集中治療室(ICU)とは?種類、入る人、治療、体制、費用なども解説 せん妄が起きる「ICU症候群」の説明も
- 作成:2016/07/22
集中治療室とは、よく知られているように生命の危機にある方が入る、特別な医療体制をもった部門です。どのような治療をするのかや、費用の目安、「ICU症候群」も含めて、専門医師の監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
集中治療室(ICU)とは?どんな人が入る?
集中治療室(ICU)の種類
集中治療室(ICU)で患者を見守る体勢はどんなもの?看護師もいる?
集中治療室(ICU)ではどんな治療をする?
集中治療室(ICU)の入院費用の目安は?
集中治療室(ICU)で面会、お見舞いは可能?面会時間は制限される?
集中治療室(ICU)症候群とは?せん妄が起きることがある?
集中治療室(ICU)とは?どんな人が入る?
「集中治療室」とは。病院内にある施設の一種で、呼吸や循環その他の状態が非常に悪い状態となり、生命の危機にある患者さんを24時間体制の管理下で、より効果的な治療を行う部門のことを指します。また、日本集中医療学会では「内科系、外科系を問わず呼吸、循環、代謝そのほかの重篤な急性機能不全の患者を収容し強力かつ集中的に治療看護を行うことにより、その効果を期待する部門である」と定義されており、もともと診療を行っていた科や病名に関わらず、全身状態が悪く一般病棟での治療では効果的な治療が行えないと判断された患者さんは誰でも収容される可能性があります。
集中治療室は英語で「Intensive Care Unit」と呼び、日本でも「ICU」という略号で呼ばれることがあります。「Intensive」は「集中的な」という意味です。
集中治療室(ICU)に収容される場合が多いケースとしては「一般病棟で治療を受けている間に病態が悪くなった」、「救急外来を受診し、状態が悪いためICUに収容された」、「大きな手術(心臓の手術など)の後で24時間体制の管理が必要」などが挙げられます。
集中治療室(ICU)の種類
集中治療室(ICU)には更に種類があります。これは特定の診療科の病気の人を収容し、専門的な治療を行うためで、比較的規模の大きい病院に設置されている場合があります。具体的には、以下のようなものがあります。
・心筋梗塞などの心臓病の方を収容する冠動脈疾患集中治療室(CCU:colonary Care Unit)
・脳卒中の方を収容する脳卒中集中治療室(SCU:Stroke Care Unit)
・生まれたばかりの新生児を収容する新生児集中治療室(NICU:Neonatal Intensive Care Unit:NICU)
以上のように、集中治療室には様々な病気によって、呼吸や循環の状態が悪くなり、一般病棟での治療体制では生命の危険があると判断された患者さんが収容されます。また集中治療室を出て一般病棟に移ることができるのは、治療によってもともとの病気の状態がある程度改善し呼吸や循環の状態が落ち着いたため、一般病棟での治療体制でも生命の危険が少なくなったと判断された場合です。
集中治療室(ICU)で患者を見守る体勢はどんなもの?看護師もいる?
集中治療室(ICU)では専門の医師、看護師が交代制で働いています。また、人工呼吸器や人工透析、補助循環装置などの機械を使用する際の専門家として「臨床工学技士(りんしょうこうがくぎし)」というスタッフがいる病院もあります。
集中治療室(ICU)ではどんな治療をする?
