大腸ポリープの原因、分類、症状、治療 ストレスでも?大きさと危険性の関係は?放置は危険・
- 作成:2016/10/15
大腸ポリープとは、大腸の粘膜が隆起する変化です。原因、分類、症状、治療だけでなく、切除後の生活への影響などの疑問を含めて、医師監修記事で、わかりやすく解説します。
この記事の目安時間は6分です
目次
- 大腸ポリープの概要 そもそも「ポリープ」とは?
- 大腸ポリープの原因 ストレス、遺伝、食事が関係することも?
- 大腸ポリープの分類 良性と悪性の境界は?癌化可能性は腺腫のみ?グループの定義とは?
- 大腸ポリープの分類 「グループ」とは?
- 大腸ポリープは大きさから危険性が判断できる?できない?「1cm」「2cm」「3cm」「5mm」など大きさからわかることがある?
- 大腸ポリープの好発年齢 20代や30代でもなる?
- 大腸ポリープの再発可能性
- 大腸ポリープの予防可能性 食事も関係ある?
- 大腸ポリープに自覚症状がある?ない?
- 大腸ポリープの代表的症状 出血・血便はどんなもの?特徴は?
- 大腸ポリープで下痢、便秘、貧血、腹痛などの痛みが起きる?起きない?
- 大腸ポリープの診療科は?
- 大腸ポリープの検査 大腸カメラとは?
- 大腸カメラ以外の検査はどんなもの?
- 大腸ポリープの検査 「生検」「病理検査」とは?
- 大腸ポリープはそもそも治療の必要がある?放置しても大丈夫?
- 大腸ポリープで経過観察になるのはどのような場合?
- 大腸ポリープの手術 内視鏡による切除術とはどのようなもの?クリップで止血するとは?
- 大腸ポリープの手術 開腹手術はどのようなもの?どのような場合に開腹になる?
- 大腸ポリープ手術なら必ず入院?入院期間の目安は?
- 大腸ポリープの治療で薬を使うことがある?
- 大腸ポリープの治療費用の目安 保険適用になる?
- 大腸ポリープの切除後の生活への影響 食事には要注意?
- 大腸ポリープの切除後の生活への影響 定期的な検査が必要?
- 大腸ポリープの切除後の生活への影響 便秘や血便症状が出る?出たらどう対応すればよい?
大腸ポリープの概要 そもそも「ポリープ」とは
そもそも「ポリープ」とは粘膜が隆起した病変です。
大腸の壁は、内側から「粘膜層」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜(しょうまく)下層」「漿膜」と5つの層でできています。最も内側である「粘膜層」から発生して、盛り上がった病変を、大腸ポリープと呼びます。ポリープは、粘膜がある部分であればできるので、胃や胆のう、声帯や子宮などにもできます。
病変の盛り上がりはキノコ型のように、外から明らかにわかる隆起から、肉眼でみると平らに見え、顕微鏡でなければわからない程度のものもあります。
大腸はお腹の右下で小腸とつながっています。部位は以下のようにわけられます。
・小腸とつながった部分から右上に上がる部分までを「上行結腸」
・右上から左上までを「横行結腸」
・左上から左下まで下りてくる部分を「下行結腸」
・左下でSの字にカーブしているところを「S状結腸」
・「直腸」
どの部位にポリープができても、「大腸ポリープ」と呼びます。
特にS状結腸は大腸ポリープが良くできやすい部分です。理由として、便は上行結腸ではまだ泥状ですが、S状結腸まで来ると固形になっていることや、S字にカーブしているため便と接触してこすれやすく、腸の壁へのストレスが高いことが考えられています。
時々、「結腸ポリープ」という呼び方が使われることがあります。「結腸」とは、大腸全体から直腸を除いた部分を指します。
大腸ポリープの原因 ストレス、遺伝、食事が関係することも?
