「薄着で免疫力アップ」って本当? 子どもの服装と風邪の関係でわかっていることは…
- 作成:2022/11/30
AskDoctorsでは、子どもの病気やケアで親が悩みがちなポイントについて、小児科医の森戸やすみ先生に解説いただいています。連載第14回のテーマは「子どもの服装は薄着がいい?」です。昔から「子どもは風の子」と薄着を推奨する風潮がありますが、医学的にはどうなのでしょう。森戸先生に伺いました。
この記事の目安時間は3分です
子どもは年平均6~8回は風邪をひく
冬本番に向けて、寒くなってきました。育児書やネットの記事には「薄着で免疫力が上がる」などと書かれていたり、冬でも裸足で過ごす保育園もあるようです。一方で、周囲から「そんな薄着では子どもがかわいそう」「もっと厚着をさせなさい」と言われることもあり、衣服選びに迷う保護者は多いのではないでしょうか。
まず、薄着でいれば免疫力が上がるかどうか――。これを医学的に確かめるには、寒い時期に一定期間子どもに薄着をさせて、免疫の状態を調べる必要があります。でも、子どもを危険にさらすような研究はできないし、仮に可能だったとしても何を基準に「免疫が上がった」と証明するかなど色々と難しい面があります。現時点で、薄着で免疫が上がるという説は正しいかどうかわからず、医学的な根拠はないのです。
もともと乳幼児は風邪をひきやすく、小児科の有名な教科書の『ネルソン小児科学(第18版)』には、「子どもは年平均6~8回は風邪をひき、9~15%は少なくとも年に12回は風邪をひく」とあります。小児科に来る患者さんのボリュームゾーンは2歳前後で、「風邪をひいた」「熱が出た」としょっちゅう来院するお子さんもいます。でも、小学校に上がる頃になると、そうそう風邪はひかなくなります。それは薄着や裸足がよかったわけではなくて、何回か風邪をひいているうちに抗体ができたからだと思います。
子どもはおとなよりも寒さを感じやすい
子どもには、根拠の少ない薄着推奨よりも、適切な衣服を身につけて快適に過ごした方がいいと思います。
ただ、大人が快適だと感じる服装が、子どもにとってもちょうどいいとは限りません。「子どもは暑がりだから、薄着にした方がいい」「大人より1枚少なめに」などという人もいますが、冬でも大人より暑がるわけではありません。子どもは体が小さいぶん周囲の温度の影響を受けやく、大人より暑さも寒さも感じやすいのです。保護者など周囲の人が衣服を調節してあげてください。
やせている子どもは皮下脂肪が少なく、より寒さを感じやすいかもしれません。すべての子どもに当てはまる正解はないので、目の前にいるお子さんをよく見て、なるべくこまめに着せたり脱がせたりできるのが理想的です。
保育園には「脱ぎ着のしやすいもの」を
これから保育園に通わるお子さんの保護者から「親がいるときはこまめに服装の調節ができるけれど、保育園ではどのような服装がいいの?」と聞かれることもありますが、保育園の室内で快適に過ごせる衣服にプラスして、お散歩や外遊びで羽織るものを用意するといいと思います。
また、海外製のベビー服は足先まで覆われているタイプも多く、「こういうベビー服は良くないでしょうか」と心配する保護者もいます。でも、隙間風が入ってこなくて温かいですし、靴下を紛失しないというメリットもあります。
室内で過ごす場合は足首までの衣服にし、足先まで覆われたタイプは外出時に着せるなど、上手に使い分ければ良いのではないでしょうか。
1971年、東京生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内のどうかん山こどもクリニックに勤務。『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)、『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)など著書多数。二児の母。
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