「動画が欲しいです!」若者世代の変化とは
- 作成:2022/09/13
社員のモチベーションの低下に悩む経営者の方は多く、メンタルケアは仕事に直結する問題です。この問題を解決するには、コミュニケーションの改善が必要となってきます。 チーム運営におけるマネジメントには、このコミュニケーションの改善問題がつきものです。 そこで今回、AskDoctorsでは、産業医の平野井啓一先生に、「現役産業医の成功マネジメント」というタイトルでセミナーにご登壇いただきました。 働く方の健康に対して医学的なアプローチだけではなく、コミュニケーションの改善問題など、非常に多方面からマネジメント問題について切り込んで深掘りした内容になっております。 そのセミナーの模様を全3回に分けた本シリーズ第1回は、若者世代の変化についてお伝えします。
この記事の目安時間は3分です
今の若者世代は情報収集力が高い
新しい仕事をするときは、やったことのない作業が多く発生することも多いです。例えば初めてスーパーのバイトをするときは、レジの打ち方もわかりません。
かつては新人教育といえば、先輩から直接やり方を教わり、注意を受けたり、、時には怒られて学ぶというのが当たり前でした。
しかし、今の若者世代の間では仕事を覚える方法として、「動画が欲しい」という声が上がるようになってきました。
YouTubeが身近であったり、オンライン講義も当たり前となっている若者世代からすると、動画で学ぶというのは基本中の基本。
彼らは動画で予習復習をすること、学ぶことに抵抗がなく、情報収集力が高いのです。
動画で情報収集をすることにより、最初から理論武装した状態で実践に臨むというのは、若者世代の大きな特徴の1つとも言えます。
恥をかくことになれていない!
若者世代には動画で自主的に学ぶ特徴がある一方で、恥をかくことに慣れていないという側面もあります。
ひと昔前であれば、初めてやることはわからなくて当たり前。何度も同じミスをしてしまって怒られながら成長して乗り越えていくといった空気がありました。
今は怒られて成長をするというよりは、なるべく怒られないように知識を身につける傾向が大きくなっています。
若者世代はいきなり無知の状態で本番に挑むのではなく、事前学習をしておき、その場でわからないことがあれば調べる。動画で手順を視覚的に確認するということが当たり前の認識なのです。
その情報収集力の高さゆえに、ミスして怒られたくない、恥をかきたくないという意識が強くなっているのだと思います。
恥をかきたくないという気持ちの裏には職場の心理的安全性の低さが関係している可能性があります。
最近の若者はやる気がないって本当?
意見を言ったときに否定ではなく許容してもらえたり、認めてもらえたりして、自分の意見や気持ちが伝えやすい環境が担保されているような職場を、心理的安全性が高い職場といいます。
逆に、自分の意見を言ったことで激しく責められたり否定されたり、ひどい場合はパワハラやいじめにあったり、対人関係のリスクがある環境は、心理的安全性が低い職場といえます。
対人関係のリスクがでてくると、相手にどう思われるのかを過度に気になるようになり、どんどんコミュニケーションを取るのが難しくなっていきます。
無知だと思われたくないから質問も相談もしない。
無能だと思われたくないから自分の考えを言わないし、ミスを隠したりもする。
邪魔だと思われたくないから助けを求めない。
否定的だと思われたくないから議論はしない。
心理的安全性が低い心理状態になると、自分がどう思われるか怖くて、消極的な対応をとるようになるのが想像つきますよね。
最近の若者は仕事にやる気がないと言われがちだけれども、本当にやる気がないのか、それとも、職場の心理的安全性の低さゆえに消極的になっているのか、そういう視点で彼らの本来のやる気を見極める必要があります。
未来のビジョンを見せることで行動は変わっていく(まとめ)
若者世代でやる気がない人がいたとしたら、未来が明るく見えていない可能性が大きいです。
ひと昔前であれば、バブル期があったり、頑張って働いたら未来は明るくなっていくというイメージが強くありました。
辛いことがあっても、我慢して勉強して良い大学に入り、我慢して就職活動して良い会社に入る。会社に入って我慢することが多くても、上の人の言われた通りにやっていけば出世していく。
明るい未来があったからこそ、当時の若者は頑張り続けることができました。
ところが今の日本は違います。絶対安心のイメージがあった大手の会社も倒産することもありますし、高齢化による税金の負担も大きくなっています。退職金や年金で暮らすことも難しく、未来に対する希望が持ちにくい時代になってしまっています。
仕事を頑張って未来が良くなるのであればいいけれど、頑張っても未来が良くなる保証がないのであれば、とりあえず今が楽しければ良いという考えになってしまうのも仕方ないのかもしれません。
今の若者世代に必要なのは、頑張った先にある明るい未来のビジョンです。
理念がしっかりしている会社は、どんな未来を目指して今頑張っているのか、なんのために存在しているかという意味を共有しやすく、ビジョンを見せることができます。
未来のビジョンが見えて、それが明るいものであれば仕事に向き合うやる気というものは変わってきます。
若者世代はただ単純にやる気がないのではなく、時代背景がそうさせているところもあります。ですがそれは、未来のビジョンを見せることで変わる可能性は多いにあります。
こうした視点を持って若者世代の変化をみていくと、向き合い方がまた変わってきますね。
株式会社メディカル・マジック・ジャパン 代表取締役
平野井労働衛生コンサルタント事務所 代表
日本産業衛生学会指導医/社会医学系指導医労働衛生コンサルタント(一社)/日本アンガーマネジメント協会ファシリテーター/叱り方トレーナー/ハラスメント防止アドバイザー(一社)/日本ほめる達人協会特別認定講師温泉ソムリエ/SBS東芝ロジスティックス株式会社本社統括産業医
上記ほか、アマゾンジャパン、損保ジャパン等約20社の嘱託産業医を務める。また実践的なパワハラ対策として、感情のコントロール手法としてのアンガーマネジメント研修や褒める管理職研修と数多く開催。
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