うちの凸凹−外科医と発達障害の3人姉弟−高校受験どうすれば…発達っ子の「内申書問題」

  • 作成:2024/08/07

こんにちは。外科医ちっちです。うちの3人の子どもは、全員が自閉スペクトラム症の診断を受けており、いくつかの困りごとを抱えています。一緒に生活するうえで、「こんな発想でこんなことをしてしまうのか」と驚かされることもあれば、「こうとしか考えられないのか」と辛い思いをすることもあります。この連載では、軽度の発達障害のわが子の日常や、子育ての様子を徒然なるままに綴ります。世の中にはこんな「変わっている子」「変わっている人」もいることを、いろいろな方に広く知ってもらい、医療現場でも役立てていただきたいです。今日は発達子の進学、特に内申問題です。

外科医ちっち 監修
 
外科医ちっち 先生

この記事の目安時間は3分です

発達っ子の内申書、ここがネック

長女は高校受験を控える中学3年生になりました。

しかし、本人は進学することそのものには興味がありますが、「普段の成績=内申点が高い方が有利」ということとがつながっていません。

他の子に比べて、自分なりに行動したことと教師から評価されやすいことがずれやすく、さらに教師からの評価を基準に行動するには体力と精神力を必要とするためか、とりあえず問題先送りのその日暮らしです。

公立高校受験は以下の3つで判断されます(比率は都道府県による)。

①当日のペーパー試験
②面接(ないところもある)
③内申書(中3の2学期までの9科目の5段階評価、課外活動など)

うちの凸凹―外科医と発達障害の3人姉弟――高校受験どうすれば…発達っ子の「内申書問題」

この中で、日々の学校生活で取りに行かないといけない点数が内申点です。

内申点は9科目×5段階で45点満点。これが通知表の点数です。

算出法や反映するシステムは地域によって違います。中1~3の平均が反映される場合や、中3の2学期が反映される場合があります。

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この内申点を取るために必要なもの3つ

‐授業中の積極的な発言や姿勢
‐ノートをきれいに取る
‐プリントや小テストの提出

うちの凸凹―外科医と発達障害の3人姉弟――高校受験どうすれば…発達っ子の「内申書問題」 うちの凸凹―外科医と発達障害の3人姉弟――高校受験どうすれば…発達っ子の「内申書問題」

これは、我が家の子ども3人には難しいです。非常に難しい。

プリントは小学生時代から難しく、提出が必要なプリントも含めてほぼ見失っています。ランドセルの底にあれば良い方で、教室でもらった瞬間になくなります(机に突っ込んで、貯めすぎて溢れて、そのままごみとして捨てられている)。

ノートに関しては、DCD(発達性協調運動症)ゆえに字をきれいに書くのがそもそも難しいので、我が家は誰もノートをきれいに書けたことがありません。先生が求めている評価ポイントはノートをわかりやすく丁寧にレイアウトを考えて作る、ことです。レイアウトを考え出すと手が止まり、板書ができなくなります。

私としては、授業中のノートというものは人に見せる前提ではなく、自分の頭の中に入れるためのメモ書きであると考えているので、子どもたちにもノートを他人から見て分かりやすくきれいに書くというのは頑張らなくても良いと伝えています。板書をしようとすると、頭に入らないことが多いので。

字をきれいに書くこととノートをきれいに書くことは別問題です。

そもそも、うちの子たちは目的が明確で理解し納得しないと行動しない習性があります。目に見えないこと・具体的ではないことはイメージができないようです。

たとえば、技術や音楽。不器用で工作が苦手なのでやりたくないからやりません。

うちの凸凹―外科医と発達障害の3人姉弟――高校受験どうすれば…発達っ子の「内申書問題」

長女の小学校4年生から現在までの様子はこうです。

【小4~中1】
「受験には内申点が必要だよ」「提出物を出したら、評定上がるから頑張ろうよ」
「それが嫌なら中学受験頑張らないと」
と声をかけて「手伝うよ、プリント一緒に整理しよう」
と親が手を出そうとしても…

「いい! 入ってこないで! 触らないで!」
長女はそこそこ勉強ができる子でしたが、新型コロナ真っ最中で学校見学NG。中学生活がイメージできず、勉強にも身が入らず不合格でした

【中2】
担任の先生が変わり、今までで一番発達障害に理解のある先生になりました。
先生「わたし、金曜日の放課後にいっちさん(長女)と一緒に1週間分のプリントを整理して、提出しなきゃいけないものはその場で出して帰らせます。興味がないからやらないだけ、いっちさんはとても魅力的な人です。一緒にやっていきましょう」

はっは「ありがとうございます。長女を否定しないでくれてうれしいです」
いっち「…じぶんでできるとおもうけど(小声)」

この中2の担任の先生の手助けのおかげで、

  • 「いる・いらない」プリントの判断
  • 提出するプリントを職員室まで持って行って出す

この2つが以前よりはできるようになりました。

1学期は毎週金曜日の放課後に先生がつきっきりでやってくれていましたが、2学期、3学期になるにつれて、先生が見守る → 一人でできるときもある、この状態まで来ました。

長女はきっと、どのプリントが大事で、どのプリントをいつまでに誰に出すのかという判断と予定が分かれば動けるのだなと感心しました。

中2の時はクラスの生徒数が23人(全体人数とクラス上限35人の関係で)だったので先生に比較的余裕があり、この配慮をしてもらうことができました。

しかし、引っ越し先の新しい中学(3年~)では「それは、できません」と一瞬で断られてしまいました。

今後の長女ですが、ペーパーテストの成績はまぁまぁいいので、内申点が取れない分、面接と当日の試験で点数を取るしかないです。本人も理解し、納得しています。

目に見えない、自分の少し先の未来が想像できずに、今も親から見るとふわふわしている長女。

3年1学期の三者面談で、「内申点が低く、受けられる高校がない」と言われてしまい、親子で通信制を中心に調べています。授業中の態度は確かに悪く見えてしまい(逆らったりはないが、話を聞いていないことは多い)、提出物も見栄えよくする・期限を守ることが難しいので、内申点の評価は低くなるだろうとは分かっていました。でも、万引き、いじめの加害側などの非行経験もなく、ここまで進路が縛られてしまうのかと驚きました。

学ぶということそのものに対しては、長女は真摯です。授業や提出物以外の自分ができることを探すこともできます。その上で、地域の公立高校を周囲と同じように受験するのは難しいことが少し寂しく感じます。

外科医師。妻(看護師はっは)と発達障害3児の育児中。記事中のイラストは、看護師はっはが担当。著書『発達障害の子を持つ親の心が楽になる本』(SBクリエイティブ)が2024年9月発刊予定。
・ブログ:「うちの凸凹―外科医の父と看護師の母と発達障害の3姉弟
・ブログ:「発達障害の生活は試行錯誤で楽しくなる
・note:https://note.com/titti2020/
・Twitter:@surgeontitti

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