入園・入学シーズンは「子どもの便秘」が多い時期!園のトイトレや、学校のトイレで困る子も…
- 作成:2023/04/22
AskDoctorsでは、子どもの病気やケアで親が悩みがちなポイントを、小児科医の森戸やすみ先生に解説していただいています。連載第19回のテーマは「子どもの便秘」。入園や入学、進学などで環境が変わる春先は、実は便秘になりやすいシーズン。便秘の予防や解消のために保護者ができる対応について、森戸先生に伺いました。
この記事の目安時間は3分です
赤ちゃんでも便秘になる
子どもの便秘に明確な定義はありませんが、排便が週3回未満、あるいは出ない日が3日以上続いているなら便秘と考えていいでしょう。また、毎日排便していても、1回の便の量がごくわずかだったり、出すときに痛がって泣いたり、肛門が切れたりする場合も便秘に含まれます。
子どもの便秘は珍しいことではなく、母乳やミルクしか口にしていない乳児期から便秘になる子もいます。特にトイレトレーニングを始める2~3歳頃は、便秘の好発時期。小学校に入学した直後も、新しい環境でなかなか「トイレに行きたい」と言い出すことができなかったり、トイレに行くタイミングを逃したりして便秘になる子が増えます。
腸の中で便が硬くなり、悪循環に…
便秘になるとおなかが張ったり、痛んだりして苦しいものですが、子どもは大人よりもおなかの容積が少ないので、便がたまることによる影響はより深刻です。ミルクや食べた物を吐きやすくなったり、食欲が減ったり、お腹が痛くなったりなどの影響が見られることもあります。
また、長時間腸の中に滞留した便は、水分が少なくなって硬くなります。硬い便は出にくい上に、出すときに痛いので、子どもは便意があっても我慢してしまいます。その結果、ますます便がたまり、硬くなる。さらにいつも肛門周辺に硬い便があると、だんだん便意が起こりにくくなる……というように、悪循環に陥って慢性化してしまうんですね。
家庭でできる子どもの便秘対策
悪循環に陥る前に対処することが大切です。3日間、排便がないときは、まず、以下のような家庭でできる方法を試してみてください。
おなかのマッサージ
子どものおなかに手を当て、優しく「の」の字を書くように時計回りにマッサージをして刺激します。
綿棒刺激
綿棒にワセリンやオイルをつけて肛門を刺激する方法です。肛門周辺をちょんちょんと刺激してみて、効果がない場合は綿棒を1~2cm肛門に入れ、ゆっくり円を描くように動かします。
なお、3歳を過ぎていれば、市販のグリセリン浣腸を使用してもかまいません。
砂糖水を飲ませる
赤ちゃんの場合は砂糖水を飲ませると、便秘が解消することも。糖分には便をやわらかくし、腸の働きを刺激する効果があります。
これらの方法で解決できない時は、小児科を受診しましょう(すべて行ってからでないと受診してはいけないというわけではありません)。
また、子どもの便秘の多くは、排便習慣がしっかり身についていないことが原因なので、綿棒刺激などで排便できたとしても、根本的な解決にならないことが少なくありません。便秘を繰り返している場合も、相談に来てください。
小児科では便秘をどう治療する?
小児科では、子どもの便秘に対して次のような治療を行います。
便を出す処置
自分で排便ができずに苦しんでいるときは、浣腸や刺激性下剤の坐薬、摘便(指で硬くなった便のかたまりを出す)などで便を出します。
薬物療法
薬を服用して、便を出しやすい状態にします。
使用する薬はさまざまで、腸内の水分を増やす「酸化マグネシウム製剤」、大腸を刺激してぜん動運動を促す「ピコスルファートナトリウム水和物」、飲食した水分を便中に取り込んでやわらかくする「ポリエチレングリコール製剤」などの中から、年齢とそれぞれの状態に合わせた薬を適量処方します。
薬は様子を見ながら徐々に減らし、自分の力で排便できるように習慣づけていきます。
生活習慣とトイレ環境を改善
治療と並行して生活習慣を整えることも大切です。
食事は月齢・年齢に応じた必要量をしっかりととりましょう。野菜や果物、海藻、豆類などに多く含まれる食物繊維は便のカサを増して出やすくしてくれます。
食べ物が胃の中に入ると、腸も活発に動くようになるので、毎日しっかり朝食をとるなど、規則正しい生活を心がけてください。お子さんの食事や排便の状態を把握するために、日誌をつけてもらうこともあります。
排泄習慣をしっかり身に着けるために、毎朝、通園や通学までの時間にトイレに座る習慣をつけられれば理想的ですが、忙しいと難しいもの。夕方、帰宅してからでも構わないので、落ち着いてトイレに座れる時間を作るといいでしょう。「うんちをしたくなったらすぐにトイレに行こうね」と声掛けをしてあげてください。
排便できたらカレンダーにシールを貼るなど「成功体験の見える化」も、モチベーションにつながります。
また、トイレが「嫌な場所」になってしまわないように、トイレ環境を見直すこともおすすめします。便器に座った時に床に足がつかないと踏ん張れないので足台を置く、子どもが好きなキャラクターを飾るなど、工夫してみましょう。
便秘は早い段階で治療を始めれば、短期間で改善する可能性があります。でも、慢性化した便秘は数年にわたる治療が必要なこともあります。根気よく治療していきましょう。
1971年、東京生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内のどうかん山こどもクリニックに勤務。『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社)、『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)など著書多数。二児の母。
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