パーキンソン病の原因、定義 食べ物や遺伝も関係?なぜ難病?ドーパミンの問題?「パーキンソン症候群」とは別?
- 作成:2016/04/25
パーキンソン病は、脳の変性によって、体の動きなどに障害がでる病気です。また、間違いやすいですが、「パーキンソン病」と「パーキンソン症候群」は、別のものです。遺伝や食べ物が原因となるかを含めて、医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
パーキンソン病は難病?
「パーキンソン病」と「パーキンソン症候群」は同じ?違う?
パーキンソン病の原因とは?ドーパミンが関係ある?
パーキンソン病は遺伝する?
パーキンソン病の原因が食べ物の場合がある?
パーキンソン病は難病?
一般の方にとっては、難病というと、「寝たきりである」、とか「生命の維持が困難である」、というイメージが強いかもしれません。しかし、わが国で難病という言葉が使われだした1972年の厚生省(当時)の「難病対策要綱」では、(1)根本的な原因は不明であるため、根本的な治療も難しく、後遺症を残す恐れが少なくないうえに、(2)慢性的な経過をたどり、単に経済的な問題だけでなく、介護などに著しく人手を要するために、ご家族の負担も重く、また精神的にも負担の大きい病気と定義されています。パーキンソン病は、定義からみても十分に難病といえるでしょう。日本では、難病の中でも医療費は公費負担となる「特定疾患」という病気に、1978年から指定されています。
2015年1月1日に施行となった「難病の患者に対する医療等に関する法律」により、医療費助成の対象とする疾患(特定疾患)は、新たに「指定難病」と呼ばれることになりました。現在、合計306ある指定難病の中にパーキンソン病も含まれています。
これまでは特定疾患(難病)の診断は、医師であれば誰でも行うことができました。しかし、法律ができたあと、指定難病の新規の診断は、「難病指定医」のみができることになったので注意が必要です。最初に難病の申請をする時には、患者さんはまず難病指定医のところに行く必要がありますので、必ず難病指定医の先生がいることになっている大学病院や大きな病院を利用するとよいでしょう。
「パーキンソン病」と「パーキンソン症候群」は同じ?違う?
実はパーキンソン病でも起きる「パーキンソン症状(専門的にはパーキンソニズムといいます)」を示す病気は、パーキンソン病以外にも多数あり、それらをまとめた総称名として「パーキンソン症候群」は使われています。症状の面からみると、パーキンソン病の主な症状である、以下の4つのうち2つ以上の症状を備えているものを「パーキンソニズム(またはパーキンソン症状がある)」といい、パーキンソニズムを示すパーキンソン病以外の原因によるものを「パーキンソン症候群」ということもできます。
(1)手、足、顎(あご)などが震(ふる)える;振戦(しんせん)
(2)動作が緩慢(かんまん)になる;無動(むどう)
(3)筋肉が硬くなる;筋固縮(きんこしゅく)
(4)転びやすくなる;姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい)
パーキンソニズムまたはパーキンソン症候群を示す病気には、非常にたくさんの種類がありますが、大きく分けると、以下の2つです。
・脳の変性疾患(へんせいしっかん);ある特定の細胞や組織が障害され、徐々に死んでしまう病気。脳では原因不明のものも多いと
・何らかのはっきりした原因あるいは病気によるもの
パーキンソン病自体も脳の「変性疾患」の1つですが、「パーキンソン症候群」に分類される、その他の脳の変性を起こす病気の多くも、国によって「神経難病(指定難病)」に指定されています。はっきりした原因のある病気や病態(びょうたい)によるものであるパーキンソン症候群は、「2次性パーキンソニズム」または「症候性(しょうこうせい)パーキンソニズムともいわれ、以下のような種類があります。
(1)「薬剤性」;抗精神病薬(こうせいしんびょうやく)などお薬によるもの
(2)「中毒性」;一酸化炭素やマンガン中毒の後遺症によるもの
(3)「脳血管障害性」;多発性の脳梗塞(のうこうそく)など
(4)「代謝性」;ウィルソン病(先天的な銅の代謝の異常を示す遺伝病です)など
(5)「その他」;脳腫瘍、脳外傷、脳炎後など
パーキンソン病の原因とは?ドーパミンが関係ある?
