子宮内膜症の手術と自然治癒可能性 妊娠希望の場合は?
- 作成:2016/02/18
子宮内膜症は、閉経とともに自然治癒する可能性があると言えますが、癌(がん)に変化してしまうリスクがありますので、治療が望ましいといえます。手術になるケースや、3種類の手術方法、妊娠を希望する場合の選択肢について、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
子宮内膜症は、自然治癒する可能性がある?
子宮内膜症は、20代から40代の女性を中心に急激に増加しています。昭和40年代と比較すると、その患者数は約3倍近くに増えています。原因として考えられているのは、女性のライフスタイルの変化です。子宮内膜症は初経(いわゆる初潮)から閉経までの期間が長ければ長いほど、発症するリスクが増加します。つまり、初経が早ければ早いほど、閉経が遅ければ遅いほど子宮内膜症のリスクは上がります。さらに、妊娠も子宮内膜症の発症リスクに関係しています。妊娠回数が多ければ多いほど、月経がない期間が増えますので、子宮内膜症が発症しにくくなります。逆に言えば、妊娠回数が少なければ子宮内膜症のリスクは上がると言えます。
子宮内膜症は「エストロゲン」という女性ホルモンの分泌が停止する閉経期以後になると、発症しにくくなりますし、既に発症している場合には病気部分の大きさは小さくなります。したがって、子宮内膜症を発症していても、閉経を迎えると、症状が現れないまま子宮内膜症は自然治癒すると考えることもできます。その意味では、「自然治癒する可能性がある」と言えます。
しかし、子宮内膜症で「チョコレート嚢胞(のうほう)」を形成している場合には、卵巣がんが発生する可能性があります。特に40歳以上で、長さ10cm以上あるいは急に大きくなったチョコレート嚢胞の場合には、超音波検査やMRI検査を実施して、リスクを十分に評価して、手術も考慮する必要があります。
子宮内膜症で手術となる場合
子宮内膜症の治療は薬を使う場合と、手術を行う場合があります。手術が行われるのは、以下の場合です。
(1)子宮内膜症が進行しており、薬物治療では効果が期待できない場合
(2)薬物治療を行っても再発を繰り返し、その副作用が懸念される場合
(3)妊娠を希望し、手術の適応がある(手術で対応できる)場合
(4)悪性腫瘍(がん)が疑われる、あるいはがん化を避けたい場合
他にも手術による治療を選択する場合はありますが、その方法としては大まかに以下の方法となります。医師は可能な治療方法を提示し、患者さんの希望を聞きながら、治療法を選択することとなります。
子宮内膜症の3つの手術
子宮内膜症で行われる手術方法は主に3つあります。お腹を切開する「開腹手術」、お腹に小さな穴をあけて行う「腹腔鏡下手術」、腟から操作する「腟式アルコール固定」の3つです。開腹手術は昔から行われている方法です。開腹手術では子宮を全て取る「子宮全摘」、卵巣に子宮内膜症がある場合には後に妊娠できるように卵巣の一部を残す「卵巣囊腫摘出あるいは卵巣囊腫核出」、妊娠希望がない場合には「卵巣摘出」といった操作を行います。腹腔鏡下手術は、小さな穴をあけて実施するため、体の傷は開腹手術と比べて小さいので、比較的早く動けるようになることが期待されます。しかし、一般に腹腔鏡下手術は開腹手術よりも多くの時間を要します。
子宮内膜症に対して行われる手術は開腹手術と腹腔鏡下手術ですが、「腟式アルコール固定」を行う場合もあります。腟式アルコール固定は、卵巣にチョコレート嚢胞があるときに行われる治療方法です。腟式アルコール固定は腟から針を刺し、内容物を吸引した後、アルコールを注入する治療です。腟式アルコール固定は日帰りか1泊の入院で済み、お腹に傷が残らないといった利点もあります。他にも様々な治療方法がありますが、治療方法を上手く組み合わせ、子宮内膜症を治していきます。
子宮内膜症の手術や自然治癒の可能性についてご紹介しました。もしかして子宮内膜症かもしれないと不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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