学校での人間関係~医師が子どもに 「全員と仲良くするのは無理」と伝える理由
- 作成:2022/04/16
こんにちは。外科医ちっちです。今回は学校という閉鎖的な環境で生活している子どもに伝えたいテーマ「嫌いな子がいてもいい」という話です。集団生活では、人間関係の悩みは尽きません。大人になっても大なり小なりあります。場合によっては、精神的に参ってしまうことすらあります。 ただある程度、自分の判断で接する相手や機会を選べる大人と違い、子どもの日常はほぼ強制的に選ばれ、変更も出来ない「学校、担任、クラスメート」という世界が多くを占めます。中には、学校での人間関係がうまくいかないことで、「世界のすべてに居場所がない」と感じて人生を終わらせてしまう子もいます。 そこで、特に極端な考えになりやすい我が家の子どもたちには、言葉に出して「全員と仲良くするのは不可能だ。世界は広いから必ずあなたを理解する人はいる」と伝えています。
この記事の目安時間は3分です
「全員と仲良く」を字面通り受け取り、できない自分を責める子ども
発達凸凹の子を相手にする上で、「たとえ道徳的には少し問題があっても、率直である」というのは大切だと思います。何が言いたいかというと、「嫌い」「怒る」といったネガティブな感情はあって当たり前だということです。
「みんな仲良くしましょう」という理想を、先生は学校で唱えます。
しかし、大人のみなさんは実感としてあると思いますが、絶対に相性の合わない相手はいます。
ですから、うちの子ども達には、自分の中で噛み砕いた結果の考えとして、「合わない人とは、最低限の付き合いをする方法を学んでおき、相性の合う相手を大切にしよう」と伝えています。
字面通りの解釈をしてしまう発達障害の子ども達に「みんな仲良くしましょう」と伝えるだけでは、子どもは現実的には不可能な「全員と仲良し」を、無理やり実行しようとしてしまいます。当然、できるわけがないので、根本的に相性が合わない子に対しても本人なりの正論でぶつかって、けんかになり、イライラしたり、かんしゃくを起こしたりします。
正しく仲良く出来ないことに悩み、「仲良く出来ない人がいるのは、『自分がダメだから』」という結論が子ども、特に発達障害の子どもには、一番選択しやすい解決方法になりやすいのです。
でも、合わない人はいて当たり前です。
よく「2-6-2の法則」などと言いますね(2割:仲良し、6割:どうでもいい、2割:分かり合えない)。どれだけ本人達が努力しても、折り合わない2割の子はいます。
ですから、どんなに聞こえが悪くても、子どもに対しては理想論を伝えるのではなく、「率直でありたい」と思うのです。道徳的に正しそうに見える綺麗な言葉ではなく、本人達が折れずに生きていけるように。
ネガティブな思いを抱くこと自体を我慢する必要はない
たとえば、子どもが「○○くんが嫌い」と言った時に、つい「そんな言い方は良くないよ」と言いそうになります。でも、大人のそうした言葉は「勇気を出して、正直に『嫌い』と口に出した子どもを否定する」言葉にもなり得るのです。人を嫌いな自分を許していいのか、迷っている子ども自身を否定することになってしまうのです。
そこで私が意識しているのは、責めるような印象を与えないように「そうなんだ。どうして?」と理由を聞くようにしています。そうしたら、本人なりの理由を教えてくれます。
その時の子どもの言う「理由」のほとんどは、不安や緊張、嫉妬であって、厳密にはその子への「嫌い」という感情ではないことが多いものです。理由を聞いたうえで、「そうなんだ。そう思うんだね。その気持ちは多分『××』って名前だから、嫌いとはちょっと違うんじゃない? お父さんも、△△の時は同じように嫌な気持ちになることあるよ」と伝えられます。
相性もあるので、子どもにとって相手が本当に嫌な相手の時もあって、その時は、「そうか。確かに嫌なことをするんだね。今はそう感じた時、どうしている? 嫌って言えている? 逃げ出せている?」と伝えています。マイナスの感情を持つこと自体は、当たり前だし、むしろ健全です。それを親に対して表せることも大切です。
学校に行けば、1日中無理矢理固定されたメンバーの中での生活です。「嫌いな人がいて当たり前なんだよ」とは繰り返し伝えています。
こういう話をすると、逆に子どもから「お父さんは嫌いな人いる?」と聞かれることがあります。「合わない人はいるけど、嫌いまではいかないよ。大人になると、合わない人と当たりさわりのない関係でいられるし、一緒に過ごさないといけないことが少ないからかな」と答えています。
みなさんはどうですか?
「嫌い」だと思うこと、「怒る」こと、一般的にネガティブだと言われる感情を『感じること』自体は決して我慢する必要はありません。その感情を、他人にぶつけたり、自分にぶつけたりすることを防ぐべき、というだけのことです。ただ、誰も率直には、子どもに教えないことです。
子どもにも、ネガティブな感情はあって当たり前だし、その自分の思いを受け止めて、親には話してもいいのだと伝えましょう。
外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟」
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる」
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti
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