食道がんの原因、よく起きる年齢と部位 酒やタバコが危険?

  • 作成:2016/04/13

食道癌(がん)には2種類あり、よく知られた喫煙や飲酒のリスクがあるほか、熱い食べ物や食道の変形も原因となります。よく起きる場所や年齢も含めて、食道がんの原因について、専門医師の監修記事でわかりやすく解説します。

アスクドクターズ監修医師 アスクドクターズ監修医師

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食道がん、飲酒、喫煙がリスク

食道がんは「扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)」と「腺がん(せんがん)」の2つに大別され、それぞれ原因が異なります。「扁平上皮がん」は食道の内側の粘膜層にできるがんで、日本人の食道がんの90%を占めます。

扁平上皮がんの主な原因は、喫煙、飲酒、刺激の強い食べ物などの外的要因です。食道は食べ物や飲み物の通り道で、絶えず刺激にさらされています。そのため細胞分裂が活発で、細胞の異変もおこりやすくなります。健康で若いうちは、ある程度の異変であれば、自然に修復できますが、加齢による代謝の低下と長年のダメージの蓄積のために、修復が追い付かなくなると、がんに発展してしまいます。

特に喫煙と飲酒は強いリスク要因になることが分かっています。1日にタバコを20本以上、アルコールを1.5合以上摂取する人は、どちらも摂取しない人と比べて食道がんになる確率が33倍にもなるという報告もあります。また飲酒をするとすぐに顔が赤くなるタイプをフラッシャーといいますが、このタイプの人はアルコールが分解されてできるアセトアルデヒドの分解能力が低い(アセトアルデヒド脱水素酵素<ALDH>という活性が弱い)場合が多く、赤くならない人(ノンフラッシャー)に比べて発癌リスクが高いとされています。

また、食道内壁を刺激するという意味で、熱い飲み物や食べ物も食道がんの原因となります。熱いマテチャを飲む習慣のある南米では、食道がんの発生率が高くなっています。これはマテ茶に発がん性があるということではなく、熱い飲み物が常に食道を通過し、食道に負担がかかり続けるためだと考えられています。

この他、肥満や野菜不足も扁平上皮がん原因にあげられます。

食道の変形も原因に

もう1つの食道がんである「腺がん」は、食道の粘膜層にある「食道腺」という粘膜分泌腺の細胞にできるがんです。欧米で発生率が高く、特に白人男性がなりやすい病気です。

腺がんの原因で重要視されているのは、逆流性食道炎によっておこる「バレット食道」と呼ばれるタイプの食道です。バレット食道とは、逆流した胃酸が食道粘膜の炎症を引き起こし、慢性化することによって、内壁の細胞が変性してしまった食道のことです。

逆流性食道炎の原因となりやすいのは肥満です。食道と胃のつなぎ目にある「下部食道括約筋」と呼ばれる筋肉は、胃酸の逆流を防ぐ役割を担いますが、肥満によってゆるんでしまうことがあります。また、脂肪の多い食事も、下部食道括約筋をゆるめるはたらきがあります。食べ過ぎで胃がもたれることによっても、胃液の逆流がおこりやすくなります。

日本では腺がんになる人の割合は食道がんの中でも5%にも満たない状況ですが、欧米では50%を超えており、年々増加傾向にあります。日本人も食生活が欧米化しているので、今後発生率が高まることが懸念されています。

食道がんがよく起きるのはどこ?

食道がんの好発部位は、「扁平上皮がん」と「腺がん」で異なります。

食道は上から「頚部」・「胸部」・「腹部」の3つの領域に分けられます。「扁平上皮がん」の好発部位としては、胸部食道が最も多く、食道がん全体の88%を占めます。胸部食道は、長さ約25cmの食道のうち、上から3cm以下、下から5cm以上の広い部分にあたります。胸部食道の中の発生部位をさらに細かくみていくと、約50%が胸の真ん中(胸部中部食道)、約25%が腹部より少し上(胸部下部食道)に発生します。つまり、食道がんになりやすいのは食道の中心部あたりが多いのです。

一方「腺がん」の場合、ほとんどが食道の下部にあたる食道腹部で発生します。食道腹部は胃とつながる食道で、胃液の逆流による炎症を起こしやすい部位です。

食道がんになりやすい年齢

食道がんは、食道を刺激する習慣を長期間続けるためにおこります。そのため、食道がんになりやすいのは60歳代から70歳代の年齢の高い層です。

日本で食道がんにかかっている人の平均年齢は約64歳です。胃がんや大腸がんに比べると10歳も高齢です。食道がんの罹患率・死亡率はともに40歳代後半頃から急激に増加し始め、加齢に伴って増え続けます。

特に男性の罹患率・死亡率が高く、女性の5倍以上となっています。これは女性よりも男性の方が喫煙や飲酒の習慣があることが多く、野菜や果物の摂取量が少ないためだと考えられています。日本では成人男性の喫煙率が3割程度まで下がってきていますが、食道がんの罹患率や死亡率に影響してくるのはまだまだ先と考えられます。

食道がんの原因やなりやすい年齢などについご紹介しました。もしかして食道がんかもしれないと不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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