大腸ポリープの原因は、「何か1つだけが悪い」ということはありません。
血縁者に大腸癌になった人がいる場合は、遺伝の可能性があります。大腸ポリープと関連した遺伝子の1つに、「HNPCC」というものがあります。HNPCCは、大腸癌だけではなく、他の癌の発生にも影響しやすい遺伝子です。
大腸癌の5%から10%がこの遺伝子と関連していると考えられています。全人口の0.3%から0.5%がこの遺伝子を有していると報告されています。そのため30歳代から、癌になるためしっかりと検査を受けることが必要です。
また、「家族性大腸ポリポーシス」という病気は、大腸に100個以上のポリープができる遺伝病です。高い確率で大腸癌になることがわかっており、診断がつき次第大腸を切除する治療を行って大腸癌の発生を予防します。
遺伝子以外の原因としては、腸にストレスがかかるとポリープができやすいと考えられます。ここでいう「ストレス」とは、「嫌なことがあったな」というストレスではなく、腸に負担のかかる状態という意味です。
消化の悪いものや刺激物を大量に摂取したり、便秘や下痢の状態が長年続いたりすることは、腸のストレスになり、大腸ポリープ発生の危険性を増やすことがあります。特に、脂肪分の多い食事は、統計的に大腸ポリープが発生しやすいことも、判明しています。日本人の大腸ポリープの頻度が増えているのは、食事の内容が、和食から高脂肪である洋食に変化したことも原因であると考えられています。
繰り返しになりますが、大腸ポリープは複数の原因が組み合わさって発生すると考えられています。したがって、遺伝が原因だからといって同じ遺伝子を持った兄弟が皆、大腸ポリープを必ず発症するわけではありません。
しかし、家族は小さい時に同じ食事や生活習慣で育つため、家族に大腸ポリープや大腸癌の人がいる場合、複数の大腸ポリープの原因が他の家族にも同様に見られることが多いので、注意は必要といえます。
大腸ポリープの分類 良性と悪性の境界は?癌化可能性は腺腫のみ?グループの定義とは?
一言に「大腸ポリープ」といっても、医学的には分類があります。
まず、大きく分けて、「腫瘍性」と「非腫瘍性」に分けられます。
腫瘍性ポリープは、さらに「腺腫」と「癌(がん)」に分けられます。簡単に言うと、「腺腫」は良性ですが、「癌」は悪性です。
非腫瘍性ポリープには、「過形成(かけいせい)ポリープ」「炎症性ポリープ」「若年性ポリープ」があります。
分類は、見た目である程度可能ですが、最終的には「生検」や切除で切り取ったポリープを顕微鏡で見て確定診断します。
従来、腫瘍性病変だけが、癌になると考えられていましたが、最近では過形成ポリープも癌化することが報告されています。しかも、過形成ポリープの方が、腺腫と比較して、急速に癌に変わる可能性も指摘されています。また、若年性ポリープの一部も癌になることがわかっています。
ポリープの種類によって癌になりやすいかどうかは異なるものの、どのタイプのポリープも、すぐに治療が要らないと判断されても定期的に経過をみる必要があります。
ポリープは、形による分類もあります。ポリープの茎の大きさや長さで分類され、「有茎(ゆうけい)性」「亜有茎性」「広基(こうき)性」「表在性」があります。
「有茎性」は茎がしっかりと目立つタイプでキノコ型 「広基性」は茎と呼べるようなくびれがないもの 「表在性」は肉眼的に隆起が目立たないものや逆にわずかにへこんでいるものなど
大腸ポリープの分類 「グループ」とは?
また、ポリープの顕微鏡検査の結果には、「グループ」と呼ばれる分類がついていることもあります。グループは、「1 」から「5」までの5段階で評価します。
グループ1→正常(異常なし)
グループ2→炎症性変化のみ
グループ3→軽度または中程度の変化がみられる腺腫
グループ4→強い変化がみられ、腺腫と癌の境界
グループ5→癌
グループ3以上が、腺腫もしくは癌ということになり、治療対象になります。
大腸ポリープのほとんどを占めている「腺腫」は、徐々に癌に変化すると考えられています。進行は段階的で、少し進んでは休み、またさらに進むという変化をしています。そのため、腺腫性ポリープは「良性」と「悪性」のはっきりとした境界はないと考えた方がよいでしょう。生検の場合、たまたま切り取った部分が「腺腫」であっても、他の部分はすでに「癌」に変化している可能性もあります。
癌になりにくい炎症性ポリープなどでは、一旦診断がつけば、そのまま無治療で経過観察になることもよくあります。
ポリープの治療方針は。ポリープの形や大きさ、顕微鏡の検査結果により複合的に判断されます。
大腸ポリープは大きさから危険性が判断できる?できない?「1cm」「2cm」「3cm」「5mm」など大きさからわかることがある?
