【基礎知識】認知症って何?老化によるもの忘れとの違いは?

  • 作成:2024/01/25

本記事では、認知症の定義や原因、症状、認知症と老化によるもの忘れの違いなど、認知症の基礎知識をご紹介します。

繁田 雅弘 監修
東京慈恵会医科大学精神医学講座 主任教授
繁田 雅弘 先生

この記事の目安時間は6分です

【基礎知識】認知症って何?老化によるもの忘れとの違いは?

目次

認知症って何?

記憶、思考、計算、学習、判断など、日常生活を送る上で必要な脳の働きのことを認知機能といいます。認知症は、脳機能に影響する病気などによって、この認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障を来す状態です。
日本では、65歳以上の高齢者のおよそ15%程度が認知症とされています1)。また、80代では20.0〜40.0%、90代では60.0%以上と、年齢が高いほど認知症である割合が高くなることがわかっています1)

【基礎知識】認知症って何?老化によるもの忘れとの違いは?

日本における年齢別の認知症である割合1)

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認知症の原因

認知症は認知機能の低下が起こる原因によって、いくつかのタイプに分けられます。その中でも代表的なのが「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」の3つです。

■ アルツハイマー型認知症
脳の中に異常なたんぱく質がたまることで、脳の一部が萎縮し、認知機能が低下する病気です。
認知症の中で最も多く、全体の半数以上をしめます。

■ 血管性認知症
脳梗塞や脳出血で脳に障害が残ることによって認知機能が低下する病気です。
障害の原因の多くは脳梗塞です。

■ レビー小体型認知症
脳のさまざまな部位に「レビー小体」という異常なたんぱく質のかたまりが蓄積することで認知機能が低下する病気です。

認知症の症状

認知症の症状は、認知症のタイプによって異なります。

■ アルツハイマー型認知症
症状としてはもの忘れが目立ちます。数分〜数日前のことを覚えているのが難しくなり、何度も同じことを繰り返したり、同じものをいくつも買ったりして、日常生活に支障をきたします。

■ 血管性認知症
認知機能の低下よりも意欲の低下が目立ち、気分が沈みがちになります。歩けなくなる、ろれつが回らなくなるなどの身体的な症状も見られます。

■ レビー小体型認知症
認知機能が変動し、意識が良好な状態と低下した状態が入れ替わりに現れます。また、幻視や睡眠中に大声を出すなどの異常行動が見られます。

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認知症と老化によるもの忘れの違い

歳をとり老化すると、誰でももの忘れをするようになります。アルツハイマー型認知症の代表的な症状であるもの忘れは、老化によるもの忘れとどう違うのでしょうか。
実は、初期の認知症と老化によるもの忘れの境界はあいまいで、医師でも区別することが難しいといわれています2)
この2つの大きな違いはもの忘れが進むスピードです。
老化によるもの忘れは短期間で大きく進行することはありません。しかし、認知症によるもの忘れは数か月〜1年単位で症状が進行していきます2)

また、老化によるもの忘れは一般的な知識や自身の体験の一部分だけであるのに対して、認知症では体験したことそのものを忘れてしまいます3)。例えば、「昨日の夕食のメニューを思い出せない」といった状況は誰にでも起こり得ますが、「夕食を食べたこと自体を忘れてまた夕食をとろうとする」という場合は、認知症である可能性が高まります。

【基礎知識】認知症って何?老化によるもの忘れとの違いは?

軽度認知障害(MCI)とは?

認知症のように日常生活には大きな支障をきたさないものの、認知機能に問題がある状態のことを軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)といいます。
MCIは放置すると認知症に移行することがあり、年間で5~15%がMCIから認知症に進行するといわれています3)。推計では、65歳以上の日本人の15~25%程度がMCIに相当します3)
MCIでは、もの忘れのほかに「整理整頓ができなくなる」「計画が立てられなくなる」「集中力が低下する」などの症状も起こりやすいとされています4)以前と比べて記憶力が低下したり、仕事の手際が悪くなったりなどの変化を感じたら、一度専門医に相談してみてもよいでしょう。MCIは、適切な対応や治療を行うことで認知機能が回復したり、認知機能低下の進行を遅らせたりできる場合もあるので、早期に気づくことが重要です。

【基礎知識】認知症って何?老化によるもの忘れとの違いは?

健常な状態から認知症になるまでの経過

1) 厚生労働省 「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応(平成23~24年度総合研究報告書)」
2) 繁田雅弘監修 「安心な認知症 マンガとQ&Aで、本人も家族も幸せになれる!」 主婦と生活社, 2021
3) 日本神経学会監修 「認知症疾患診療ガイドライン2017」
4) 鈴木みずえ, 繁田雅弘 「軽度認知障害の人への生活支援とケア」 老年精神医学雑誌33: 1296-1303,2022

東京慈恵会医科大学精神医学講座教授。日本認知症ケア学会理事長。神奈川県平塚市にある実家を拠点に、地域住民と一緒に認知症の啓発活動などをおこなう「SHIGETA ハウスプロジェクト」を主催。主な著書、監修書に『認知症の精神療法 アルツハイマー型認知症の人との対話』(HOUSE出版)、『安心な認知症 マンガとQ&A で、本人も家族も幸せになれる!』(主婦と生活社)、『気持ちが楽になる 認知症の家族との暮らし方』(池田書店)などがある。

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