相手を尊重しつつ、自分の意見を言う「アサーション」。ビジネスで実践するには「DESK法」が役に立つ!
- 作成:2022/07/13
新型コロナの感染拡大によってリモートワークが普及するなど、変化のスピードがますます速くなる今日。ちょっとしたことで動じないメンタルや、たとえ凹んだとしてもしなやかに立ち直る「レジリエンス」は、以前より増して重要になっています。そこで、産業医・精神科医の堤多可弘先生を講師に招き、「『動じないメンタル』の保ち方セミナー」を開催しました。当日の様子を5回シリーズでお届けします。第4回は、相手に思いを伝えるための「アサーション」やその具体的なテクニックをご紹介します。
この記事の目安時間は3分です
自分も相手も尊重したコミュニケーション「アサーション」
さて今回は、コミュニケーションに焦点を当てて、「対人キャパUP」の方法をお伝えしたいと思っています。まず、私たちが行っているコミュニケーションの仕方は以下の3つといわれます。(1)攻撃型
(2)受動型
(3)アサーション型
攻撃型は、俺の言うこと聞けないのかというパワハラ上司タイプ。受身型は何を言われても「すみません」「そうですね」「はい」と不満をため込むタイプ。そして、アサーションは自分も相手も尊重したコミュニケーションの概念で、「あなたの言い分は分かった。でも私はこう考えているんですよ」と、お互いの考えを交換できるタイプのこと。
日本人はこのアサーションが苦手といわれているので、ぜひこの機会に上達できるように頑張ってほしいと思います。
そこで今回は、主張と尊重を両立できるアサーティブなコミュニケーションの方法である「DESC法」そして指導などに役立つ「PNP法」についてご紹介します。
4つのプロセスを経て、相手をうまく説得する「DESC法」
「DESC法」とは、描写(Describe)、表現(Express)、提案(Specify)、(4)選択(Choose) の頭文字をとった説得話法のことです。
最初の描写(Describe) では、具体的な状況、背景を客観的に描写します。次に、表現(Express)で、自分の気持ちや状況、考えを表現します。このときの主語は「I(私は)」です。続いて、提案(Specify)でどのようにしてほしいか提案をします。さらに、提案が受け入れられなかったときのために代替案も準備しておきます。これが選択(Choose)です。
例えば、明日の会議で大事なことがあるので会議の直前に確認したいとしましょう。そこでいつも時間ギリギリに来るAさんにお願いしたいと思っていて、それをAさんにどう伝えるか?「DESC法」を使うと以下の流れになります。
(1)描写(Describe) まず明日の会議はとっても大事なのです(状況を共有)。
(2)表現(Express)そこで事前に私はあなたと確認したいことがあります。
(3)提案(Specify) だから15分前に来てください。
(4)選択(Choose) 15分前が無理だったら、5分前に来てほしい(代替案を提示)。
特にビジネスでは、「(1)描写(Describe)」、つまり背景の説明が非常に大事だといわれます。例えば、いきなりレンガを積んでくださいと指示されるのと、家を造りたいのでレンガを積んでくださいと指示されるのでは、受け取る人の印象はまったく異なりますよね。家を造りたいという背景を説明してから特定のお願いをする、これが非常に大事です。
また、地震など災害に強い丈夫な家を造りたい、誰かがすごく幸せに暮らせる家造りをしたいからレンガを積んでほしいとモチベーティブな背景を伝えるのは、相手にこちらの思いを伝えるうえで一層効果的ですので、この辺も意識していただければと思います。
特にマネージャー層とメンバー層では情報格差が必ず生じます。マネージャーは大きな目標を知っていて指示を出すけど、メンバーは目標を知らない、ということはよくあります。
相手を傷つけることなく指摘ができる「PNP法」
次に、後輩を指導するときや何か一言伝えたいときは、「PNP法」が便利です。この方法では、Positive(ポジティブ)→Negative(ネガティブ)→Positive(ポジティブ)の順で物事を伝えるですが、核心はNegative(ネガティブ)で伝えるのです。
例えば、プレゼン資料の文字が小さいことを指摘する場合は、いきなりそのことに触れるのではなく、以下のように伝えます。
(1)今回のプレゼン資料よく調べられているね。
(2)ただ、強いていうならば、もう少し字が大きいといいよね。
(3)全体的に情報が網羅されている点もよくできていると思うよ。
そうすると相手は聞きやすい。部分的に認められると他の要求も通りやすいといわれていますから、褒められるところは褒めてから核心に迫って、もう1回褒めて相手をフォローしてあげるという「PNP法」をぜひ意識してください。
受診の目安は「食う、寝る、遊ぶ、考える」が2週間
最後に受診の目安のことをお伝えさせていただきます。ストレスがたまると、具合が悪くなることがあります。このくらいになったら相談してください、という目安になります。、。
ぜひ覚えていただきたいのは、「食う、寝る、遊ぶ、考えるが2週間」というキーワード。【食う】食べられないなど、食欲の変化が起きる。【寝る】眠れない、すぐに目が覚める。【遊ぶ】楽しいことが思いつかない、好きなことができなくなる。【考える】仕事に集中できない、発想・思考がまとまらない。こうしたことが2週間以上続くのであれば、一度専門医院を受診することをお勧めします。
これまで、ストレスに耐える力であるレジリエンスを高めるためのポイントとして、「べきの呪い」を解いてあげること。また、対人関係では「大事×できること」に注目し、相手に思い伝えるためのテクニックであるDESC法やPNP法についてもお伝えしてきました。ぜひ参考にしていただければと思います。次回は受講者からの質問にお答えしていきたいと思います。
弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。 現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長とスタートアップへのアドバイザー業務を務めるとともに、企業や行政機関の産業医を10か所以上担当。ブログや著作、研修などを通じて、メンタルヘルスや健康経営、産業保健の情報発信も行っている。 共著に「企業はメンタルヘルスとどう向き合うか―経営戦略としての産業医 」(祥伝社新書)がある。
note: https://note.com/music_takahiro
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