大腸ポリープは大きさである程度危険性を判断することができます。
大阪府成人病センターのデータでは、ポリープの大きさによって、細胞検査で癌であった確率は以下のようになっています。
5mm未満→0.6%が癌
5mmから9mm→7%が癌
10mmから19mm→24.6%
20mm以上→35.8%
大きくなればなるほど、癌の確率が増えるということです。
腺腫は常に一定のスピードで大きくなるのではなく、少し大きくなってはしばらくそのままの大きさでとどまり、また後から少し大きくなる、といった具合で段階的に大きくなると考えられています。
一般的には、ポリープの大きさが5mm以上あれば自然治癒は難しいと判断して、切除が検討されます。10mm以上になれば、癌の合併が増えるため、時間を空けずに、積極的に治療をすることが多いです。20mmを超えるとカメラで切除できない大きさと判断され、腹腔鏡や開腹手術が勧められます。そのため20mm満たないポリープは、できるだけ早くカメラによる治療を行った方がよいでしょう。
大腸ポリープの好発年齢 20代や30代でもなる?
大腸ポリープの発生は、大腸癌と同様に60歳から70歳代がピークになります。一般的には、40歳代から徐々に大腸ポリープの頻度が増えていきます。
20歳代、30歳代でもポリープを認めることはありますが、この年代でのポリープは炎症性であったり良性であることが多いです。もし、若いうちから癌になる素質を持った「腺腫」と呼ばれるポリープが複数できていた場合は、家族に大腸ポリープや大腸癌の人がいたりするなど、遺伝の要素が強い人と考えられます。
大腸ポリープの再発可能性
適切に大腸ポリープが治療されれば、同じ部位にポリープができることはほとんどありません。しかし、一度大腸ポリープを指摘された場合、その後、別の場所に新しい大腸ポリープが出てくることはよくあります。別の場所にできるような場合は、大腸全体がポリープのできやすい状態にあるということを意味しています。
大腸ポリープの原因の1つは加齢です。一度ポリープができれば、その人にとって「ポリープのできやすい時期が来た」とも考えられます。
また、遺伝が関与したポリープの場合は、残念ながら普通の人よりもポリープができやすいタイプと考えられ、再発しやすい人と考えられます。
大腸ポリープの予防可能性 食事も関係ある?
大腸ポリープの原因のうち、加齢や遺伝といった原因は変えることができません。ただ、食事や生活習慣を変えることは、大腸ポリープの再発のリスクを減らす可能性があります。
食事では脂肪分を控えましょう。脂肪分は、腸の負担を増やします。また、血液検査で中性脂肪が高い人は、腺腫対応の大腸ポリープが起きやすいことが、調査によりわかっています。
また、食事の繊維質にも気をつけましょう。一般には、繊維質をとると腸に良いと考えられていますが、取りすぎは、便の量が増えて逆に腸の負担を増します。
「繊維質」には、「水溶性」のものと「不溶性」のものがあります。水溶性は海藻やオクラ・納豆などのネバネバの部分です。不溶性はゴボウやキノコなどかんだ時に筋が残るような食物に多く含まれています。
適度な不溶性食物繊維は便秘の解消などにつながりますが、取りすぎると腸の負担を増します。できるだけ、水溶性の食物繊維をとって便秘を解消しましょう。 また、アルコールやコーヒー、トウガラシなどの刺激物は、腸に刺激を与えます。普段から腸の調子が良くない人や大腸ポリープを指摘された人は、できるだけ摂取しないようにしましょう。
生活習慣で最も重要なことは禁煙です。タバコは大腸癌だけでなく他の癌の原因にもなります。
大腸ポリープに自覚症状がある?ない?
