病院食とは?医学的な効果あり?「味が悪い」は改善しつつある?差し入れの考え方も解説

  • 作成:2015/11/24

食事と病気には、医学的にも重要な結びつきがあり、そこから「病院食」というものが生まれました。食事を改善すれば治療や予防に役立つことが期待できます。また、現在の病院食は、外部からの提供していたり、患者自身が選択したりすることもできる場合があります。入院中の人への差し入れの考え方を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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看護師

食事も医学的な効果がある

病気の治療において大切な要素の1つに食事があります。今までの医学的な研究で、十分な栄養をとることが病気の改善、入院期間の短縮、早期の離床(病気で寝ている状態から起き上がって生活できるようになること)を促すことが明らかにされています。各病院には「管理栄養士」といって、栄養や食事のとり方について正しい知識や技術をもった専門家がいることが多く、医師や看護師などの医療スタッフと協力して患者さんの栄養指導に関わります。中には、NST (Nutrition Support Team, 栄養サポートチーム)を編成し、1週間に1回や数週間に1回などと決めて定期的に医療スタッフと管理栄養士で意見交換を行うこともあります。食事は毎日摂るものなので、そのバランスや摂取の仕方で、体に悪影響を与えることもあります。実際に生活習慣病のほとんどは、毎日の食習慣によって引き起こされます。例えば塩分が高い食事は高血圧、カロリーや脂肪分が多い食事は肥満や脂質異常症(高脂血症)、糖尿病を誘発する可能性があります。病院にこれらの病気で通院すると必ず栄養(食事)指導が行われます。自分で今までの食習慣を変えることは難しいので、管理栄養士のアドバイスを聞きながら正しい知識に基づいて、毎日の食事を少しずつ良いものへ変えていくことが多いです。

「病院食を食べる」も治療

病院食を食べることも治療の1つになります。病院食の目的は、個々の患者さんの病状に適した、安全でバランスの良い食事を提供することにって、疾患の治癒がより早くなり、健康回復に貢献できることを期待しています。また入院生活を少しでも快適に過ごせるように、毎日の食事を楽しんでもらえるようにと考えています。

例えば高血圧の患者さんに対しては、塩分を通常の10gから6g以下に減量した食事、糖尿病の患者さんにはカロリーや油分を控えた食事が提供されます。退院後も食べたいものを好きなだけ摂るのではなく、病院食を参考にすると健康な状態を維持できる可能性が高いです。実際に、食塩の摂取量を減らして血圧が2mmHg下がるだけで、日本国内の循環器病(血圧や心臓に関わる病気)による死亡者数を2万人減少させることができると言われています。

「病院食はまずい」は改善傾向

以前の病院食は、「まずい」「冷たい」「提供される時間が早すぎる」という3悪と言われ、「選べない」を含めて4悪説といわれることもありました。しかし、高度成長を経て、一般の食生活も豊かになり、改善を求められるようになりました。1986年に、厚生労働省から「病院における給食業務の一部委託について」という通知が出され、今までは原則院内調理だった病院食を外部委託できるようになりました。これにより、ベッド数の少なく、調理専門のスタッフが少ない病院で、調理にも時間をかけられずに十分な食事を提供することが難しかった状況が改善し、食事時間や食事の内容などが、患者さんに合わせて柔軟に対応できるようになりました。

現在は病院食は治療の一環であり、より美味しく、温かい食事を提供することが大切だと考えられています。病院によってそれぞれ工夫をしており、週に何回か食事内容を選択することもできることもあります。例えば東大病院では、有名レストランのシェフが考案した料理を取り入れるなどの試みがされています。また、食事の形態も刻み食やおかゆなど、それぞれの病状、年齢に合わせて最も良いものを選べるように工夫されています。

「差し入れ」は病院に確認を

基本的に病院食は治療の1つであることが多く、栄養のバランスも患者さん個々人に合わせて計算して出されているので差し入れを病院の許可なく食べることはよくないとされています。また食中毒や他の患者さんへの影響も考慮し、差し入れは基本的に禁止している病院も多いです。他には、出前の取り寄せ、患者同士での食べ物の交換、入院中の飲酒なども禁止されています。ただし、妊娠・出産関連で入院している場合や整形外科的な理由での入院の場合には食事に制限がないこともあります。どのような状況でも、事前に差し入れをして良いかどうか病院に聞くのが無難です。

病院食の意味についてご紹介しました。知り合いなどが食べている病院食に疑問を感じている方や、この病気に関する疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?

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