妊娠検査薬のフライング等の誤判定理由と曖昧な結果の意味 「色が薄い」「蒸発線」「横線」「生理中に陽性」等を解説
- 作成:2016/03/25
妊娠検査薬は、妊娠すると出るあるホルモンを使って、妊娠しているかどうかを判定します。判定はかなり正確になっていますが、「陽性なのに妊娠していなかった」「陰性なのに妊娠していた」という間違いにつながる理由が、よく知られた「フライング」もふくめて多くあります。どのような可能性があるのかや、「色が薄い、薄くなった」際の考え方も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
フライングで「陽性」になる場合
「生理中に陽性反応」「陽性後に出血」の場合に考えられる可能性
フライングで「陰性」になる可能性 尿が少ないとダメ?
「陰性なのに生理が来ない」で考えられる可能性
双子の場合、「陰性」になる?
「つわりがきたのに陰性」はありえる?
「色が薄い」判定結果はどう考える?
「蒸発線」とは?「陽性」なの?
「『横線』が出た」の意味
妊娠検査薬の「フライング」の定義
「99%以上」と言いますが、妊娠検査薬も判定を誤ることがあります。「フライング検査」とは、通常仕様よりも早い段階で検査薬を使用することを言います。考え方は以下の通りです。
一般的な妊娠検査薬:「生理予定日の1週間後以降」「推定排卵日から3週間後以降」など、検査薬が推奨するタイミング以前の検査 早期妊娠検査薬:「生理予定日以降」「推定排卵日から2週間後以降」など、検査薬が推奨するタイミング以前の検査
フライングで「陽性」になる場合
フライング検査の場合は、通常の検査薬ではhCGの量が十分でない場合あり、陰性になることがほとんどです。しかし、まれに誤判定で陽性になることもあります。「誤判定で陽性」となる要因として考えられるのは、以下の通りです。
・不妊治療のためにhCG製剤(排卵を促すなどの機能のある薬)の投与を受けている場合
・絨毛がんなど、がんの場合
・流産や中絶後間もない場合
・閉経の後
・糖尿病や蛋白尿、血尿など不純物が多い場合
以下にそれぞれの、概要を紹介します。
【不妊治療が原因の場合】不妊治療でhCGを打っている場合は、尿中のhCG濃度が1週間程度高く維持されるため、妊娠反応が陽性で出る場合があります。この場合、生理が来ても妊娠反応が陽性になります。
【がんが原因の場合】「hCG」は腫瘍でも分泌されることがあり、「hCG産生腫瘍」とよばれます。卵巣がんや子宮頸がん、絨毛がん、胃がん、肺がんなどでhCG産生腫瘍ができることがあります。この場合は、妊娠していなくても妊娠検査薬は陽性になります。卵巣がんや肺がんでは性器からの不正出血はまずありませんが、絨毛がんや子宮頸がんは、がんとなっている部分から出血することで、不正出血をきたします。もちろん、がんがあっても生理はくるため、生理中に検査で陽性になることもありえます。
【流産と中絶が原因の場合】受精はしたものの着床が続かなかった状態である「化学流産」も、妊娠検査薬が陽性でありながら出血します。厳密にはこの出血は、普段の生理とかわらない様子で起こります。この化学流産は、本来妊娠検査薬を使う時期よりも、早く使用した場合に「陽性」となる可能性があります。一旦、受精が成立した時点で、検査薬で「陽性」となったものの、直後に妊娠の状態が継続できず、予定通り生理が来るようになったと考えられています。
いったん妊娠したものの、すぐに流産した場合にも不正出血がみられ、かつ妊娠反応が陽性になります。生理が不順で、生理の間隔が長い人ではこのようなこともあり得ます。もちろん中絶の場合も、一旦妊娠が成立しているため、処置後の出血があれば不正出血とともに妊娠反応陽性になることがあります。中絶後の場合は通常2週間程度、妊娠検査薬の陽性が続きます。
