余命とは?「余命を超えて長生き」の理由や宣告方法も解説
- 作成:2016/02/10
「余命」とは、同じ病気の人がどれくらい生きたかのデータに基づいて、目安として出される数値です。「余命3年と言われてから、5年生きている人」がいるのは、実は、そこまで不思議な状況ではありません。医師の言う「余命」の根拠について、宣告の問題も含めて、医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は3分です
医師の言う「余命」の根拠とは?
医療現場、とくに末期のがん医療で、手の施しようがなくなった時などに、医師から「余命」を宣告されることがあります。「余命」の判定は医師個人の経験則などによるのではなく、統計学的なデータを根拠にして行われています。 「余命」を導く際には、一般的に、治療後の生存率曲線(「カプランマイヤー曲線」と言います)が使われます。生存率が50%になる、つまり半分の患者さんが亡くなる期間(正式には「生存期間中央値」)に基づいて、「余命」を判断しています。
がんの場合はできる場所だけでなく、さらに進行度のステージ(病期)ごとに、生存率曲線が出されています。曲線から読み取れるデータは「生存期間中央値」の他、「5年生存率」(がんの治療開始から5年後に生存している人の割合)「10年生存率」(同10年の場合)があり、よく使われています。
例えば乳がんではリンパ節転移の状況などから、ステージがIIかIIIに分かれます。10年生存率、治療開始から10年後に生存している人の割合は、II期でおよそ85%ですが、III期になると50%強に下がります。ステージごとに、生存率曲線が異なっているために、生存期間中央値に基づく「余命」も違ってくることになり、III期では、10年と少しが、医師らから告げられる「余命」の目安ということになります。
「余命」を超えて生きている人がいるのはなぜ?
余命は、前項の「生存期間中央値」を目安に出されています。例えば、ある病気を持つ患者さん(の集団)の治療後における「余命3年」は、3年経過した後に、約半分の患者さんは生存していますが、約半分が死亡しているという状態です。3年を超えて生きている方がいるのは当然ですし、3年経たずに亡くなっている方もいるわけです。
一般に、集団の生存率(数)曲線は右下がり(年数がたつほど生存率が下がる)ですが、指数関数的(下に凸の曲線)に減少していきます。したがって、特定の個人を見てみると、生存期間の範囲は、かなり広くなります。
「3年の例」ならば、最も短い人は半年で、長い人は15年を超えているということが十分あり得ます。過去に同じ病気にかかった人でデータに基づいて、統計的な目安として告げられる「余命」ですから、それを超えて生きている方がいらっしゃることは珍しいことではありません。
また、あまりにも長い生存期間中央値の場合は、余命の目安としては不正確になりやすく、言及する意義は少なくなります。特別な病気の見つかっていない30歳の人に対して、「(統計的に)余命50年」と告げることは、科学的に大した意味がないことは、みなさんにもご理解いただけるかと思います。
医師の余命宣告は必ずある?希望すれば聞くことができる?
最近の医療現場では、がんの告知に関しては進行期癌のような予後不良(治療による回復の可能性が低いこと)の場合にも、かなりの割合でご本人へ行われているようです。しかし、実際に説明される内容(病名、治療方針、予後など)は、医療機関の種類(がん専門医療センター 一般病院など)や医師の考え方の違いなどにより、かなりばらつきがあると思われます。例えば、がん専門の医療機関と、幅広い病気を取り扱う一般病院では対応が違うようです。
説明内容の1つに、「余命を含む予後の告知」がありますが、「病名の告知」ほど一般的ではなく、余命宣告などは個々の事例に応じて行われていることが多いようです。患者さんの性格や考え方、ご家族の意向などが考慮されます。したがって、医師は必ず患者さんの余命宣告をするというわけではありません。
最近は、各種メディアのがんに関する情報の公開により、患者さんの自身のがんに対する知識量が増加し、また患者さんの知る権利を重視する傾向もあります。余命を含む予後ついては、宣告された際、患者さんが冷静に受け止められることが前提になりますが、希望すれば聞くことができることが多いでしょう。気になる方は、担当する医師の方などに訪ねてみてもよいでしょう。
余命宣告の対象 「本人だけ」「家族だけ」の場合がある?
余命宣告など予後の告知の多くは、がんの末期など積極的な治療が難しくなった時期に行われているようです。患者さんの知る権利を重視する立場からは、がんの告知は本人にすることが原則となっています。
医療機関や医師によっては余命宣告も「原則本人にする」として、患者さんの意思を尊重しない告知をする、心ない対応をする医療機関もあるようですが、後から「聞いていなかった」と言われないための、医療者側のリスクヘッジという側面があるのかもしれません。
ただ、「余命宣告は受けない」ということも自己決定権の1つであるはずです。一般的には、ご本人が聞きたくない場合や宣告を受けるような状況にない時には、家族だけに告げられることも多いようです。
よく聞く「余命」についてご紹介しました。病気の生存期間に不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?
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