必要な備えや防災対策は十人十色。特筆したい「要配慮者」や「女性」の防災対策
- 作成:2022/05/10
3・11から11年が経った3月16 日深夜、当時を彷彿させるような地震が起こりました。11年前の地震を教訓に、防災対策をとっていた方は多かったと思います。防災グッズを揃えたり食料や水の備蓄といった一般的な防災対策はもちろん重要です。ただ、一口に防災対策と言っても、家族構成や家庭環境(ペットなどがいる)によって、“人それぞれ”、 “各家庭それぞれ”その対策は少しずつ異なってきます。 そこで今回は、Dr.ソナエル氏に「災害弱者や女性」の防災対策について伺いました。
この記事の目安時間は3分です
被災後の避難生活において制約を受ける「要配慮者」とは
災害時に、避難行動や被災後の避難生活において制約を受け、支援が必要となる人々を一般的に「災害弱者」や「要援護者」・「要支援者」などと表現します。災害対策基本法の第八条では、これらの人々は「要配慮者」と定義されており、災害発生時の避難等に特に支援を要する人々は「避難行動要支援者」と呼ばれます。
「要配慮者」とは以下のような状態にある人のことをさします。
- 心身障がい者(肢体不自由者、知的障がい者、内部障がい者(見た目ではわからない持病を抱えた人)、視覚・聴覚障がい者)
- 高齢者
- 乳幼児や妊産婦
- 傷病者
- 日本語の理解が十分でない外国人
- 避難所運営においては、性的マイノリティ(LGBTQ)の人々にも配慮する必要があります。
各家庭の状況でチェックしたい「要配慮者」の防災対策
自分や家族(ペットを含む)にとって欠かせないもの、それがないと命に関わる可能性があるものは何か?と考えて備える必要があります。
1)病気を抱えている方(内部障がい者も含む)
持病で薬を処方されている方は、最低でも1週間分の予備は備えておくべきです。特に1型糖尿病でインスリン注射を使用している方、難病を患い免疫抑制剤や特殊な薬剤を使用している方など、薬剤中断により著しく身体の状態を損ねたり、命に関わる可能性がある方は必須の備えです。
大震災で病院や医院が被害を受け、カルテや薬の情報が失われることもあります。その場合、お薬手帳など薬歴がわかるものがあれば、医療機関で処方箋をもらえなくても臨時対応として薬局などで薬をもらうことができます。2011年の東日本大震災では、お薬手帳の重要性が再認識されました。お薬手帳は必ず持ち歩くようにしましょう。スマートフォンにお薬情報の写真を入れたり、アプリで登録しておくのもおすすめです。
呼吸機能低下などで在宅酸素を使用している方は、酸素ボンベや酸素濃縮機・人工呼吸器の電源確保も考える必要があります。たとえば、酸素濃縮機など在宅酸素事業を行っている「帝人ファーマ株式会社」では、緊急時や災害時の体制を整えており、実際2011年の東日本大震災では、社を挙げて被災地の在宅酸素療法を受ける患者さんを支援したり、被災地の中核病院に酸素ステーションを臨時に開設したりしました。契約されている会社の緊急時の体制など、今一度確認しておきましょう。
人工透析を受けている方は、透析中断は命に関わるため災害時に透析を代替してくれる医療機関の情報収集をしておくべきです。また透析カードや透析手帳など透析条件がわかるものを携帯し、最低でも体重(ドライウェイト)は把握しておきます。
人工肛門や人工膀胱を使用されている方は、装具の予備が必要です。
もう一つ、忘れがちで重要なことは、「メガネ」の備えです。視力の悪い方は、メガネがないとそもそも安全な避難や行動を取ることができません。コンタクトレンズを使用している方は、災害時の水不足などでケアがしづらい可能性が高く、必ず予備のメガネを準備しておくようにしてください。
2)高齢者
杖、歩行器、車椅子、聴力低下があれば補聴器と交換用電池の備えが必要です。介護を要する場合、オムツや衛生用品などが必要であり、嚥下(飲み込み)機能が低下していれば、嚥下機能に合った食事を備蓄しておきます。
3)乳幼児や妊産婦
オムツ、粉ミルク、衛生用品、生理用品、離乳食、子ども用お菓子の備蓄が必要になります。避難所へ避難する可能性がある場合、非常用持ち出し袋には子どものおもちゃや絵本(音が出ないものが推奨)を入れておくとよいでしょう。
4)その他
食物アレルギーがある方は、アレルギーに対応した食料の備蓄をします。また、宗教上の理由により食べられない食べ物がある場合、それに対応した食事(ハラール食など)を備えておきましょう。
5)ペットの防災対策
ペットの防災は飼い主の責任(「自助」が基本)です。ペットフードや衛生用品の日頃からの備蓄が重要です。特に、ペットシーツは吸湿性に優れているので、人の簡易トイレやお湯を含ませると湯たんぽにもなりますので、多めに備蓄しておくといいかもしれません。
また、避難所はペット同行に対応している所と、対応していない所があります。最寄りの避難所の、ペットへの対応状況などは普段から確認しておきましょう。2011年の東日本大震災では、地震、津波、原子力災害により、ペットが自宅に取り残されたり、飼い主とはぐれたり、避難生活で飼育できなくなったりして、ペットが放浪する例が多数生じています。幸い飼い主とペットが共に避難(同行避難)できた場合でも、多くの被災者が共同生活を送る避難所においては、ペットの取り扱いに苦慮する例も多数見受けられています。
いざという時に困らないための女性の防災対策
「要配慮者」とは異なりますが、女性ならではの防災必需品もあり、災害時は女性の防災についてもしっかりと考える必要があります。
- 生理用ナプキン
- おりものシート
- スキンケア用品
- ヘアゴムやヘアクリップ
- クシや鏡
- 避難所における着替えや授乳、洗濯物(下着を干す時)のプライバシー問題など
特に災害時は、精神的不安・ストレスにより生理が乱れることもあり、生理用品は必須と言われています。また災害時におりものシートを使えば、おりものによるかぶれや炎症を防いだり、洗濯できない状況で同じ下着でも清潔に過ごすことができます。またナプキンを備蓄しておけば、怪我をした時の傷の当てや止血目的など、本来の使用用途以外にも使うこともできます。
災害時は「男は仕事、女は家事・家庭」といった男女役割分担意識が強くなりがちです。これまで防災や災害復興は男性が主導で行う傾向が強く、女性視点での意見が反映されないまま、防災対策や避難所運営、復興支援への取り組みが進められてきました。
その結果、過去の大災害において女性は必要な物資の不足、避難所での女性目線での配慮の欠如、男女役割分担による負担増大、性暴力被害など様々な問題に直面してきています。これまでの経験から、防災や災害復興における男女共同参画の重要性が認識されるようになっていますが、女性の防災対策はまだまだ盲点となりやすいのが現状です。
このように、人や家族構成によって必要な備えは十人十色です。そして防災対策は、自分達の身は自分達で守るという「自助」が基本となります。自分と守るべき家族に本当に必要なものは何か? と考えることが非常に重要です。ぜひ、「自助」の精神をもって、自分と家族に必要なものを備えてください。
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