【閉経が関係している場合】以前の妊娠検査薬では、閉経期や閉経後1年程度で急激なホルモンの減少や卵巣機能の低下を補うためにhCGに似た成分を持つ「LH(黄体形成ホルモン)」や「FSH(卵胞刺激ホルモン)」といったホルモンが分泌され、いわゆる「交差反応」によって妊娠反応が陽性になることがありました。最近の検査薬ではhCGだけに反応するため、このようなことは少ないようです。閉経に近い時期は生理が不順なため、この時期の出血が生理なのか不正出血なのかを判断することは難しくなります。
【不純物のある場合】尿の中に、タンパクや血液、糖が混じっていると、検査薬が反応して、間違って陽性になるることもあります。この場合は実際にはhCGは分泌されていません。検査の誤判定です。尿に生理の血液が混じっている場合にも偽陽性となる可能性もあります。
「生理中に陽性反応」「陽性後に出血」の場合に考えられる可能性
生理中に妊娠検査薬で陽性が出た場合は、以下の可能性があります。
・生理と思っていたものが不正出血である場合
・子宮外妊娠の場合
子宮外妊娠の場合にも、妊娠検査薬は陽性と出ます。子宮外妊娠による不正出血は個人差が大きく、早ければ生理予定日に出血するため、生理と勘違いすることもあります。出血が続く期間も、1日だけの場合もありますが、10日以上続くこともあります。出血量も少量から大量と幅があるため、出血の正常だけで生理なのか、妊娠していたけれども流産したのか、子宮外妊娠なのかを区別することは困難です。
子宮外妊娠の診断は、病院で超音波などを用いて調べた結果、子宮内に赤ちゃんを包む胎嚢が確認できない事や、腹部での内出血を確認することで行われますが、週数が早い場合は少し経過をみないと診断できないこともあります。
他にも妊娠検査薬はホルモンの値によっては生理が来るタイミング、つまり排卵から2週間で陽性になることもあります。
フライングで「陰性」になる可能性 尿が少ないとダメ?
妊娠反応が陰性であるのは、「hCGが分泌されていない」あるいは「分泌されていても妊娠検査薬に反応しない濃度である」場合です。一般にhCGの濃度が上がるのは妊娠第5週以降で、妊娠超初期であれば、妊娠検査薬の判定で「陰性」となる場合もあります。
1つ目は尿の成分が十分に検査薬に浸透しない場合です。「尿が十分にかからなかった」、「尿内の水分量が多くてhCG濃度が薄まってしまっている」などの可能性が考えられます。それぞれの検査薬が使用を指定している時期であれば、hCG濃度が十分に高まっているので多少尿量が少なかったり、水分が多かったりしても、しっかり「陽性」が出ますが、フライングの場合はhCG濃度が高まる前なので陰性の結果が出ることがあります。病気のない人でも、水分を摂りすぎればこのような状態になることもあります。
2つ目は流産が起きる前や稽留流産の場合です。流産している場合や流産になりかけの場合は、hCG濃度が上昇しないので陰性がでることがあります。hCG濃度が上昇していない場合、妊娠検査薬が指定する適正な時期に検査しても陰性が出ることもあります。
「陰性なのに生理が来ない」で考えられる可能性
「陰性」の結果があるにも関わらず、生理が来ない場合もあります。可能性として考えられるのは、妊娠をしているのに陰性である場合には、妊娠検査薬を使うタイミングが早かった場合です。基礎体温を測定していたり、普段は決まった間隔で生理が来ていても、たまたま検査薬を使った周期だけ排卵が遅れたのかもしれません。その場合は週数が早すぎて検査薬では陰性であっても、のちに妊娠が明らかになることもあります。
双子の場合、「陰性」になる?
双子、もしくはそれ以上の妊娠である「多胎妊娠」の場合にも妊娠しているにもかかわらず、検査で陰性が出ることがあります。多胎妊娠の場合は、hCGは単胎妊娠と比べて多く出ます。しかし、多すぎると検査薬が反応できる上限を超えてしまい、検査では陰性になってしまうことがあるのです。
「つわりがきたのに陰性」はありえる?
