「花粉症の薬、症状を和らげるには眠気の強い薬を飲むしかない」は本当?
- 作成:2022/04/07
花粉症は、ドラッグストア等で購入できる飲み薬でも治療することができます。簡単に購入することができる一方、自らの症状に合った薬を選ぶことが難しい一面もあるようです。薬剤師からすると「その症状のときにその薬を飲むのは…」と思うことも多々あります。「眠くなる薬ほど花粉症にはよく効く」と思い込んでいる患者さんも多くいらっしゃることかと思いますので、今回は花粉症の薬と眠気の関係についてご紹介していきたいと思います。
この記事の目安時間は3分です
眠気が強く現れる薬だからといって花粉症によく効く薬であるとは限らない
「薬」というものを考えたとき、“効果の高い薬ほど副作用も強い”というイメージを抱く人も多いと思います。全体として薬にそういった傾向があるのはたしかです。
しかし、花粉症でよく使う飲み薬(抗ヒスタミン薬)に関していえば、こうした相関はなく、眠くなりやすい薬でも眠くなりにくい薬でも、効果はほとんど変わりません1)。そのため、現在花粉症の治療薬として主に用いられているのは、眠くなりにくい非鎮静性の薬です2)。
※花粉症に使う抗ヒスタミン薬の分類
花粉症に悩む人の多くは学業や仕事、育児など何か集中したいことがあるにも関わらず、煩わしい花粉症の症状のために集中できず、薬を服用し始めるのではないでしょうか。
しかし、実際にこのような研究があります。眠くなりやすい鎮静性の薬で花粉症治療をすると、鼻炎の症状は治まっても、薬の副作用で眠くなったり、あるいは集中力や判断力が低下したりして、学業成績が悪化してしまったというものです3)。薬剤師の立場から申し上げると、よほど特殊な事情がない限りは、敢えて眠くなりやすい薬を選ぶ必要はありません。
花粉症の薬、飲んだら運転できない?飲んでも運転できる薬はあるの?
「抗ヒスタミン薬」を飲んで自動車の運転をすると、運転中に眠くなるだけでなく、眼の動きが遅くなって歩行者や対向車・標識などを見落としやすくなったり、あるいはハンドル操作が大雑把になったりすることが確認されています4)。そのため、鎮静性・軽度鎮静性・非鎮静性を問わず、基本的に「抗ヒスタミン薬」を服用した後に、自動車の運転をすることは禁止されています。
ただし、「ロラタジン」と「フェキソフェナジン」の2種に関しては、眠くなりにくい非鎮静性の薬の中でも特に眠気を催しにくく、注意力や判断スピードなどに影響しないことが確認されています5)。そのため、自動車の運転をする場合は、「ロラタジン」と「フェキソフェナジン」のどちらかを選ぶようにしてください。
眠くなりにくい非鎮静性の薬、いろんなメーカーのものがあるけど効き目に違いは?
眠くなりにくい非鎮静性の抗ヒスタミン薬にはいくつか種類がありますが、花粉症に対する効果に大きな違いはありません6)ので、どれを選んでも問題ありません。ドラッグストア等で薬を選ぶ際には、価格や1日の服用回数といったご自身の生活スタイルに合わせて選んでも大丈夫です。
※非鎮静性の抗ヒスタミン薬(市販薬)の例
「眠くならなくて、よく効く薬が欲しい」と考えている場合には、こうした抗ヒスタミン薬の飲み薬よりも効果が高くて、さらに眠くなる心配のない「ステロイドの点鼻薬」7)を選ぶことをおすすめします。かかりつけの薬局や、お近くのドラッグストアの薬剤師に是非相談してみてください。
1) 臨床皮膚科.67(5):155-8,(2013)
2) 鼻アレルギー診療ガイドライン2020
3) J Allergy Clin Immunol. 2007 Aug;120(2):381-7.
4) 臨床薬理19(4):681-8,(1988)
5) J Allergy Clin Immunol. 2000 Jun;105(6 Pt 2):S622-7.
6) Arerugi. 2006 May;55(5):554-65.
7) Am J Rhinol Allergy. 2017 Jan 9;31(1):19-28.
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