出産後の妊娠糖尿病 治療不要?産後の検査と要治療の基準値も解説
- 作成:2016/08/30
妊娠糖尿病は出産後に治ることが、少なからずあります。ただ、妊娠糖尿病にかかった方は、糖尿病になりやすい性質があるのは事実で、産後の検査が推奨されています。基準値や、治療が必要なケースも含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
妊娠糖尿病は出産すれば治療がいらない?
妊娠中は胎盤からインスリンに対抗するホルモンが分泌されるため、血糖値が上昇しやすいと言われています。そのため出産により胎児とともに胎盤が出されると血糖値は下がり、インスリン療法や食事療法がいらなくなることが多いです。
しかし、妊娠糖尿病と診断された人はそうでない人に比べて、インスリン分泌量が少なかったり、インスリン抵抗性(インスリンが正常に働かない傾向)が高いと言われており、将来糖尿病になりやすいと考えられています。日本産婦人科学会は、出産後6週から12週間後に病院でブドウ糖負荷試験を行い糖尿病が治っているかどうか確認することを推奨しています。
妊娠糖尿病の産後 検査が必要?どんな検査?
妊娠糖尿病は、妊娠によってインスリン抵抗性があがったことで一時的に発症する糖尿病ですが、背景には、「糖尿病」と診断するレベルまでではないながらも、耐糖能異常(糖を処理する能力の異常)が隠れていたことを意味しています。
実際、妊娠糖尿病の患者さんは、産後1年以内に2.6%から38%が糖尿病を発症し、さらに追いかけて調べると17%から63%に発症するといわれており、糖尿病になるリスクは耐糖能異常のない妊婦に比べて、7倍も高いと報告されています。
このため、産後も定期的に耐糖能異常を調べる必要があります。検査には「75gOGTT(75g蛍光ブドウ糖負荷試験)」が行われます。これはインスリンの機能を調べる試験で、ブドウ糖を含んだ飲料を飲んで、上昇した血糖値がきちんと下がるかを確かめる検査です。「飲む前」「飲んでから1時間後」「2時間後」と採血し、血糖値の変化を追っていきます。
妊娠糖尿病の産後の基準値 いくつ?妊娠中と同じ?
妊娠糖尿病は早産・流産、奇形、巨大児などさまざまな合併症のリスクとなるため、妊娠中の血糖値の基準値は厳しくなっています。検査は2段階で行われ、妊娠初期に随時血糖を測定し高かった場合(数値は病院毎に異なります)や、妊娠中期に随時血糖が「100mg/ml以上」、または、50g糖負荷検査で1時間後の血糖「140mg/mlを超える」結果の場合、精密検査を行います。75gOGTTで空腹時「92mg/ml以上」、1時間後の値「180mg/ml以上」、2時間の値「153g/ml以上」のいずれかであれば、妊娠糖尿病と診断されます。
しかし、産後の基準はゆるくなり、一般の人と同じ基準値が設定されます。産後の基準値は、「空腹時110mg/dl未満、」75gOGTT検査2時間値(2時間後の値)で「140mg/dl」未満であり、両方の基準を満たすと正常と判断されます。
妊娠糖尿病で産後の治療が必要になるケースとは?
検査の結果、正常型の場合は1年に1回、境界型(正常型でも糖尿病型でもない)の場合は3カ月から6カ月に1回の経過観察を行います。
一方、糖尿病型(空腹時血糖値126mg/dl以上、75gOGTT検査2時間値200mg/dl以上のいずれかを満たす)の場合であった場合は、糖尿病の治療が必要になります。治療法は、妊娠糖尿病の時と同様、食事療法とインスリン療法を行います。
糖尿病では、網膜や腎臓に合併症を引き起こしやすいことため、糖尿病と診断されてからは、これらの診療科でも検診が必要になります。
出産後の妊娠糖尿病についてご紹介しました。出産前に「妊娠糖尿病」と診断されて不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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