【症状】認知症かもしれない行動や言動とは?

  • 作成:2024/01/25

本記事では、認知症や軽度認知障害(MCI)でみられる主な症状について、具体例とともに紹介します。

繁田 雅弘 監修
東京慈恵会医科大学精神医学講座 主任教授
繁田 雅弘 先生

この記事の目安時間は6分です

【症状】認知症かもしれない行動や言動とは?

目次

認知症の症状

認知症の症状は、記憶力や判断力の低下など認知機能に関する「中核症状」と、本人の性格や人間関係、周囲の環境などの影響を受けて出現する「行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)」のふたつに分けられます1)

認知症や認知機能について
気になることを医師に聞いてみませんか?

中核症状

中核症状は認知機能の低下によって引き起こされるもので、様々な種類の障害があります。

■集中力が続かなくなる(全般性注意障害)
例)これまでは得意だった料理で失敗することが増えてきた
例)自動車の運転ミスが増えて、車にこすり傷が多くなってきた

■うまくものごとを進められなくなる(遂行機能障害)
例)夕食の献立がうまく考えられなくなってきた
例)テレビ番組の録画に手こずるようになってきた

■体験したことを忘れる(記憶障害)
例)遠い親戚について、その人と面識があることを忘れている
例)旅行で行った観光地について、その場所に行った体験を忘れている

■読み書きができなくなる(失語)
例)新聞を読めなくなった、読むのが大変になってきた
例)自分で書いたメモが読めない

■計算ができなくなる(失算)
例)レジで財布から何円を出せば良いのか計算できない
例)バスの運賃を支払うのにどの小銭をどれだけ出せばよいのかわからない

■見知った場所で迷う(地誌的失見当識)
例)近所の行き慣れたスーパーへ買いものに行こうとして迷子になる

■実際にはないものが見える(幻視)
例)家の壁などに存在しないはずの虫が見える

■使い慣れた道具が使えなくなる(失行)
例)ハサミをどうやって使えば良いのかわからなくなる
例)今まで使っていた電子レンジが使えなくなる

■空気が読めなくなる(脱抑制)
例)台風が来ているのに、おかまいなしにいつも通り散歩へ行こうとする
例)映画館で大声で電話し始めるなど、これまでは絶対にやらなかったような行動が増えてきた

認知症や認知機能について
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行動・心理症状(BPSD)

行動・心理症状は、認知機能の低下によって自分がどこにいるのかわからず不安を感じたり、対人関係が上手くいかなくなったりすることから引き起こされます。

■怒りっぽくなる
例)食事のとき、おはしの位置がいつもと少し違うだけでひどく怒り始める
例)買いもので、自分の買いたいものが品切れしているだけでひどく怒り始める

■意欲が低下する
例)好きだった相撲中継に全く興味を示さなくなった
例)好きだった本を全く読まなくなった

■強い不安を感じる
例)貯金があるか不安になって、貯金通帳を毎日のように確認している
例)家の戸締りが不安になって、不必要なほどたくさん鍵をつけようとしている

■ものを誰かに盗まれたと決めつける
例)ハンコが見つからないので「出入りしている看護師さんが盗ったに違いない」と決めつけて怒っている
例)以前自分が処分した車なのに、家にないので「誰かに盗られた」と勘違いして慌てている

■あてもなくひとりで歩き回る
例)定年退職した会社に出社しようと外に出て、会社の場所がわからず外をうろうろ歩き続ける
例)トイレに行こうと部屋から出て、トイレの場所がわからず自宅内をうろうろ歩き続ける

これらの行動・心理症状は、本人が不安や対人関係のストレスから解放され、気持ちが落ち着くと改善していくことがあります2)

軽度認知障害(MCI)の症状

認知症の中核症状や行動・心理症状は日常生活に大きな支障をきたします。一方で、日常生活はしっかり送れているものの、昔と比べると集中力の低下やもの忘れが気になるという方もいらっしゃるかもしれません。
誰でも年を重ねると、もの忘れは増えていきます。しかし、そうしたもの忘れが、実は認知症の前段階である軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)であったというケースもみられます。MCIは、年間で5~15%が認知症に進行するといわれています1)
MCIでは、認知症のように「体験そのものを忘れる」ということはありませんが、体験の具体的な内容を忘れてしまったり、会話のなかで同じ話や質問を何度も繰り返したりなどの症状がみられます3)。また、「ものをしまい忘れる」「計画を立てられなくなる」「整理整頓が難しくなる」「集中力が低下する」なども起こります3)
加齢によるもの忘れとMCIの症状を自分自身で見分けることは難しいかもしれません。気になることがあれば、一度専門医に相談してみてもよいでしょう。

1) 日本神経学会監修 「認知症疾患診療ガイドライン2017」
2) 繁田雅弘監修 「安心な認知症 マンガとQ&Aで、本人も家族も幸せになれる!」 主婦と生活社, 2021
3) 鈴木みずえ, 繁田雅弘 「軽度認知障害の人への生活支援とケア」 老年精神医学雑誌33: 1296-1303,2022

東京慈恵会医科大学精神医学講座教授。日本認知症ケア学会理事長。神奈川県平塚市にある実家を拠点に、地域住民と一緒に認知症の啓発活動などをおこなう「SHIGETA ハウスプロジェクト」を主催。主な著書、監修書に『認知症の精神療法 アルツハイマー型認知症の人との対話』(HOUSE出版)、『安心な認知症 マンガとQ&A で、本人も家族も幸せになれる!』(主婦と生活社)、『気持ちが楽になる 認知症の家族との暮らし方』(池田書店)などがある。

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