うちの凸凹―外科医と発達障害の3人姉弟~忘れてはいけない人間関係の大前提「理解・共感」はできないし、必須ではない
- 作成:2022/12/17
こんにちは。外科医ちっちです。毎日お疲れ様です。うちの3人の子どもは、長女(中1)、長男(小5)が自閉スペクトラム症の診断があり、次男(小1・不登校)もその傾向があって診断待ちです。一緒に生活する上で、「こんな発想でこんなことをしてしまうのか」と驚かされることもあれば、「こうとしか考えられないのか」と辛い思いをすることや、共感・理解したくてもできないことが多くあります。でも、それって発達障害にかかわらず、相手が誰であっても同じだと思うのです。どんな人が相手でも、他人の考えることや行動には、共感も理解もできなくていい、そのままでいい、という話です。
この記事の目安時間は3分です
夏休み宿題、しっかりリュックに入れたはずが…
発達障害の子どもを育てていると、親であっても『共感ができない行動』は数多くあります。例えば、長女いっちの夏休み明けの出来事……。
通学リュックの手前に、分かりやすく宿題を入れて「出してね!」と念を押しておきました。ところが、いっちが出発した30分後…。
なぜか勉強机の上に宿題が取り残されていたのです。
いっちが帰宅後、妻が尋ねてみました。
はっは「お父さんが宿題をリュックに入れてくれていたのに、どうして机にあるの?」
いっち「自分で入れたいから、入れ直そうと思って、一回出してそのまま忘れちゃった」
はっは「……そうか。明日は持って行ってね」
理解・共感はできないが、「認識」はできる
翌朝、
ちっち「一番目立つところだよ」
いっち「わかってる~。もーう」
帰宅後。
リュックを確認すると、宿題はそのまま入っていました。こういうことばかりの毎日です。
本人に聞いてみると、
- 提出しないといけないことは分かっている。
- その日の朝、みんなが提出している時間があったのを、認識していた。
→みんなが出すのを見ていた
→けれど、出せなかった。
「ん?? 何で提出の時間に、一緒に自分も出さないの?」と、私からすると不思議です。こんなことに、理解や共感ができるわけありません。ただ、これを精神論や善悪の議論じゃなく、「とりあえず全く共感できないけれど、この子は○○ができない・苦手なんだな」と認識することはできます。
色んな感情が混じり、難しいことは多いけれど、親側の気持ちが落ち着いていたら、できます。
障害があろうがなかろうが、共感なんてできない
以前に比べて、発達障害の当事者や家族による発信が増えたように見えますが、何となく「問題行動には、実は理解できるこんな理由があるんです」という内容が一人歩きしているように感じます。
もちろん、発達障害の当事者の困りごとがあったときに主張を聞いて、共感できる部分は多くあると思うけれど、そうでない部分もあります。これは発達障害がない人でも同じことでしょう。
障害があろうがなかろうが、他人の行動を理解や共感なんてできないのです。本当は当たり前の話です。
<まとめや次回予告>
他人を理解できるというのは素晴らしいことだとは思います。でも、一緒に過ごす上で相手を理解できることは「必須」ではありません。当たり前のことですが、ここは混同されてしまうことが多いです。発達障害当事者からの発信が増えても、この誤解は解けにくいです。有名になる人は「定型発達からも理解しやすい特性の人」が多いからです。
私が医師として診察をしていても、理解できない行動をする患者さんに出会います。そんな時も、「変な行動をしていても、迷惑ではなく危険でないなら放っておく。失礼や危険な行動なら、その都度注意する」というのが、一緒にいる場合の基本スタンスだと思います。
外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟」
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる」
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti
関連するQ&A
関連する記事
このトピック・症状に関連する、実際の医師相談事例はこちら
-
うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟— 4歳次男の不登園と引きこもり。園長の「ある一言」が氷解のきっかけに〈後編〉
発達障害
子育て
-
うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟− 長女に発達障害を告知したその後…。そして、長男にも告知した時の驚くべき反応
発達障害
子育て
-
うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟− 発達障害の「告知」…子ども自身にいつ、どうやって伝える?
発達障害
子育て
-
うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟−「そんな子、今まで見たことがない」透明化される子どもたち
発達障害
子育て
-
うちの凸凹―外科医と発達障害の3人姉弟――発達障害を疑ったきっかけ。長女いっちの場合
発達障害
子育て
-
うちの凸凹―外科医と発達障害の3人姉弟―深夜0時にむくりと起きて「ぎゅうにゅう!」医師も驚いた「夜驚症」
子育て
発達障害
病気・症状名から記事を探す
- あ行
- か行
- さ行
-
- 災害
- 再放送
- 子宮外妊娠
- 子宮筋腫
- 子宮頸がん
- 子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん
- 子宮頸がん検診・検査
- 子宮頸がんの症状
- 子宮頸がんのリスク・予防
- 子宮内膜症
- 脂肪肝
- 手術
- 出産後の症状・悩み
- 出産準備・入院
- 食事・授乳・ミルク
- 食欲
- 心臓病
- 自閉症
- 女性
- 自律神経失調症
- 腎炎・腎盂炎
- じんましん(蕁麻疹)
- 膵臓がん
- 睡眠
- 髄膜炎
- 頭痛薬、副作用
- 性器の異常・痛み
- 性器ヘルペス
- 性交痛
- 成長(身長・体重など)
- 性病検査
- 性欲
- 生理痛(生理・月経の痛み)
- 生理と薬(ピルなど)
- 生理不順・遅れ(月経不順)
- 摂食障害
- 切迫早産
- 切迫流産
- セミナー・動画
- 前立腺
- その他
- その他アルコール・薬物依存の悩み
- その他胃の症状・悩み
- その他うつの病気・症状
- その他エイズ・HIVの悩み
- その他肝臓の病気
- その他外傷・怪我・やけどの悩み
- その他心の病気の悩み
- その他子宮頸がんの悩み
- その他子宮体がんの悩み
- その他子宮の病気・症状
- その他出産に関する悩み
- その他腫瘍の悩み
- その他消化器の症状・悩み
- その他腎臓の病気・症状
- その他生理の悩み・症状
- その他臓器の病気・症状
- その他皮膚の病気・症状
- その他卵巣がんの悩み
- その他卵巣の病気
- その他流産の症状・悩み
- た行
- な行
- は行
- ま行
- や行
- ら行
協力医師紹介
アスクドクターズの記事やセミナー、Q&Aでの協力医師は、国内医師の約9割、33万人以上が利用する医師向けサイト「m3.com」の会員です。
記事・セミナーの協力医師
-
白月 遼 先生
患者目線のクリニック
-
森戸 やすみ 先生
どうかん山こどもクリニック
-
法村 尚子 先生
高松赤十字病院
-
横山 啓太郎 先生
慈恵医大晴海トリトンクリニック
-
堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
-
平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
Q&Aの協力医師
内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。