「持病」「基礎疾患」「原疾患」とは?3つの関係、違いは何?具体例も解説

  • 作成:2016/07/22

「持病」という言葉を使う方も多いですが、厳密には医学的な用語ではありません。ただ、「自分が慢性的にある病気や症状」というイメージがわきやすいので、医療の現場でも用いられています。「基礎疾患」「原疾患」の意味や違いも含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。

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持病とは、どういう意味?は正式な医学用語ではない?医療現場でどう使われている

「持病」という言葉は、日常的に耳にしたり、また使っている一般の方も多いと思います。ただ、持病は、厳密な意味をもって使用される医学用語ではありません。国語の辞書を引いて見ると、「なかなか治らず、常に、または時々起こる病気」とあり、英訳では「a chronic disease;慢性の病気」「an old complaint;古くからの訴え(不満)」などとなっています。

一般的に使われている「持病」の意味としては、完治していない慢性の病気は全般的に含まれ、また、病気に限定されず、なかなか良くならない痛みなどの症状を指して使われこともあります。厚労省でも労働者の持病調査というものを行っていますが、2007年の結果では「持病がある」方が31.4%で、内訳は「高血圧」(25.9%)が最も多く、次いで「腰痛」(24.1%)、「高脂血症」(16.4%)、「胃腸病」(9.0%)、「糖尿病」(8.9%)などとなっています。

持病は、生活習慣病などの「慢性の病気」に対して使われる一方、腰痛や「胃腸病(1つの病気というよりも胃腸が弱いという意味に解釈できます)」のように「持続する不快な症状」の場合も多いようです。

持病は医療現場でも使われる?

医療現場でも「持病」という言い方は、しばしば使われます。特に、医療者側が患者さんに対する場合には、病歴の1つとして過去から現在まで患っている「慢性の全身性の病気」の有無を聞きたい時に、「何か持病はありますか?」と使うことが多いようです。

「基礎疾患」とはどういう意味?具体例は?

元々患っている病気が、ある病態(症状)や、さらに起こってくる病気の下地(したぢ;基礎)になっているような場合に、元の疾患のことを「基礎疾患」とよぶことが多いようです。英語の「Underlying disease」にあたります。個別に、どの病気が基礎疾患の範囲に含まれると決められている訳ではありませんが、以下のような特徴があります。

(1)さまざまな病態や病気の大きなリスクとなるような、主として血液(血管)や代謝などに関連する全身性の疾患。例:高血圧、糖尿病など
(2)全身への影響が大きい重要臓器の疾患。例:慢性心不全、重症肝障害、慢性腎不全など
(3)呼吸器感染やワクチン接種などで急性の症状が重症化しやすい疾患。例:慢性肺疾患、病気や薬による免疫不全状態など

「原疾患」とはどういう意味?具体例は?

「原疾患」は医療者側が使うことの多い医学用語ですが、あまり厳密に定義されていない面があります。ある臓器を考えると、さまざまな最初の病気が最終的には同じ病気の状態となり、臓器がうまく働かなくなるために、同じ病名で扱われたり、治療が行われる場合があります。

例えば、腎臓では「慢性腎不全(腎臓が機能しない状態)」の状態が最終型となる場合に、最初の原因である個別の病気としては、「糖尿病性腎症(じんしょう)」「慢性糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)」「IgA(免疫グロブリンの1つ)腎症」など、まれな病気を含めれば多数存在することになります。このような場合に、「患者さんの慢性腎不全の原疾患は、糖尿病性腎症ではなく慢性糸球体腎炎です」、というように使われます。

持病、基礎疾患、原疾患 3つの言葉の関係 同じ?違う?

以上、述べてきたように「持病」「基礎疾患」「原疾患」の3つの言葉は、重複した意味で使われることも多いようです。「持病」は一般の方にとっては、長く患っている病気または症状であり、慣用的に自由な使われ方がされています。一方、医療者側の場合には、病歴として「基礎疾患」や「原疾患」を患者さんに尋ねる際に、わかりやすく「持病」と言っている傾向があるようです。

「基礎疾患」と「原疾患」は同一の病気を指している場合もありますが、基礎疾患は前述したように単に原因となっている1つの病気というよりは、むしろ全身的にも与える影響が大きいリスクとなる疾患を指すことが多いでしょう。一方、「原疾患」は病態(心不全、腎不全など)の原因となる個別の病気に使われます。原疾患は、病態の進行や予後が原疾患によって異なるような場合に、しばしば使われているようです。

持病、基礎疾患、原疾患についてご紹介しました。持病の考え方などの疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。

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