集中治療室(ICU)に収容されるのは、基本的に呼吸や血圧などの生命維持の基本となる機能が、自力では維持できない患者さんです。そのため、集中治療室(ICU)における治療の大きな目的は、呼吸や循環など生命を維持する機能の回復と安定です。
一般的な集中治療室(ICU)では、もともとの病気の種類に関わらず呼吸や循環など全身の状態が悪く、一般病棟での治療では生命に危険があると判断された患者さんは全て収容され治療を行う可能性があります。しかし、同じように呼吸や血圧の状態が悪い患者さんでも、「治療によって回復する見込みがない」と判断された場合は集中治療室(ICU)で治療を行うことはありません。
集中治療室(ICU)では、呼吸の管理、血圧や血液循環の管理を行いながら、もともとの病気の治療も一緒に行う必要があります。呼吸に対しては酸素の吸入や人工呼吸器の使用、血圧の維持については昇圧剤(血圧を上昇させる薬)や心臓の働きを助ける薬の点滴、弱った心臓の働きを助ける機械(補助循環装置:ほじょじゅんかんそうち)の使用などを行います。また感染症がある場合は、抗生剤やステロイドの使用、腎臓の機能が悪い場合は人工透析を行う場合もあります。
上記のような治療を行うために点滴の管を複数入れるほか、血圧や呼吸、脈拍、心臓の状態を観察するためのセンサーなどが身体のあちこちに装着され、24時間体制で全身の状態を観察しながら集中的な治療が行われます。
集中治療室(ICU)の入院費用の目安は?
集中治療室に入院した場合、「特定集中治療室管理料」という入院料がかかります。保険適用ですが、3割負担の方で1日から7日目は1日あたり約4万円、8日から14日目は1日あたり約3万6千円程度かかります。この入院料の他、どのような手術や検査、治療を行うかによって総合的な金額が確定しますが、1日あたり10万円程度かかる方も珍しくはありません。
しかし集中治療室に入院中の費用については「高額医療費制度」の対象となるため、一定額以上の料金を支払う必要はありません。
集中治療室(ICU)で面会、お見舞いは可能?面会時間は制限される?
集中治療室(ICU)でも面会やお見舞いは可能です。ただし重症の患者さんが多いため、一般病棟と全く同じという訳にはいかず、検査や治療の妨げにならないように面会時間が厳しく制限されている場合があります。
また、面会やお見舞いによって集中治療室(ICU)に入室した方から患者さんに雑菌がうつり、感染症を起こす恐れがあるため、集中治療室(ICU)への入室前には決められた手順で手をよく洗い、洋服の上から指定されたガウンを着用し、髪の毛が落ちないよう簡易的なキャップをかぶるなどの規則が設けられている場合があります。また、花や食品などを持ち込むことは禁止されている場合があるなど、病院ごとに様々な決まりが存在します。集中治療室(ICU)へのお見舞いを検討されている方は、病院の規則をよく確認することが大切です。
集中治療室(ICU)症候群とは?せん妄が起きることがある?
集中治療室(ICU)での治療を開始して数日たつと、一部の患者さんで精神的な異常をきたす場合があります。これを「集中治療室(ICU)症候群」と呼びます。
「集中治療室(ICU)症候群」とは、生命の危機による恐怖や不安、環境の変化、薬の影響、たくさんの医療機器やチューブにつながれて身動き出来ないなど、様々な要因による極度のストレスによって引き起こされる精神的な異常を指します。
もともと集中治療室(ICU)は24時間体制で治療が行われる場所のため、昼夜の区別がつきにくいという特徴があり、不眠を引き起こしやすい状態と言えます。不眠が続くと精神的に不安定になり、うわごとを言ったり幻覚・妄想状態になることがあります。また強い興奮状態になる、時間や場所の感覚がなくなり、錯乱状態におちいる場合もあり、このような状態を医学的に「せん妄(せんもう)」と呼びます。
集中治療室(ICU)症候群に対しては、症状に合わせた治療が行われる場合が多く、ケースによて不眠の解消、環境調整、一時的な鎮静剤の投与などの治療が行われます。また集中治療室(ICU)症候群は「集中治療室(ICU)」という特殊な環境や病気からくる恐怖、不安などのストレスによるものなので、病気の状態が良くなって集中治療室(ICU)から出ることができれば自然と収まります。
集中治療室についてご紹介しました。近しい方が集中治療室に入り不安を感じている方や、疑問が解決されない場合は、医師に気軽に相談してみませんか?「病院に行くまでもない」と考えるような、ささいなことでも結構ですので、活用してください。
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