【基礎知識】認知症って何?加齢による物忘れとの違いは?
- 作成:2022/11/11
本記事では、認知症とはどのような状態かや、認知症と加齢による物忘れの違いなど、認知症についての概略をご紹介します。
この記事の目安時間は6分です

認知症って何?
「認知症」は、脳の機能に影響する病気や加齢などによって記憶力や実行機能といった認知機能が低下し、それまで問題なく送れていた日常生活にさまざまな支障をきたした状態のことを指します。つまり、“原因は問わず認知機能障害によって日常生活が阻害される“場合に診断されます1)。
認知症の方がどのくらいいるかについては色々な推計データがありますが、日本では65歳以上の高齢者のおよそ10~15%程度が認知症とされています。ただし、65歳以上とひとことに言っても、65~74歳では約5%であるのに対し、80代では20.0~40.0%、90代では60.0%以上と、年齢の高い人ほど「認知症」を抱えている率が高くなることがわかっています2)。
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認知症の症状
誰でも歳をとると物忘れをするようになります。よく認知症の代表的な症状として物忘れが挙げられますが、"加齢による物忘れ”と、"認知症による物忘れ”はどうちがうのでしょうか。ポイントは、日常生活が阻害されるかどうかという点です。
認知症の中で最も多いアルツハイマー型認知症では、「一般的な知識」ではなく「自分の体験したもの」、それも「体験の一部」ではなく「体験そのものの記憶」が抜け落ちます。「昨日の夕食のメニューを思い出せない」、「芸能人の名前を思い出せない」、「スマホをどこに置いたか忘れた」・・・そのような経験は誰にでもあると思いますが、この程度の物忘れがときどきあっても、日常生活にそこまで支障はありません。しかし、「1時間前に昼食を食べたことを忘れてまた昼食をとろうとする」、「家族の名前が思い出せない」、「財布やスマホ・家の鍵などを毎日のように失くす」といった物忘れは、日常生活を送る上で大きな支障となります。このような忘れ方をしている状態は、認知症である可能性が高くなります。

また、認知症では物忘れのほかにも、テレビ番組の内容が理解できないといった理解力・判断力の低下、怒りっぽくなる、ふさぎ込む、些細なことに不安を感じるなどの「行動・心理症状:BPSD(Behavioral and psychological symptoms of dementia)」を伴うことがよくあります。
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認知症の種類
認知症は認知機能低下が起こる原因によって、いくつかのタイプに分類することができます。3大認知症といわれる「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」の特徴をみてみましょう。
■ アルツハイマー型認知症
認知症で最も多く全体の半数以上をしめるもので、脳の一部が委縮していくことによって起こります。症状としては、「自分の体験したもの」、それも「体験の一部」ではなく「体験そのものの記憶」が抜け落ちるような忘れ方をする、理解力や判断力が低下して銀行でお金をおろせなくなる、テレビ番組の内容を理解できなくなる、といったものがあり、数か月~数年をかけてゆっくりと進行します。ある程度進行すると、自覚症状は乏しくなります。
■ 血管性認知症
アルツハイマー型認知症の次に多く、脳梗塞や脳出血によって脳に障害が残ることによって起こります。その症状は、脳のどの部位に梗塞や出血が起きたのかによって様々ですが、脳梗塞や脳出血をきっかけに急激に状態が変化するのが特徴です。
■ レビー小体型認知症
脳の神経細胞に「レビー小体」という異常な構造物が脳のさまざまな部位に蓄積することで起こります。アルツハイマー型認知症に比べると、見えないものが見える(幻視)、眠っている間に暴れたり大声を出す(レム睡眠行動障害)、手足がふるえたり筋肉がこわばったりする(パーキンソン症状)、といった症状が現れやすいのが特徴です。
このように、ひとことに認知症と言っても、その原因によって症状や経過には違いがあります。そのためまずは原因を特定することが大切です。特に、加齢によって起こる正常な範囲の物忘れや、せん妄、パーキンソン病、うつ病などの別の病気を、物忘れがあるからというだけで「アルツハイマー型認知症」だと決めつけてしまうと、誤った対処や治療を行うことになりかねないため、注意が必要です。
「軽度認知障害(MCI)」とは?
認知症のように日常生活に大きな支障をきたすほどでもないが、記憶力などが低下していて正常とも言えない状態のことを「軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)」と呼びます。MCIは、現在、65歳以上の日本人の13%程度が相当するという推計もある3)ほど、身近なものです。
MCIを早期発見することができれば、進行を防ぐ手立てを講じたり、認知機能を取り戻す取り組みを始められたり、今後の生活に備えたりすることができます。認知症を疑うほどひどくはないが、物忘れの頻度が増えてきた、同年代の人に比べて物忘れが激しい、といった不安を感じたら、一度専門医に相談してはいかがでしょうか。
1) 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」
2) 厚生労働省「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応(平成23~24年度総合研究報告書)」
3) 厚生労働省「認知症施策の現状について(平成26年11月)」」
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2003年福井大学医学部卒。福井大学神経科精神科助教を経て、2013年国立精神・神経医療研究センター 思春期精神保健研究室長。2023年より仁恵病院副院長。現在、主に精神科救急医療に従事。専門は児童精神医学。児童のメンタルヘルス向上を目的とした「かかりつけ医等発達障害対応力向上研修」、「児童思春期の精神疾患薬物療法ガイドライン作成」に責任者として携わった。日本精神神経学会専門医・指導医、精神保健指定医、日本児童青年精神医学会認定医、子どものこころ専門医、日本臨床精神神経薬理学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士。
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