バルトリン腺炎の原因、症状、治療、予防 妊娠中は胎児に影響する?

  • 作成:2016/08/12

バルトリン腺炎とは、腟の入口付近にある「バルトリン腺」に炎症が起きている状態で、さまざまな菌が原因で起こります。どのような症状が出るのかや、出産への影響などを含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。

近藤恒正 監修
落合病院 副院長
近藤恒正 先生

この記事の目安時間は3分です

バルトリン腺炎の主な症状

「バルトリン腺」というのは、腟の入り口の両側にある非常に小さな丸い腺(物質を分泌する器官)です。性交時に粘液を分泌しますが、皮膚の中にあるため通常は手で触れてもわかりません。腟の入り口の左右には、バルトリン腺から粘液を分泌するために「開口部」というごく小さい穴がありますが、この穴から細菌が侵入すると炎症を起こすことがあります。これがバルトリン腺炎です。

バルトリン腺炎は、初期の段階では自覚症状はあまりありません。しかし、炎症により開口部が詰まってしまい体外に粘液を排出できない状態が続くと、バルトリン腺と開口部をつなぐ管に粘液が溜まり、やがて管が袋状に腫れることがあります。これを「バルトリン腺嚢胞(のうほう)」といいます。バルトリン腺嚢胞は、多くの場合、片側にだけ現れ、ゴルフボールよりも大きくなることもあります。また、内部に膿がたまった状態になると、激しい痛みや発熱などの症状がみられることもあります。

バルトリン腺炎が進行して、腫れがひどくなると日常生活に支障があることも少なくありません。また、まれにバルトリン腺炎ではなく、悪性腫瘍(がん)であることがあります。腫れ、痛みの自覚症状に気づいたら、一度婦人科を受診してみましょう。40歳以上の人は、自覚症状がなくても、腟周辺の腫れがある場合は、医師に相談するようにすると良いでしょう。

バルトリン腺炎の主な原因と予防法

バルトリン腺炎を発症する主な原因として、ブドウ球菌、レンサ菌、大腸菌などの細菌があげられますが、性感染症(性病)の原因となる淋菌、クラミジア・トラコマチスなどでバルトリン腺炎を発症することもあります。

バルトリン腺は尿道口や腟から近い場所にあるため、尿道内に細菌が繁殖したり性交により性感染症に感染したりすると、バルトリン腺も炎症をおこす可能性が高くなることが考えられます。

バルトリン腺炎を予防するためには、バルトリン腺周辺を清潔に保つように心がけることが大切です。また、性感染症にかかるとバルトリン腺炎を発症するリスクが高くなります。性交(セックス)時には可能な限りコンドームを使用し、性感染症の感染を防ぐように心がけましょう。

妊娠中に発症すると胎児に影響あるの?

バルトリン腺炎自体は、胎児に影響をあたえることはありません。しかし、バルトリン腺炎の原因となる細菌が腟に付着すると炎症を起こすため、まれに流産、早産につながることがあります。また、バルトリン腺炎の原因が、淋菌、クラミジア・トラコマチスなどの細菌である場合には、腟にも性感染症を発症している可能性が考えられます。妊婦が淋菌やクラミジアなどの性感染症を感染していると、早産の原因となることがありますし、妊娠中または出産時に母子感染することがあります。

妊娠中や出産時に淋菌やクラミジアなどに感染した赤ちゃんが全員発症するわけではありませんが、感染によって淋菌感染症、クラミジア結膜炎、クラミジア肺炎などの病気を発症することがあります。

バルトリン腺炎は、適切な治療を行えば2週間から4週間以内で回復する病気です。そのため、バルトリン腺炎とわかった時点で治療を開始すれば、胎児への影響が現れる可能性は低いとされています。現在妊娠中の人は、医師に相談の上、胎児への影響がない薬を処方してもらいましょう。

バルトリン腺炎の治療と再発防止対策

痛みがなく、腫れがごく小さい場合は、とくに治療の必要がないため、定期的に医師の診察を受ける経過観察となります。痛みや腫れなどの症状が目立つときは、バルトリン腺炎の原因となる細菌の増加を抑える抗菌薬を服用し、患者さんの症状によっては、抗菌薬を注射したり、痛みを抑えるための解熱鎮痛剤を合わせて使用したりすることもあります。

痛みや腫れがひどいときは、外科的治療でたまった膿を出すことがあります。外科的治療は、注射針を使って内容を抜き出す穿刺吸引(せんしきゅういん)、バルトリン嚢胞を切り開く切開術、造袋術(開窓術)があり、患者さんの症状や希望を考えた上で、医師が治療法を決めます。また、再発を繰り返すときはバルトリン腺を摘出することもあります。

バルトリン腺炎は、きちんと治療を行わないと再発しやすい病気です。自覚症状がなくなっても治療を中断せず、医師の指示に従って原因菌がなくなるまで治療を行いましょう。

バルトリン腺炎の原因や症状などについてご紹介しました。腟に感じる違和感に不安を覚えている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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