薬剤師「花粉症、薬を飲むのを我慢したほうが体にいい、は間違った情報です」
- 作成:2022/04/04
「できるだけ薬を使わずに対処したい」、どんな病気・症状でもそう考える人は多いと思います。花粉症についても体の限界まで薬を使わず我慢した方がよい、そのほうが薬を飲む期間を減らせて、身体への負担も少なく抑えられる、と考えている方が多いかもしれません。今回は、薬剤師の立場から花粉症の薬の正しい服用についてご紹介させていただければと思います。
この記事の目安時間は3分です
研究でも明らかに!早めに治療を始めた方がシーズンを通して軽い症状で済む
身体の限界まで薬を使わず我慢するのと、少しでも症状が現れた場合に薬を使い始めるのとで、どちらの治療戦略がよいかを考えてみましょう。
まず「どちらの方が花粉症シーズンを楽に過ごせるか」という観点から考えてみます。
身体の限界まで薬を使わずに我慢するということは、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・眼の痒みといった花粉症の症状が現れてもしばらくは治療をしないということを意味します。そのため、当然ですがその間はずっと花粉症の症状に悩まされ続けることになります。
花粉が飛び続けている以上はその症状は確実に悪化していきます。症状に我慢できなくなって薬を使い始めたとしても、すぐに症状をゼロに抑えられるわけではありません。そのため、薬が十分に効き始めるまでの間は悪化した状態の症状に悩まされ続けることになります。
一方、花粉が飛び始めた日、あるいは症状が少しでも現れた日から治療を始めた場合は、薬によって症状の悪化を抑えられるため、軽い症状のままで過ごせる可能性があります(薬を使っていても症状が悪化してくる場合は、より効果の高い薬へ変更する等の対応をします)。
実際に、このような研究があります。花粉症の症状が重症になってから薬を使うグループと、花粉症の症状が少しでも現れた時点で早めに薬を使い始めるグループとで、その症状を比較すると、早めに薬を使い始めたグループの方が、花粉症シーズンを通して症状が軽かった、という結果が得られています1)。つまり、この研究結果からは、薬を早めに使い始めた方が、花粉症シーズンを通して軽い症状で楽に過ごすことができる、ということがわかりました。
重症化すると多くの種類の薬を服用しなければならなくなる…なかには副作用の強い薬も
次に、薬を早めに服用し始めることについて「実際にどんな薬を花粉症治療に使うのか」という観点からも考えてみます。
花粉が飛び始めた日、あるいは花粉症の症状が少しでも現れた日から治療を始める場合は、基本的に使う薬は1種類だけで良いとされています2)。多くの場合、副作用も少なくて使い勝手の良い「抗ヒスタミン薬の飲み薬」か、あるいは効果の高い「ステロイドの点鼻薬」のどちらかが用いられます。
一方、限界まで薬を使わずに耐えていた場合、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・眼の痒みといった花粉症の症状はどれも“我慢できないほど”に悪化していると考えられます。こうした重症度の高い状況に対しては、「抗ヒスタミン薬の飲み薬」と「ステロイドの点鼻薬」を併用した上、そこに「抗ロイコトリエン薬」や「ケミカルメディエーター遊離抑制薬」を追加し、さらに副作用も多い「血管収縮薬」や「経口ステロイド薬」なども組み合わせて使わなければならないことがあります2)。
上記のことをふまえると、花粉症の場合、薬を早めに服用し始めた方が、“薬を使う期間”は長くなりますが、“使う薬の種類や量”は圧倒的に少なくて済む、副作用リスクのある厄介な薬は使わなくて済むことになると言えるでしょう。
花粉症は、我慢せずに早めの治療を
「早めの治療開始(初期療法)」は、花粉症の診療ガイドラインでも推奨されている方法2)です。特に花粉の時期には花粉症の症状に毎年苦しんでいるという方は、例年より軽い症状で、より少ない種類の薬で花粉症シーズンを乗り切るために、我慢せずに薬の服用を行うことをおすすめします。
1) Ann Allergy Asthma Immunol . 2012 Dec;109(6):458-64.
2) 鼻アレルギー診療ガイドライン2020
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