大腸ポリープは、かならずしも症状があるというわけではありません。実際に、大腸ポリープが見つかる人のほとんどは、自覚症状がありません。健康診断の便潜血が陽性であったり、他の病気と関連した検査を行う中で、たまたま大腸ポリープが見つかった場合がほとんどです。
なぜ大腸ポリープは、自覚症状が現れにくいかというと、大腸の粘膜には痛みを感じる神経がないためです。そのため、粘膜内にとどまっているポリープで痛みが出ることはありません。
逆に、大腸ポリープで、痛みが出るときには、大腸粘膜からさらに深い部分に病変が進行している可能性が高くなります。深い部分まで進行しているような大きさの場合、大腸ポリープから、大腸癌に変わっている可能性も高くなります。
大腸ポリープが便の通りを妨げるほど大きくなれば、便がつかえて腹痛が現れるかもしれませんが、その時点ではポリープはある程度大きくなっており、やはり癌に変わっている可能性も高くなります。
自覚症状が出てくるときには癌になっている可能性が高いことを考えると、自覚症状がないからといって検査を先延ばしにするのはよくありません。
大腸ポリープの代表的症状 出血・血便はどんなもの?特徴は?
現在、日本で大腸がんを早期発見するために健康診断で行われているのは便潜血検査です。2回分の便を採取し、試薬を使って血液が混じっているかを判定します。2回検査を行うのは1回だけでは病気を見逃してしまうからで、1回だけ陽性の人が2回陽性の人よりも軽症ということはありません。
また、検査の方法によっては便潜血検査の結果が「陽性」「陰性」ではなく(1+)、(2+)、(3+)で表されることもあります。数字が多いほど混じった血液量が多いということになります。ただ、「(1+)だから」、つまり「血の量が少ない」ことは、「悪性ではない」という意味ではありません。便潜血検査では、「1回の陽性」「(1+)の結果」でも、陽性になったら精密検査が必要です。
自覚症状がなければ上記の検査で便に混じった血液を検出しますが、明らかに便に血がついていたり、混ざっていたら、便潜血検査を行わずとも、大腸ポリープや大腸癌を疑って精密検査が必要です。
便潜血陽性の人の中で、大腸癌が約3%、大腸ポリープが約20%の人に見つかります。この確率を高いと思うかどうかは人それぞれかもしれませんが、大腸ポリープは自覚症状が乏しいことを考えると、検査で陽性であった場合に、精密検査を受けなければ、大腸癌になる前の大腸ポリープの段階で見つける、早期発見は難しいと考えられます。
便潜血で、陽性であった人がよく口にするのが「痔があるから」という言葉です。確かに痔があって、出血をすれば便潜血検査は陽性になります。しかし、痔だからといって、大腸ポリープや大腸癌がないとは言えません。やはり大腸ポリープや大腸癌を否定するためには、検査を受けるしかないのです。
大腸ポリープで下痢、便秘、貧血、腹痛などの痛みが起きる?起きない?
大腸ポリープは、ほとんど自覚症状がありません。
大腸ポリープのできる大腸粘膜には痛みを感じる神経がないため、ポリープができても痛みを感じません。また、ポリープは2cmを超えるほど大きくならない限り、便の通過には支障が出ないため下痢や便秘といった症状の原因になることもありません。ただし、慢性の下痢や便秘が、腸のストレスを増やし、大腸ポリープをできやすくするという関係性はあります。
出血しやすいポリープの場合、じわじわと出血を何か月、何年と続けることで貧血になることもありますが、自覚症状が出るほどの強い貧血になることはまれです。このような場合、健康診断などの血液検査で、ゆっくりと進む貧血を認めます。
また、大腸ポリープの1回の出血はわずかなため、目で血液が確認できるような下血はまれです。
特別な場合を除き、大腸ポリープは自覚症状がないため、健康診断が重要なのです。
大腸ポリープの診療科は?
大腸ポリープを疑った場合、受診する科は消化器内科になります。大腸検査を行ったり、カメラ(内視鏡)を使って、病変部位を切除するのは、消化器内科の領域になるためです。内視鏡的に治療できない場合、消化器内科から消化器外科を紹介されることもあります。
大腸ポリープの検査 大腸カメラとは?
