妊娠糖尿病の原因、症状、予防 自覚症状は?なぜ気づきにくい?ストレスでもなる?

  • 作成:2015/11/19

妊娠糖尿病は、妊娠中に初めて糖尿病と診断される病気で、インスリンの働きを弱めるホルモンが胎盤から出ることが原因となります。放置すると、母親だけでなく、流産や胎児の死亡も含めた胎児への影響もありますが、自覚しにくいのには理由があります。ストレスを含めた原因や自覚症状として気をつけるべき点を、医師監修記事でわかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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妊婦

妊娠糖尿病は妊婦の1割弱 原因は?

妊娠糖尿病は、「妊娠中に初めて糖尿病と診断されたもの」を指し、妊娠前に糖尿病と診断されているものは含みません。症状や病気の原因は糖尿病とほぼ同様です。膵臓から分泌されるインスリンという血糖値を下げるホルモンが低下したり、うまく機能できないことにより血液中の糖が高くなってしまいます。

一般的な糖尿病と妊娠糖尿病の違いは、妊娠時に胎盤から出てくるホルモンが原因になることです。このホルモンはインスリンの力を弱める作用があるので、妊娠中にはいつもより多くのインスリンを分泌しないと血液中の糖を正常に保つことができません。

正常の場合は、胎盤から出るホルモンによりインスリンの働きが弱められたとしても、十分なインスリンが膵臓から分泌されるので血糖値は正常範囲内に保てます。しかし, 妊娠糖尿病の場合は、インスリン分泌に異常があり、十分な量のインスリンが出ないため血糖値が高くなります。妊婦の7%から9%が妊娠糖尿病と診断され、特に肥満、糖尿病歴がある家族をもつ人、高齢妊娠、巨大児出産歴のある人はリスクが高いと言われています。

ストレスは妊娠糖尿病の原因になる?

ストレスは、妊娠糖尿病の原因の1つとして考えられています。糖尿病とは「血糖値が高い状態」をいいますが、ストレスがかかると血糖値は高くなります。

もともと、人間のストレスは飢えが大半を占めていました。人の身体はストレスがかかると、命の危機から身を守るため、身体に蓄えてある脂肪を分解して、「グルコース(血糖)」に変化させます。グルコースは、脳や筋肉などでエネルギーに変換され、頭を働かせ、食料を得るために身体を動かすエネルギーとして使われました。飢えを乗り越えるためには血糖値の上昇がかかせません。このため、私たちの身体には血糖値を上昇させるホルモンは複数あります。

一方、血糖値を低下させるホルモンは「インスリン」1つしかありません。そして、妊娠中は赤ちゃんにエネルギーを届けるため、「インスリン抵抗性」が高くなっています。「インスリン抵抗性が高い」ということは、インスリンの効き目が悪くなっているという意味で、妊娠中は血糖値が高くなりやすい状態なのです。そこにストレスがかかってしまえば、妊娠糖尿病を招く可能性は十分あります。

妊娠糖尿病は胎児にも影響

妊娠糖尿病は母体と胎児それぞれに悪影響を及ぼします。母体の血糖値が高くなるだけでなく、胎児の血糖値も上昇します。母体は、妊娠糖尿病に伴い妊娠高血圧症候群、羊水量の異常、網膜症、難産、腎症など起こしやすいと言われています。出産後も妊娠糖尿病を発症しなかった妊婦に比べて、糖尿病のリスクが上昇することが分かっています。また、胎児が高血糖になると、流産や形の異常の原因になるだけでなく、巨大児や胎児死亡、低血糖、黄疸、心臓の肥大、多血症、電解質異常(血液中のイオンなどの以上)などを引き起こす可能性があります。母胎と胎児への影響は、https://www.askdoctors.jp/articles/200175で詳しく解説しています。

気づきにくい妊娠糖尿病

妊娠糖尿病の症状は、一般的な糖尿病と同様です。しかし、妊娠中は体調がすぐれないと感じることも多いので糖尿病の症状を見逃してしまうことがよくあります。また、一般の糖尿病と同様で、初期症状はほとんど気付かないので、妊婦健診で指摘されて初めて気付くことも多いです。自覚しづらい病気と言えるでしょう。

妊娠糖尿病の症状は?

妊娠糖尿病の代表的な症状としては、喉の渇き、尿の回数の増加や疲労感、体重の急激な変化などです。妊娠糖尿病においても血糖の厳重な管理が最も大切です。食前血糖値が「100mg/dl未満」、食後2時間の血糖値が「120mg/dl未満」、そしてHbA1cが正常(6.2%未満)であることを目標に管理します。妊娠中は運動療法があまりできないことが多いので、まず食事療法を行います。

食事療法では、母子ともに健全に妊娠を継続でき、食後の高血糖を起こさないように配慮した指導が行われます。食事の回数を4回から6回に分割にしても、血糖管理が十分でない場合は、胎児に悪影響を与えないインスリン注射を用いて管理します。血糖値を下げる飲み薬は胎児への影響を考慮して使用しません(治療については、https://www.askdoctors.jp/articles/200174で詳しく解説しています)。

妊娠の経過とともにインスリンの使用量が増えますが、産後に減量あるいは中止できることがほとんどです。その理由は、出産時には胎盤も排出されるため、インスリンの力を弱めるホルモンも減り、血糖値が改善することが多いからです。しかし、妊娠糖尿病になった人は、ならなかった人に比べて約7倍の確率で糖尿病を発症する危険性があるので、産後も医師の指示に従い定期的に検査を行ったり、正しい生活習慣を送ることを心がけましょう。

基準はある?

妊娠糖尿病の検査は、体内の血糖値の変化を調べる「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」と呼ばれるテストを行い、検査前が92mg/dl以上、1時間値180mg/dl以上、2時間値153mg/dl以上のいずれかを満たせば診断することができます。妊娠糖尿病の治療目標は空腹時血糖が100mg/dl未満、食後2時間の血糖値120mg/dl未満、そしてHbA1cが正常であることです。HbA1cは採血で分かる検査で、血糖値の1カ月から2カ月の推移を反映する指標なので、糖尿病の治療評価のためによく使用されます。妊娠糖尿病の基準については、https://www.askdoctors.jp/articles/200173で詳しく解説しています。

予防には間食避け、1日3回の食事を

妊娠糖尿病の予防には、適切な体重管理とバランスの良い食事が大切です。主食、主菜、副菜のバランスを考え、1日のカロリーを3回に分けて摂取することが理想です。脂身やカロリーの高い食事は血糖値を上昇させるため、ささみや豚、牛の赤身肉のような脂身の少ない肉をとるようにしましょう。魚や大豆製品、卵などから良質なタンパク質を摂取するように心がけるのも良いです。きのこ類や野菜など食物繊維の多いものは積極的に摂り、塩分や油分を控え、間食もなるべく摂らない方が良いと考えられています。



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