増加中!くる病の原因、症状、治療 ビタミンD、母乳、日光浴が関係?予防方法は?
- 作成:2016/05/27
くる病とは、ビタミンDの不足によって、骨に問題が出て、低身長などにつながる病気です。また、母乳だけで育てると、くる病のリスクがあがると考えられます。原因から予防方法まで、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
くる病の原因 ビタミンDや母乳との関係
「くる病」とは、子供の骨の形成において、カルシウムやリンが不足することで石灰化がうまくいかず、骨が軟らかくなってしまう病気です。大人に起こった場合には、「骨軟化症」と呼ばれます。日本では、食糧の乏しい戦後の時期に見られましたが、栄養状態の改善と共に減少しました。しかし近年、くる病が再び増加していることが指摘されています。原因はビタミンD不足の問題だと言われています。ビタミンDには、骨の石灰化を促進する働きがあります。ゆえに、ビタミンDが足りない、もしくは体質としてビタミンDが作用しなければ、骨が十分に硬くなることができず、くる病になると考えられます。
ビタミンDが不足する原因の一つが「完全母乳栄養(母乳栄養だけで赤ちゃんを育てること)」です。母乳には様々な栄養が含まれており、優れた栄養源であることは確かなのですが、ビタミンDは含まれていないことがわかっています。ビタミンDが多く含まれる食物としては魚や干物がありますが、食生活の欧米化により、これらの食物を摂取する機会は以前と比較して少なくなりました。他には必要なビタミンが添加された人工乳がありますが、乳製品に対してアレルギー症状を引き起こす子供の場合は摂取できません。結果として、必要なリンやカルシウムなどの栄養も不足しがちになるため、くる病になりやすくなるとされます。
日光の不足も関係
ビタミンDは食事から摂取する他、日光を浴びることにより体内で合成されますが、近年は紫外線の悪影響が強調されていることから外出を避ける傾向にあり、日光を浴びる機会が少なくなっています。この事実もビタミンDの不足を助長していると言えるでしょう。その他、遺伝的な要因により、体内でビタミンDを活性化することができない、ビタミンDの影響を受けにくい体質など、体がビタミンDを利用しにくい状態となっているために、くる病を発症してしまう場合もあります。
くる病の症状 低身長や歩行の問題も
くる病では、骨が弱くなることにより、様々な症状をきたします。まず、骨の形成が不十分となり、低身長となります。大腿骨(太ももの部分の骨)や脛骨(すねの内側の骨)など足の骨が変形し、O脚やX脚になります。足の骨が曲がると歩きにくくなり、アヒルのような歩行が見られることもあります。
胸部では、肋骨と軟骨の接合部(くっついている部分)が腫瘍となって大きくなり、「くる病念珠(ねんじゅ)」「肋骨念珠」と呼ばれる肋骨のこぶができます。横隔膜の付着する肋骨が内側に引き込まれて変形する「Harrison溝」と呼ばれる症状が見られることもあります。
また、頭蓋骨は乳児の段階では分かれていて、成長に伴い融合して完成しますが、くる病では、頭蓋骨の融合が遅れることがあります。頭蓋骨自体も軟らかく、容易にへこむ現象が見られる場合もあります(頭蓋癆、ずがいろう)。他に、乳歯の発育が遅れたり、背骨が曲がることもあります。X線撮影像では、足の骨の変形や、手の付け根の骨がカップの形に変形していることが確認できます。
くる病の治療
くる病の治療方法は、原因により異なります。ビタミンD欠乏性、つまりビタミンD不足の場合、食事や日光浴などの生活指導を行います。ビタミンDの活性化がうまく行われない、ビタミンDをうまく活用できない場合には、活性型ビタミンDの投与を行います。ビタミンDは脂溶性(脂に溶けること)で尿と共には排泄されず、過剰な投与は腎臓へのカルシウム沈着を引き起こしてしまうため、尿中のカルシウムとクレアチニンの比を定期的に確認して、腎臓の働きをチェックします。カルシウムやリンが不足する場合には、足りない栄養素を補います。
くる病の予防方法
遺伝的に発症する場合を除き、くる病の主な原因は栄養不足と日光浴の不足です。ゆえに、食事療法と生活改善がくる病の予防に有効です。食事に関しては、骨を硬くするために必要な栄養素であるビタミンDやカルシウム、リンなどを多く含む食品を意識して摂取することが重要です。これらの栄養素は、魚や乳製品、大豆製品などに多く含まれているので、普段の食事にバランス良く取り入れていくと良いでしょう。また、最近では紫外線による悪影響を過度に恐れるあまり、外出が避けられる傾向にありますが、適度な日光浴は必要です。特にビタミンDは母乳には含まれないため、乳児における適度な日光浴は骨の形成において重要な意味を持ちます。現在は紫外線をカットする衣服や窓ガラス、子供用の日焼け止めも売られていますので、紫外線対策をしっかりと行いつつ、朝や夕方などの紫外線の弱い時間帯に、毎日数分から30分間くらいの日光浴を心掛けるようにしましょう。
くる病の原因や症状についてご紹介しました。乳児の栄養などに不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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