更年期のセックスが苦痛…。婦人科での対応は、性的な意欲があるか無いかで変わってくる。
- 作成:2022/03/20
心地よいセックスを妨げている「性機能障害」について、産婦人科医の宋美玄先生が解説します。連載第6回のテーマは「更年期以降のセックス」。女性の心身が大きく変化する更年期は、セックスも今まで通りというわけにはいかないもの。どのような悩みが生じ、どう対処していけばいいのか、お話ししましょう。
この記事の目安時間は3分です
更年期になるとセックスがつらくなることも
こんにちは、産婦人科医の宋美玄です。
女性のからだは性成熟期が終わりを迎えると卵巣の働きが次第に低下し、やがて月経が永遠に停止します。日本人女性の閉経の平均年齢は50.5歳。閉経前後の5年間は「更年期」と呼ばれ、女性ホルモンの減少によって心身にさまざまな変化が起こる不安定な時期です。
よく知られる症状としては、ほてりや発汗(ホットフラッシュ)、手足の冷え、めまい、動悸、イライラなど。このほか、人によっては膣粘膜が薄くなったり、膣が萎縮して潤いが不足したり、乾燥で外陰部がかゆくなるなど、女性器周辺にも変化が現れます。それにともなってセックスの際に痛みを感じるようになったり、以前のように快感が得られなくなったりする女性が少なくありません。
更年期のセックスをめぐる「2つのパターン」
私のクリニックに「更年期を迎えてセックスがつらくなった」と相談に来る女性は、「セックスをしたい気持ちがある場合」と「セックスはもういいと思っている場合」の2つに大きく分かれます。
まず、セックスをしたい気持ちはあるというケース。気持ちはあっても性交痛がつらくてできない場合は、ホルモン補充療法が効果的です。ホルモン剤にはさまざまな作用を持つ薬や剤型があって、内服薬や皮膚に張り付けるシールタイプは、性交痛にかぎらずホットフラッシュやイライラなど、更年期障害の症状全般に効果を発揮します。膣粘膜の萎縮など女性器周辺の症状だけを何とかしたい場合は局所的に作用する膣坐剤もあり、副作用も少ないので、婦人科で相談してみるといいでしょう。
女性ホルモン剤が使えない人や使いたくない人、使っても性交痛の改善が見られない場合は、セックスのときに潤滑ゼリーを使うことも検討してみてください。パートナーとのコミュニケーションを密にして、触り方をソフトにしたり、体位を変えるだけでも、痛みが和らぐことがあります。
40代以降「セックスはもういい」と思っても不自然ではない
一方、「セックスはもういい」と思っている女性も少なくありません。個人差はあるものの、女性ホルモンの分泌が低下すると性欲も減少するので、更年期が始まる40代以降になればセックスに関心がなくなるのも自然なこと。それにもかかわらず、パートナーが望むから痛くてもいやいや応じている女性も多く、本当にそのセックスは必要なのかどうか、パートナーと話し合う必要があります。
年齢とともにコミュニケーションの取り方が変わってくるのは当然で、夫婦だからいくつになってもセックスしなければなどと思う必要はありません。たとえばスキンシップは大事にしたいけど、激しいセックスではなくキスや手をつないで眠るだけで十分だとか、あるいはスキンシップよりも会話をしたり一緒に趣味を楽しんだりしたいとか。自分の希望をパートナーに伝え、パートナーの希望にも耳を傾けて、自分たちに最も合ったスタイルを見つけましょう。
セックスをしても女性ホルモンは増えない
また、セックスをしないと女性ホルモンが出なくなるとか、老けこむとか、女性じゃなくなるなどと思いこんでいる女性もいます。声を大にして言いますが、セックスをしたところで女性ホルモンの分泌量は増えないし、若返りません。セックスの最中にしあわせホルモンと呼ばれる「オキシトシン」は分泌されますが、残念ながら女性ホルモンは出ません。それにセックスをしなくても、閉経しても、女性ホルモンが出なくなっても、女性は死ぬまで女性です。
閉経を挟む約10年間の更年期は、新たなライフステージへの準備期間。新たなステージを生き生きと輝かせるために、身体の変化を受け入れたり、夫婦の関係を見つめ直したりしてみましょう。
取材・構成/熊谷わこ
1976年兵庫県神戸市生まれ。2001年大阪大学医学部医学科卒業。2010年に発売した『女医が教える本当に気持ちいいセックス』がシリーズ累計70万部突破の大ヒット。2児の母として子育てと臨床産婦人科医を両立。メディア等への積極的露出で女性の悩み、セックスや女性の性、妊娠などについて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。
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