つわりの原因はいまだにはっきりしていませんが、hCGの急激な増加、受精卵に対するアレルギー反応、妊娠による自律神経の乱れ、妊娠を維持させるための防御反応、体が酸性に変化するためなどが考えられています。
妊娠するとつわりがでるのでは、と考える方もおられるかもしれませんが、一般的に、つわりは妊娠6週くらいから始まります。つわりの代表的な症状は吐き気ですが、そのほかに眠気や倦怠感、頭重感、匂いに敏感になるなどがあります。しかし、つわりの症状は人それぞれで、たまたま胃腸の風邪で、吐き気があって、生理が遅れていれば、つわりと勘違いしてしまいますが、実際は妊娠していないので検査では陰性ということもあります。
その他に、「つわりがあるのに陰性」となるケースとしては、双子以上の多胎妊娠や胞状奇胎でhCGが過剰に分泌されて、検査薬で陰性になった場合です。この場合には、実際に妊娠しているのですからつわりが起こります。同様に妊娠週数が10週前後でhCGはピークを迎えるのですが、ピークの時期に検査薬を使用すると、測れる濃度を超えてしまい検査では陰性ということがありえます。
一般的な妊娠検査薬は、「生理予定日の約1週間後」を目安に利用しますので、妊娠検査薬が反応する以前に、つわりが来る可能性は低いと言えます。
なお「想像妊娠」というものもあります。「偽妊娠」とも言われ、妊娠していないのにつわりが現れる心身障害です。実際におなかが大きくなる人もいますが、hCGは分泌されていないため、妊娠検査薬が陽性になることはありません。
「色が薄い」判定結果はどう考える?
尿が検査薬のラインに染みこんでいくときにうっすらと陽性ラインが浮かび上がり、その後薄くなって判定時間の時には消えていることがあります。これは尿の成分により検査薬の誤反応が出たもので、陽性ではありません。
妊娠検査薬は、尿中のhCGの量によって反応しますので、hCGの量が少ないと、妊娠検査薬の反応の色が薄くなることがあります。反応の色が薄い場合は、以下のような可能性が考えられます。
・生理予定日の勘違いや生理周期の計算を間違いで、検査の実施日が早すぎる ・水分を取りすぎて尿の濃さが薄くなっていた場合
判定は陰性でも、時間が経つと薄く陽性の線がでることもあります。以下の3つの可能性があります。
・ごく微量のhCGに反応した場合
・尿に混じっていたものが反応した場合
・検査薬に染みこんだ尿が蒸発して尿の成分が残った場合(蒸発線、後述)
「蒸発線」とは?「陽性」なの?
また、妊娠検査薬の判定時間を過ぎて、しばらくたってから、薄い色の反応が出ることがあります。これは、「蒸発線」と言われるもので、妊娠検査薬に浸み込んだ水分だけが蒸発して、尿の成分だけが検査薬の上に残って、誤って表れた反応と考えられています。蒸発線の場合は、陽性と判断する色と色が異なることが多いです。
hCGの量の問題、蒸発線の場合、どちらにしても、反応の色が薄い状態で、妊娠しているかどうかを、確定的に判定することは難しいため、3日以上の間隔をあけて再検査しましょう。また、妊娠検査薬の使用手順を守らず検査して色が薄くなる人もいますので、妊娠検査薬についている使用上の注意は、必ず読んで検査をしましょう。
「『横線』が出た」の意味
妊娠検査薬によっては、判定窓に一時的に横線が現れることがあります。これは試薬が流れている最中に見られるもので、判定結果には関係しません。横線が何らかの意味を示すことはありません。
また、検査薬の種類によっては、一度陽性になったらそのまま陽性のラインが残るものもあれば、時間が経つと陽性のラインが消えてしまうものもありますので、説明書などを良く読んで使うようにしましょう。
【妊娠検査関連の他の記事】
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妊娠検査薬のフライングや結果が間違う可能性などについて、ご紹介しました。妊娠検査薬の結果に疑問を感じる場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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