もしかして花粉症? 子どもが鼻水をずるずる、風邪との見分け方を知りたい!
- 作成:2023/02/20
AskDoctorsでは、子どもの病気やケアで親が悩みがちなポイントを、小児科医の森戸やすみ先生に解説していただいています。連載第17回のテーマは「子どもの花粉症」。このところ発症が低年齢化していて、就学前でも花粉症になる子どもが増えていると言います。花粉症と風邪の見分け方や、子どもの花粉症の治療などについて、森戸先生にお話を伺いました。
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低年齢化する花粉症。3歳で発症する子も
2月になり、そろそろ鼻がむずむずしたり、目がかゆくなったりしているかもしれません。詳しい理由はわかっていませんが、花粉症の発症は低年齢化していると言われています。私のクリニックでも10代以下の花粉症の患者さんは増えていますし、3歳のお子さんを診察したこともあります。
花粉症は、アレルギー疾患の一つ。私たちの体は、ウイルスや細菌などの危険な異物が侵入してきたとき、鼻水や咳、くしゃみで体外に追い出す免疫機能を備えています。ところが、病原性のない特定の物質にまで免疫が過剰に反応してしまう「アレルギー反応」を起こすことがあります。「花粉」に対してアレルギー反応を起こした状態が、花粉症です。
食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎といった何らかのアレルギー疾患を経験している子どもは、花粉症にもなりやすいといわれています。ただし、アレルギー疾患のない子でも、花粉症になることはあります。
花粉症の症状は風邪と間違えやすい
花粉症の症状は、基本的に子どもも大人も同じ。鼻水や鼻づまりなどの鼻症状と、目の充血やかゆみが多いですね。ただし、小さい子どもは自分で症状を具体的に伝えることができないので、保護者など周囲が気づく必要があります。
花粉症の原因となる花粉にはさまざまな種類がありますが、最も多いのはスギ花粉です。スギ花粉が飛散する時期は1月下旬から4月くらいまで。風邪の流行期と重なるため、鼻水や鼻づまりの症状を「風邪かな?」と思う保護者も少なくありません。
でも、発熱や咳をしていないのに鼻をしょっちゅうすすっている、(鼻が詰まっているので)口呼吸気味、しきりに目をこするといった症状があるようなら花粉症かもしれません。小児科や耳鼻咽喉科、眼科を受診しましょう。
医師は、どんな症状か、どんな時に症状が出るかなどを詳しく診察して、花粉症の可能性を判断します。
アレルギーの原因物質を突き止める検査もありますが、必ずしも必要ではありません。花粉が原因だとはっきりしたところで、完全に除去できるわけではありません。極力、花粉を避ける生活をして、症状を少なくする薬を使うという治療は変わらないからです。
ただし、本人がはっきりさせたいとか、食物アレルギーなど他のアレルギーも疑われるような場合は、検査を受ける意味はあると思います。
小さい子どもには使えない薬もある
花粉症の治療は、子どもも大人と同じです。症状に応じて、抗ヒスタミン薬の飲み薬、抗ヒスタミン薬やステロイド薬の点眼・点鼻薬などを使います。ただし、年齢によっては使えない薬もあります。たとえば点鼻薬の中でも、腫れた鼻粘膜を収れんさせて鼻づまりを通す薬(トラマゾリン)は、2歳より大きくならないと使えませんし、それ以上の年齢でも大人より少ない量にします。
薬局で市販されている子ども用の花粉症治療薬(OTC)も、用法用量を守って使う分には問題ありませんが、学齢期以降が対象の薬が多いようです。
医療機関であれば、年齢や症状に合った薬を処方できますし、生理食塩水で鼻づまりをとるとか、ネブライザーを使うなど、薬を使わない対処法も提案できます。小さいうちは医療機関を受診した方がいいでしょう。
目薬は眠っている時に差してもいい!
また、点眼薬や点鼻薬はほとんどの子どもは嫌がります。点眼薬のコツとしては、目を閉じた状態で目頭に1滴たらす方法です。目を閉じたままでも自然に瞼の内側に入っていくので、目をパチパチさせる必要もありません。子どもが眠っているときでも問題ありません。
点鼻薬は点眼薬以上にハードルが高いですね。投与時に暴れると危険なので、無理にやろうとしないこと。飲み薬などで対応できることも多いので、医師に相談しましょう。
なお、5歳以上であれば「舌下免疫療法」ができます。舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質を少しずつ体に慣れさせることで、アレルギー反応を弱めていく治療法です。症状をやわらげるだけでなく、花粉症を根本的に治せる可能性があります。そのため保護者の関心が高く、「5歳を過ぎたらできるだけ早く舌下免疫療法を受けさせたい」という要望も少なくありません。
ただし、この治療は毎日1回、アレルギーの原因物質を含む錠剤を舌の下に入れ、1分間そのままにしておく必要があります。その間は喋れないし、食べることもできません。1分経ったら飲み込み、その後5分間はうがい・飲食を控えます。これを最低でも3年間続けるため、子どもが治療を続けるのは大変なことも多いようです。
飛散時期はマスクやゴーグルなどで花粉をブロック
なお、症状を悪化させないため、花粉が多い時期はマスクやゴーグルを装着するといいでしょう。服は花粉がつきにくいツルツルの素材のものを選び、帰宅したら家の中に入る前にブラシなどで髪や服に付いた花粉を払い落としましょう。
花粉をゼロにするのは難しいですが、少し意識した生活をすれば花粉症の発症予防や症状の改善につながります。
1971年、東京生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内のどうかん山こどもクリニックに勤務。『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)、『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)など著書多数。二児の母。
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