「汗をかかないと汗腺が育たない」って本当!? 汗と皮膚トラブルの関係と、今からでも遅くないスキンケア
- 作成:2022/08/18
AskDoctorsでは、子どもの病気やケアで親が悩みがちなポイントについて、小児科医の森戸やすみ先生に解説していただいています。連載第11回は「夏の皮膚トラブル」がテーマ。あせもや虫刺され、日焼けについて、森戸先生のアドバイスをお届けします。
この記事の目安時間は3分です
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残暑も油断できないあせも
暑くなってくると、小児科の外来には皮膚トラブルで受診するお子さんが増え始めます。圧倒的に多いのは汗疹(かんしん)、いわゆる「あせも」です。
高温多湿な環境下ではたくさんの汗をかきます。暑さを感知したからだは、汗を出すことによって体温が上がりすぎるのを抑えようとしているのです。
ところが、汗をかいてそのままにしておくと、汗そのものや皮脂、垢、ホコリなどで「汗腺」と呼ばれる汗の通り道が塞がれて炎症を起こし、小さな赤いブツブツができます。汗をかきやすいおでこや首まわり、皮膚がこすれるひじやひざの内側、足の付け根などは、特にあせもができやすい部分です。かゆみをともなうことが多く、かき壊すとヒリヒリと痛みを感じることもあります。
必要以上に汗をかかないことが大事。汗をかいあとのケアも忘れずに
あせもができるのを防ぎ、できてしまったあせもを早く治すには、セルフケアが重要です。ポイントは4つあります。
エアコンは躊躇せずに使う
子どもは年齢が低いほど体温調節機能が未熟。でも、「暑熱順化」(しょねつじゅんか)といって、暑い環境で過ごしているうちに暑さに慣れ、上手に汗をかいて体温コントロールができるようになります。
保護者の中には、暑熱順化を意識しすぎて「冷房を使いすぎると、うまく汗をかけなくなるのでは」とエアコンの使用を控える方もいらっしゃいます。その結果、汗びっしょりで、あせもだらけになっているお子さんが少なくありません。
暑熱馴化のためには、暑い環境に1~2時間いる日が、数日から2週間程度あれば十分と言われています。そのくらいであれば、たいていのお子さんは保育園や幼稚園の行き帰り、外遊びなどでクリアしているのではないでしょうか。暑い場所で長時間すごす必要はないのです。あせもだけでなく熱中症を防ぐためにも、エアコンで快適な室内で過ごしてください。
汗をかいたらすぐシャワー、保湿も忘れずに
あせもの大きな原因は汗そのものではなく、かいた汗をそのままにすることです。皮膚に汗や汚れがたまり、汗腺が詰まってあせもができやすくなります。シャワーを浴びて汗を流し、清潔を保つようにしてください。外出先でも公園などで水道があれば手足を水で流し、水が使えない時はタオルやボディペーパーでふき取るといいでしょう。
シャワーや入浴の後は、忘れずに保湿剤を塗りましょう。乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、あせもができやすくなるので、潤いを保つことが大切です。
通気性、吸水性のある服を選んで
暑いときは、タンクトップやホットパンツのような露出が多い衣服を選びたくなるかもしれません。でも、ある程度からだを覆う衣服のほうが、汗を吸ってくれるので、あせも防ぎやすいでしょう。ピッチリしたデザインではなく、風通しが良い体に合ったサイズのもの、綿や麻など吸湿性がある生地の衣服は、よりあせも対策に向いています。
衣服や下着と背中の間にタオルを挟むのもいい方法ですね。タオルが汗でびっしょりになったら、できるだけ早く取り換えるようにしてください。
あせもができてしまったら早めに受診を
あせもをかきむしってしまうと、その部分が細菌感染して炎症が悪化することがあります。かいているうちに水ぶくれができ、それが破れることで他の場所にも広がってしまう「とびひ」になってしまうことも。あせもをかゆがるようなら小児科や皮膚科を受診し、ステロイドなどかゆみを抑える薬を処方してもらうといいでしょう。
その虫除けは、本当に「蚊」を防ぐ効果がある?
虫刺されも、夏に急増する皮膚トラブルです。蚊に刺された時のかゆみは数日~1週間でなくなりますが、かきむしってとびひを起こさないために、早めにかゆみ止めを塗りましょう。ひどくなる前なら、市販薬でもちゃんと効きます。
野外で長時間過ごす時は、長袖、長ズボン、白っぽい色の服の方が蚊に刺されにくくなります。とはいえ、暑すぎてそうできない場合は、虫よけの薬を使うといいでしょう。科学的に虫よけ効果が確認され、日本で認可を受けている成分は「イカリジン」「ディート」の2種類だけです。このうち、ディートは生後6か月目までは使えません。生後6か月以降も月齢ごとに使用回数の制限があるので、注意が必要です。
なお、ドラッグストアやオンラインストアなどでは、シールタイプやリストバンドタイプ、吊るすタイプなどさまざまな虫よけが売られています。使用する際は、含有成分や対象害虫をよく確認しましょう。たとえば、ユーカリ油はアメリカ疾病予防管理センター(CDC)が3歳未満に使用しないよう、注意喚起を行っています。また、吊るすタイプの虫よけ、蚊を防ぐ効果のないものがほとんどです。蚊に刺されないようにベビーカーや網戸につけている方が多いのですが、製品の表示を十分に確認したほうがいいでしょう。
紫外線は、帽子など物理的対策をメインに!
夏のお出かけは、日焼けも気になりますよね。紫外線に当たりすぎると皮膚が炎症を起こすだけでなく、将来的にシミやシワなどの光老化、皮膚がんなどの原因になることがわかっています。日焼け対策に熱心な保護者もいることでしょう。
日焼け対策=日焼け止めを塗ること考えるかもしれません。でも、帽子をかぶせたり、ベビーカーの日よけを使ったり、UVカット素材の長袖を着せるなど、物理的に日に当たらないようにしたほうが確実です。日焼け止めは、どうしても日に当たってしまう部位に塗るなど、補助的に使うようにしましょう。
日焼け止めには、紫外線を集める「紫外線吸収剤」を使ったものと、紫外線を散らす「紫外線散乱剤」を使ったものがあります。紫外線吸収剤を配合したものはかぶれやすいので、子どもには紫外線散乱剤タイプを使ったほうがいいでしょう。
日焼け止めの強さは、普段用ならSPF15~20、PA++、海や山、紫外線の強いところに行くときはSPF20~40、PA++~+++を目安に選んでください。
なお、悪者にされがちな紫外線ですが、実は全く当たらないのも問題です。骨をつくるために必要なビタミンDは、紫外線を浴びることによって体内で生成され、不足するとくる病(骨軟化症、弱い骨ができてしまう状態)を引き起こす可能性があります。
ただ、真夏の東京なら数分外に出ていれば十分。積極的に日光に当たる必要はありません。
1971年、東京生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内のどうかん山こどもクリニックに勤務。『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)、『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)など著書多数。二児の母。
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