大腸の検査方法は3つです。いずれの検査も下剤を服用し、大腸の中を空っぽにして検査を行います。お尻を見られるのが恥ずかしいかもしれませんが、検査の時は、お尻の部分に小さく穴の開いた検査用の下着を使用するため、実際にはほとんど見えません。病院によっては、女性患者の検査を女性医師が行う病院もあります。気になる方は、インターネットで調べたり、病院や医療機関に問い合わせをしてもよいでしょう。
下剤は病院ごとに多少異なりますが、腸の中が空になるように検査日の朝に液体の下剤を服用します。飲んだ下剤が、透明なままお尻から出てくるようになれば、検査が可能となります。普段、便秘の人や下剤を服用している人は、数日前から下剤を服用する必要がある場合がありますので、検査を相談する段階で伝えておきましょう。
現在、最も多く行われているのは大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)です。大腸カメラは、胃カメラの管が長くなった形をしています。病院によって、腸の動きを抑える注射や、軽い麻酔薬を使用することもあります。
ベッドの上で、左側を下にして横向きになり、膝を抱えるような形でお尻を突き出します。お尻の入り口に、麻酔のゼリーを塗って、カメラを挿入します。直腸は感覚が強いため最初は違和感が強いかもしれませんが、直腸より奥は、それほど違和感はありません。ただし、腸を伸ばした時や曲がり角を曲がるときには痛みを感じることもあります。特に、女性やお腹の手術を受けたことがある人は、痛みを強く感じることが多いため、初めて検査を受けるときには、麻酔薬や鎮痛剤を使用した方がよいでしょう。
検査時間は観察だけであれば10分から20分程度です。大腸ポリープがあって生検などを行えば少し時間が伸びます。
大腸カメラ以外の検査はどんなもの?
大腸カメラ以外には、大腸にガスを入れてCTを行う「CTコロノグラフィー」、大腸にバリウムを入れて行う「注腸検査」もあります。これらの検査は、液体や空気を入れて行う検査であり、カメラよりも違和感が少ないのが特徴です。ただし、大腸の凸凹を見る検査であり、平らな病気は見つけることができません。基本的には、大腸癌や大腸ポリープを見つけるだけの検査であり、大腸カメラで同時に診断できるような腸炎などは見つけられません。
また、ポリープが疑われても、CTコロノグラフィーや注腸検査では、それ以上の検査ができません。一部を切り取るような「生検」などの検査を行う時には、大腸カメラが必要になります。
CTコロノグラフィーの検査時間は、腸にガスを入れて、CTでお腹を1回から2回撮影するだけであり、10分程度です。
注腸検査では、造影剤を腸に入れてレントゲンで見たり、撮影したりしますが、造影剤が腸の奥まで届くように体の向きを頻回に変える必要があります。腸の長さや、どのくらい動けるかにもよりますが、注腸検査の検査時間は10分から20分程度です。この2つの検査は、どちらもレントゲンやCTを用いるため多少の被曝があります。
それぞれの検査にはメリット・デメリットがあるわけです。また、病気の可能性が高いか低いかによって、勧められる検査が異なることもあります。
大腸ポリープの検査 「生検」「病理検査」とは?
大腸ポリープがあった場合よく行われる検査が「生検」です。これは大腸カメラの検査の際にポリープの一部をつまんで取ることです。多少出血しますが、とられる組織は1mm程度で、出血は自然に止まります。
このようにして採取した検体は「病理検査」に提出します。病理検査は、生検で取られた組織の一部や、切除したポリープ全体を加工し、顕微鏡で細胞の形や並びを見るものです。
病理検査によって「癌か腺腫か(悪性かどうか)」といったポリープの分類や、病気がどの範囲まで広がっているかといった診断をすることができます。
「生検」や「病理検査」は、大腸ポリープの治療方針を決定するのに重要な検査です。
大腸ポリープはそもそも治療の必要がある?放置しても大丈夫?
大腸ポリープの約80%は「腺腫」と呼ばれるもので、放置すると数年後に癌になる可能性のあるものです。その他の非腫瘍性ポリープでも一部癌になる可能性があります。癌になる可能性を考えると、ほとんどのポリープは治療が必要ということになります。
ただし、大腸ポリープは数日で大きくなることはありません。ポリープが見つかっても、癌が疑われる場合や出血をしている場合を除き、数カ月以内に治療をすれば特に問題はありません。
ポリープの種類によっては、「仕事が一段落してから」というように余裕を持ったスケジュールで、治療時期を調整できるものもありますので、事情があれば相談してみましょう。
大腸ポリープで経過観察になるのはどのような場合?