ドーパミンは、ノルアドレナリンやアドレナリンとともに「カテコラミン」と呼ばれる「生体内アミン(生体内でアミノ酸から作られ、神経の伝達物質やホルモンとして働く物質)」の1つであり、ノルアドレナリンやアドレナリンの「前駆物質(ぜんくぶっしつ;合成の元になる物質です)」でもあります。また、ドーパミンは脳内の神経伝達物質(しんけいでんたつぶっしつ)として大変重要な働きをしていることがわかっています。
パーキンソン病は、大脳の下の深いところにある「中脳(ちゅうのう)」のうち「黒質(こくしつ)」という部分の神経細胞が、衰弱して数が減るために起こります。黒質の神経細胞は、神経の突起を。脳の深いところにある「大脳基底核(だいのうきていかく)」の「線条体(せんじょうたい)」という部位に延ばし、シナプスを形成しています。シナプスとは2つの神経細胞の接合部のことで、神経伝達物質を放出する「神経細胞突起終末」と受け皿である側の神経細胞の「神経伝達物質受容体(じゅようたい)」からなっています。黒質と線条体が形成するシナプスの伝達物質がドーパミンで、黒質の神経細胞が衰弱して数が減るとドーパミンの放出が減ると、パーキンソンの症状がでます。黒質のドーパミン神経細胞が減る原因は、今のところ、まだはっきりとはわかっていません。
パーキンソン病は遺伝する?
パーキンソン病の約90%は、家族性や遺伝形式などが特定できない例(専門的には「孤発性(こはつせい)」と言います)です。ただ、5から10%程度は、家族性に発症、つまり血のつながりと関連が深く発症することがわかっています。遺伝が関与するケースがあることは、以前から、一卵性双生児(完全に同じDNAを持った双子)においては、パーキンソン病発症の一致率が高いことで知られていました。
家族性パーキンソン病のうちの一部が、常染色体(じょうせんしょくたい *1)の「優性(ゆうせい)」または「劣性(れっせい)」という遺伝の形式(*2)で発症し、いくつかの原因となる遺伝子も明らかになっています。40歳以下で発症する例は「若年性パーキンソン病」と呼ばれていますが、多くは常染色体劣性遺伝することがわかっていて、家族性パーキンソン病では日本人に多いタイプです。
*1常染色体→ヒトの染色体は46本あり、2本は性染色体で、残りの22対44本が男と女で変わらないので常染色体といいます
*2優性遺伝と劣性遺伝→通常遺伝子はペアになっています。「優性遺伝」の場合、ペアのどちらかにその特質があると症状が出ます。「劣性遺伝」の場合、どちらかに特徴があっても、もう片方に特徴がなければ症状は出ませんが、両方に特徴があると症状が出ます。したがって、劣性遺伝の場合、親が2人とも症状がなくても、子供に症状が出ることがありえます。
約90%のパーキンソン病(孤発性)のはっきりした原因は良くわかっていませんが、家族性パーキンソン病の原因遺伝子の1つ(「αシヌクレイン遺伝子」といいます)が、発症に関与していることがわかってきました。多くのパーキンソン病で、変性した脳の細胞の中にみられる特徴的なタンパクの塊(「レビー小体」とよばれています;後述)が、αシヌクレイン遺伝子の異常によるものだとされています。現在のところ、孤発性パーキンソン病も、遺伝的素因の上に脳の神経細胞に作用する外的因子(環境要因)が加わることにより発症すると考えられています。遺伝は関与している可能性があると言ってよいでしょう。
パーキンソン病の原因が食べ物の場合がある?
ある食べ物がパーキンソン病の直接的な原因になっているということはありません。しかし、いくつかの疫学調査(えきがくちょうさ;病気の原因と考えられる原因と、病気の発生の関連について、集団や地域を対象に統計を利用して調べる方法)で、発症リスクを増加させるものとして、(1)乳製品など動物性脂肪の大量摂取、(2)農薬(ある種の除草剤や殺虫剤など)の残留した食品、(3)アルミニウムなど重金属を含んだ飲料水、(4)砂糖の摂取過剰、などが挙げられています。
パーキンソン病において進行する神経細胞の変性(老化にたとえられます)のメカニズムの1つとして、「酸化(さんか)ストレス」というものの増大があります。酸化ストレスとは、本来、生体を守るために適度に存在する「活性酸素(かっせいさんそ)」が過剰となり、生き物にとって有害となっていまうことです。したがって、抗酸化作用のある成分(ビタミン類のうち、特にビタミンEやC、β-カロチンなどのカロチノイド、ポリフェノール類など)を含む食べ物は、パーキンソン病の発症を抑えるのに有効に働く可能性があります。抗酸化成分は、緑黄色野菜、豆類、海藻などに多く含まれているため、これらをほとんど摂らないという“偏食”は発症のリスクを上げることになるかもしれません。
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パーキンソン病の定義や原因についてご紹介しました。「家族がパーキンソン病かもしれない」と不安に感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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