを黄色信号と呼んでいるのですが、この段階でブレーキ踏めば、大きく調子を崩さずに済むので、こういう症状が起きたら要注意ということをぜひ覚えておくようにしてください。
コロナ禍以降、在宅で働く中で生活リズムが崩れたことをきっかけに不調に陥る人が増えているように感じます。そうした場合は、朝、交感神経のスイッチをオンにするために着替えて外を5分歩く、夜は副交感神経が優位になるようにPCやスマホを見ないように心掛けることから始めてみるといいでしょう。
弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。 現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長とスタートアップへのアドバイザー業務を務めるとともに、企業や行政機関の産業医を10か所以上担当。ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。 共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医 」(祥伝社新書)がある。
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Twitter: https://twitter.com/djbboytt
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