大腸ポリープのほとんどが切除対象になる腺腫であるため、基本的にはポリープは切除が勧められます。治療をせず経過観察になる場合としては、明らかに良性である炎症性ポリープの場合などに限られます。また、自然に消える可能性がある5㎜以下のポリープは経過観察になることもあります。
その他、抗凝固剤や複数の抗血小板剤を服用していなければならない患者の場合、注意が必要になります。ポリープを切除するときに血液をサラサラにする力を弱めることが、脳梗塞や心筋梗塞の危険性を一時的に上げることがあるためです。ポリープの大きさなどを考慮して、経過観察になることもあります。
大腸ポリープの手術 内視鏡による切除術とはどのようなもの?クリップで止血するとは?
「内視鏡切除と」は大腸カメラを用いて、腸の内側からポリープを切除する方法です。切除する大腸の粘膜には痛みの神経がないため、痛みなく切除できます。
小さなポリープや平たい形のポリープの場合、ポリープの下に水の注射をして切除する部分を盛り上げます。
茎があるようなキノコ型のポリープは、そのまま、カメラから出したループ状の金属ワイヤーをひっかけて、電気を通しながら切除します。電気を通すのは傷口を焼いて出血しないようにする意味や、万が一ポリープの一部がワイヤーの外に残っていても、熱によって焼いて、消滅させることができるからです。
それでも、一部のポリープは、血管が豊富であったり、大きな血管が通っていて、切除後に出血することがあります。出血した場合、クリップで血管や切除面を挟んで止血処置をします。このクリップは、「止血クリップ」とよびます。
クリップは、傷口が治ると自然に取れて、便と一緒に出てくるため、後日クリップを外すような処置は不要です。クリップはとても小さいので便と一緒に出てきても気づかないことがほとんどです。最近ではチタン製も多く、クリップが大腸内に残っていてもMRIなどの検査に影響が出ないようになっています。
大腸ポリープの手術 開腹手術はどのようなもの?どのような場合に開腹になる?
大腸ポリープで開腹手術が必要になるのは、以下のような場合です。
・大腸ポリープがカメラで取れないほど大きい場合 ・粘膜より下の層に病変が及んでいる場合(もしくは疑われる場合) ・カメラでとったポリープが癌と判明し、癌細胞が血管やリンパ管に入り込んでいると判断された場合
カメラで取れるポリープの大きさの目安は2cmです。2cmをこえると癌が混じっている確率が高いことや1回で切除できないため、開腹手術が検討されます。癌が混じった病変を1回でとりきれず2回以上にわたって切除すると、ごくまれに癌細胞が切り口の血管から侵入して、後日再発や転移の原因になるからです。
ただ、開腹手術の方が、危険であると判断された場合は、大きなポリープを2回、3回、もしくはしれ以上にわけて切除することもあります。分けて取る判断をした場合、その後注意深い経過観察が必要です。
また、ポリープが2cm以上の大きさであっても、茎が長くワイヤーをひっかけることができる場合はカメラで一括切除できる場合もあります。
平坦なポリープの場合、ポリープの下に水の注射をして盛り上げた形で切除するのが一般的です。ただ、水の注射で、ポリープが盛り上がらない場合、病変がさらに深いところまで及んでいる可能性があります。基本的には、カメラでは粘膜しか切除できません。そのまま、ポリープを切除しても、カメラで対応できない深い層に病変が残ってしまうため、カメラでの切除を中止して開腹手術となることがあります。
見た目ではポリープが切除できたと判断されても、切除したポリープを顕微鏡で見たときに、癌細胞があり、さらにその細胞が血管やリンパ管に入り込んでいるのがわかった場合は追加で開腹手術を行います。血管などに入り込んだ癌細胞を取り除く意味や、周りのリンパ節も取る必要があるためです。
開腹手術は、ポリープの部分の大腸を切除するだけの術式から、大腸がんに準じて大腸とその周囲のリンパ節を取り除く手術までがあります。
大腸だけの切除の場合は、腹腔鏡を用いた手術になることもあります。
大腸ポリープ手術なら必ず入院?入院期間の目安は?
大腸ポリープの手術は原則入院が必要です。安静と食事制限によって切り口から出血を防ぐことが、最も重要な目的となります。また、万が一腸に穴が開いてもすぐに対応できるというメリットもあります。
カメラでの切除であれば入院は1泊2日が一般的です。手術翌日のお腹の状態や貧血の有無を確認して問題がなければ退院となります。
腹腔鏡の場合は傷の1つ1つが小さいため入院期間は7日から10日です。開腹手術の場合は10日から21日程度が一般的です。
カメラでの切除の場合、腸の粘膜の削るだけなのに対して、腹腔鏡や開腹手術の場合は腸を切ってつなぐため、腸がつながるまで食事制限があるため、入院期間は長くなります。
大腸ポリープの治療で薬を使うことがある?
