日光角化症の原因、症状、治療、予防 がんに変化する?手術が必要?

  • 作成:2016/09/09

日光角化症は、紫外線が影響して、皮膚にシミが出る病気で、確立は高くありませんが、皮膚癌になることもあります。症状や治療、予防方法も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

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目次

日光角化症の原因

「日光角化症(にっこうかくかしょう)」とは、放置しておくと皮膚がんに変化する可能性がある「皮膚がんの前駆症」と呼ばれる皮膚の病気です。発症原因は慢性的に受ける日光の紫外線です。紫外線によって受けた皮膚へのダメージが長年蓄積され角化異常(皮膚の質の変化)を起こし、シミやカサブタになって皮膚に現れてきます。シミなどの症状が良く起きる部位は、頭皮、顔面、耳、唇、手の甲、腕、肩、首など、日光を日常的に多く浴びている皮膚表面です。日光角化症には発症のリスク因子があり、以下のような方で多く発生する傾向になります。

・60歳以上
・野外スポーツを頻繁に行う人
・農業や漁業といった野外での作業が多い職業の人
・色白の人
・肌露出部の褐色のシミ(脂漏性角化症という良性腫瘍)の数が多い人
・若いころから紫外線対策を怠ってきた人
・紫外線量が多い地域で長い間生活している人
・抗がん剤治療を受けた人
・免疫不全の人

日本では、現在、年間10万人以上が日光角化症を発症していると推測され、発症も年々増加しています。また、紫外線量が多い緯度の低い地方で発症率が高くなっています。日光角化症は皮膚の浅いところ(表皮)にとどまっている状態(がん前駆状態)では転移の心配はなく、周囲の組織への浸潤(しんじゅん;破壊して入り込むこと)もありません。しかし、およそ8%の確率で浸潤性の「有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がん(SCC、「扁平上皮がん」とも)」になっていくと見積もられています(日光角化症の診断と治療 斎田俊明:Skin Cancer. 25, 214-231, 2010)。

日光角化症の症状

典型的な日光角化症の症状は、皮膚に現れるシミです。シミの形や大きさは人によって様々です。平均的な大きさは1センチから3センチ程度のようですが、それより大きい場合もあります。また、皮膚は再生を繰り返しますので、現れてきたシミの形や隆起も徐々に変わることを覚えておいてください。日光角化症には痛みやかゆみがほとんどないため自覚症状がなく、見逃されやすい疾患といわれています。

製薬会社で発表している自分で確認するチェックリスト項目では、以下のようなシミがある場合、医療機関を早めに受診するように推奨しています。

・かさぶたがついている紅みかかったシミ
・表面がざらざらしているシミ
・形が不規則なシミ
・周辺の皮膚との境界線が不明なシミ
・感触が硬いシミ

また、日光角化症の典型的なシミの種類は以下の通りです。

「紅斑型」:日光角化症で一番多くみられるシミです。紅色の平らなシミですが、表面がかさかさしていて魚の鱗(うろこ)のようなかさぶたが出てきます。
「色素沈着型」:淡い褐色や濃い褐色がまだら状に見えるシミです。表面はほとんどが平らですが、多少隆起している場合もあります。
「疣状型(ゆうじょうがた)」:シミの表面が固くなって角化し、イボ(疣)のようになっています。イボの周辺が紅色になっていることが多いようです。

日光角化症は何科を受診するのか?治療方法は?

日光角化症の診断と治療には皮膚科専門医を受診してください。確定診断(間違いないと判断する診断)には、「皮膚生検(皮膚の一部を採取し顕微鏡で検査)」や「ダーモスコピー診断(拡大鏡による痛みなど伴わない皮膚の観察)」が実施されます。日光角化症の治療では、今のところ「薬物療法」と「外科的療法」の2つが主流です。

薬物療法では、主にクリームや軟膏などの塗り薬を皮膚に塗り治療してゆきます。現在「5-fluorouracil:5-FU(フルオロウラシル軟膏)」と「imiquimod(イミキモドクリーム)」という2種類の薬が使用されています。 ①フルオロラウシルは、1日1回から2回、2週間から4週間使用を継続します。日本では「包帯療法」といって、患部をラップなどでおおい密封する方法が推奨されています。副作用として、灼熱感、強い痛み、色素沈着、かさぶたなどがあげられていますが、傷が残ることもなく2週間程度の使用でシミが消えると報告されています。 ②イミキモドは、細胞免疫系を刺激する作用などで、シミができている皮膚細胞を死滅させると考えられています。顔面および頭部(髪の毛のないおでこなど)のシミだけが日本での保険適応になっています。1日2回から3回、1週間から数週間使用を継続します。副作用として、紅斑、かさぶた、浮腫(ふしゅ;水分による腫れ)、乾燥、びらんなどが出る人もいます。どちらの薬を使用するかは、シミの形状、大きさ、シミの広がり具合、シミができている場所により医師が判断します。

日光角化症の外科的療法(手術による治療)

外科的療法では、「凍結療法」と「外科切除」が実施されています。どちらもシミが大きくなく、多発していない場合に実施されます。 ①凍結療法とは、局所麻酔はせず液体窒素を患部に押し付け、シミができている皮膚細胞を、凍結、変性、壊死させる方法です。凍結の際に痛みを伴い、処置は数回実施(1か月程度の通院が必要)されます。 ②外科切除とは、局所麻酔を用いシミの辺縁から1ミリから2ミリ程度離して、皮膚脂肪組織の浅層(外部に近い、浅い部分)を全て摘出する方法です。シミが角化している場合、シミが深い場合に選択されている方法です。通院は施術と抜糸の2回となります。薬物療法、外科的療法どちらにも健康保険が適用されますので病院での診察代や薬局での薬代は自己負担額3割です。

予防は可能?再発の可能性は?

日光角化症の予防は可能です。ただし、日光角化症の皮膚ダメージは生涯にわたって浴び続けた紫外線量の合計のため、子どものころからずっと蓄積されてきたダメージと考えてください。予防対策としては、「紫外線を浴びないこと」です。地上に届いて肌にダメージを与える紫外線は「A波」と「B波」と呼ばれるものです。どちらにも対応できるUVクリームを、日常生活で使用するようにしましょう。UVクリームの効果の目安として、通常SPF15以上を、野外活動の多い人はSPF30以上を、海や山など紫外線を浴びる率が高い場合はSPF50が目安となります。塗りっぱなしではなく汗をかいたらこまめに塗り直すことも予防効果を持続してくれます。可能な範囲で、紫外線の強い朝10時から夕方4時はなるべく外出を避け、外出時にはサングラス、帽子、日傘などを使用し日焼けを防ぎます。

治療後も、日光角化症が再発する可能性はあるといわれていますので、一度治療をした人でも定期的に皮膚科で検査をしてください。日光角化症予防の最善の対策は日頃からの紫外線を浴びないことです。治療後でも紫外線対策は怠らないようにしましょう。有棘細胞がん(SCC)に移行する確率は小さくても、その可能性が全くないわけではありませんので、鏡をみて、皮膚に異変がないか、シミに異変がないかなどを確認する習慣をつけましょう。

日光角化症についてご紹介しました。皮膚の症状の異変に不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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