コロナ禍で梅毒感染者が急増!?梅毒の症状と最新の治療法を現役産婦人科医が解説!

  • 作成:2022/04/02

コロナ禍で梅毒の感染者数が7800人以上報告され、この10年間で過去最多となり、大きな問題になっています。梅毒は、性行為経験のある方には誰でも感染リスクがあり、コンドームを使用しても100%の感染予防ができません。 いっぽう2022年1月に、1回の注射で梅毒が治療できる新しい薬が発売になりました。今回は、淀川キリスト教病院産婦人科医の柴田綾子先生が、注意が必要な梅毒の症状と最新の治療法について紹介します。

柴田 綾子 監修
淀川キリスト教病院 産婦人科医長・産婦人科専門医
柴田 綾子 先生

この記事の目安時間は3分です

コロナ禍で梅毒感染者が急増!?梅毒の症状と最新の治療法を現役産婦人科医が解説!

1)手足や体のブツブツ、口や陰部のできものは梅毒に注意

梅毒は性行為等で感染してから症状が出るまでの潜伏期間が10〜90日と長いのが特徴です。さらに、梅毒に感染しても症状が出ない方もいます。

<梅毒に感染して1~3ヶ月後に出る症状>

  • 陰部、口にできもの(びらん*や潰瘍)ができる *びらん…ただれていること
  • 足の付け根や首のリンパ節が腫れる
  • 体や手足の裏に赤いブツブツができる

などがあります。これらの症状は治療しなくても自然治癒しますが、梅毒そのものは治っておらず、体のなかで病原体である「梅毒トレポネーマ」が増え続けていきます。
梅毒に感染したことに気づかず過ごしていると、性行為で相手に感染させてしまうだけでなく、その後に神経・心臓・血管などにも梅毒が広がり、麻痺や目の症状などが出現します。

2)梅毒に注意すべき人とは?

梅毒は主に、粘膜と粘膜の接触で感染します。そのためコンドームを使用していない状況での性行為は、梅毒に感染するリスクが高く注意が必要です。ただし、梅毒は皮膚同士の接触でも(傷口などがあるとさらに)感染する危険性があります。そのためコンドームを使用していても100%の感染予防はできません。
オーラルセックスやアナルセックスでも感染します。最新の2021年の報告では、とくに20〜40代の男性と20代の女性において感染者の報告が多いです(図1)。妊娠中に梅毒に感染していた場合、適切に治療しないと赤ちゃんにも梅毒がうつり、口や鼻の奇形を起こすため注意が必要です。

図1. 年齢別の梅毒感染者数の報告(2020~2021年)

コロナ禍で梅毒感染者が急増!?梅毒の症状と最新の治療法を現役産婦人科医が解説!

国立感染症研究所 感染症疫学センター・実地疫学研究センター・細菌第一部

3)梅毒の検査はどうやって受ける?検査まで少し待たないといけない理由

梅毒の検査は、血液検査で産婦人科・泌尿器科・皮膚科などで行うことができます。
ただし、梅毒に感染してから結果が陽性になるまで空白期間(window period)が約3週間あります。そのため性行為のあと、すぐに検査を受けて感染していたとしても「陰性」と不正確な結果が出てしまいます。その場合は、3週間待って検査を受ける必要があります。病院やクリニックで受診するのは恥ずかしいということも多いと思います。その場合は、近くの保健所や保健福祉センターにて匿名・無料で検査を受けることが可能です。ただし、検査が陽性になった場合の治療には、病院やクリニックを受診する必要があります。

<検査できる場所の例>

4)梅毒の最新の治療法

2022年1月に梅毒に対する注射薬が新しく発売されました。これまで梅毒の治療では抗生剤を4〜8週間内服することが必要でしたが、注射薬が発売されたことで梅毒の治療が格段にしやすくなりました。
早期梅毒(感染してから1年以内)であれば、1回の筋肉注射で治療ができるようになったのです。後期梅毒(感染してから1年以上)では、週1回×3回(合計3回)の筋肉注射が必要になります。

梅毒の感染者が急増しており、私達みんなが注意する必要があります。コンドームを使うことで感染のリスクを減らすことはできますが、100%の感染予防が難しいのが現状です。
心配な症状があったときは、ぜひ血液検査を受けてください。

参考資料

2006年 名古屋大学情報文化学部を卒業し群馬大学医学部に編入
2011年 沖縄で初期研修を開始し、2013年より現職
世界遺産15カ国ほど旅行した経験から、母子保健に関心を持ち産婦人科医となる。著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)、『産婦人科ポケットガイド』(金芳堂)、『女性診療エッセンス100』 (日本医事新報社)など。

病気・症状名から記事を探す

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行

協力医師紹介

アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。

記事・セミナーの協力医師

Q&Aの協力医師

内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。

Q&A協力医師一覧へ

今すぐ医師に相談できます

  • 最短5分で回答

  • 平均5人が回答

  • 50以上の診療科の医師