大腸ポリープそのものを薬で治療することはできません。
大腸ポリープ切除後、出血予防に止血剤の内服が処方されたり、傷口の負担を減らすため便秘気味の人に下剤が処方されたりすることはあります。
大腸ポリープの治療費用の目安 保険適用になる?
大腸ポリープの治療は保険適応になります。手術の方法や入院期間、治療した病院によっても費用は多少異なります。
カメラで切除した場合、入院も含めて3割負担で2万円から4万円、1割負担で8千円から1万6千円程度です。
腹腔鏡や開腹手術の場合、3割負担で40万円、1割で10万円程度です。直腸の手術の場合は少し高くなります。
腹腔鏡や開腹手術では高額となった医療費を還付する制度の対象となるため、請求の手続きについて確認しましょう。また、生命保険の種類によっては大腸ポリープの手術は特約の対象になることがあるので、加入している方は、保険会社に確認してみるとよいでしょう。
大腸ポリープの切除後の生活への影響 食事には要注意?
大腸ポリープ切除を行った後は、食事に細心の注意を払いましょう。
カメラでの切除と開腹手術で共通して気をつけることは、消化の良い食事を心がけ、刺激物を避けることです。手術後に腸の動きが活発になると、傷の治りが遅れたり、出血することがあります。
アルコールは、血管を拡張させて出血しやすくなるので避けるようにしましょう。 冷たいものも胃腸を刺激して動きを活発にしてしまうので、飲み物などは常温の方がお勧めです。
食事の内容としては腸に負担のかかる脂肪分を控えます。術後は繊維質も腸の負担になるので控えます。消化よく、調理した炭水化物・蛋白質が中心になります。卵入りのおかゆや豆腐・脂の少ない肉や魚が勧められます。
カメラで切除した場合は1週間程度、腹腔鏡や開腹手術の場合は1カ月程度このような食事を心がけて下さい。
大腸ポリープの切除後の生活への影響 定期的な検査が必要?
大腸ポリープの切除をした後は、生活でも配慮が必要です。お腹に圧がかかるような重い物を持ち上げる、ゴルフといった動作は控えましょう。
もちろん、便秘で強く力むこともよくありません。だたし、便秘の場合に使用する下剤は、お腹の動きを活発にして逆効果になることもあります。力まなければ出ないほどの便秘の場合、自己判断で下剤を服用せず、病院で相談した方がよいでしょう。
大腸ポリープは再発が多いため、病院から指示された間隔で検査を受けるようにしましょう。検診で「便潜血陽性」を指摘され、ポリープを切除した人が、その後健診の便潜血で異常がないからといって、病院での定期検診を受けないことがありますが、よくありません。「便潜血検査」は、それまで大腸ポリープのなかった人を対象に早期にポリープや癌を見つける検査であり、一度でも大腸ポリープを指摘された場合は考え方が異なります。検診で異常がなくても大腸カメラで新たなポリープが見つかることはよくあります。
大腸ポリープの切除後の生活への影響 便秘や血便症状が出る?出たらどう対応すればよい?
大腸ポリープを切除したからといって便秘になることはそれほどありません。腹腔鏡や開腹手術によって、腸が短くなった人では、その影響で下痢になることはありますが、食事を注意したり、一時的な服薬で改善することがほとんどです。
退院後1週間以内に血便があった場合、傷口からの出血が疑われますので、気づいた時点で、夜中であっても病院に電話をして指示を仰ぎましょう。退院後1週間以上経過すれば、傷口は閉じていることが多く、それ以降に出血があった場合には大腸ポリープとは関連のない出血が疑われます。
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堤 多可弘 先生
VISION PARTNERメンタルクリニック四谷
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平野井 啓一 先生
株式会社メディカル・マジック・ジャパン、平野井労働衛生コンサルタント事務所
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内科、外科、産婦人科、小児科、婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、精神科、循環器科、消化器科、呼吸器科をはじめ、55以上の診療科より、のべ8,000人以上の医師が回答しています。