「血液をサラサラにする薬」の服薬時、納豆を食べてはいけない?【医師監修】
- 作成:2021/07/25
血液をサラサラにする薬を飲んでいる人は「納豆を食べてはいけない」と言われることがあります。これは何故でしょうか。
この記事の目安時間は3分です
Q.血液をサラサラにする薬を飲んでいる人は、納豆を食べてはいけない?
A.「ワルファリン」という薬を飲んでいる人は、納豆を避ける必要があります。
血液をサラサラにする薬のうち「ワルファリン」という薬を飲んでいる人が納豆を食べると、薬の効き目が弱くなって、血の塊(血栓)ができやすくなる恐れがあります。ほんの少量であっても、納豆を食べるのは控えることをお勧めします。
納豆に含まれる「ビタミンK」が、「ワルファリン」の働きを邪魔する
血液が固まらないと、ケガをした際に出血し続けて失血死してしまいます。かといって、血液が簡単に固まると、血管の中で血の塊(血栓)ができて心筋梗塞や脳梗塞を起こしてしまうことになります。そのため、血液というのは普段はスムーズに流れるように、出血した際にはすぐに固まるように・・・という風にコントロールされています。このコントロールに、「ビタミンK」は重要な役割を果たしています。
「ワルファリン」は、不整脈などで通常よりも血液が固まりやすくなってしまった人が飲む薬ですが、この「ビタミンK」の作用をブロックすることによって、血液を固まりにくくさせる作用があります1)。そのため、「ワルファリン」を飲んでいる人が「ビタミンK」を豊富に含む食べ物を摂ると、薬では「ビタミンK」の作用をブロックし切れなくなって、血液が固まりやすくなってしまうことになります。つまり、「ビタミンK」が「ワルファリン」の働きを邪魔してしまうことになる、ということです。
「納豆」が特に話題になる2つの理由
上記のような理由から、「ワルファリン」を飲んでいる人は納豆に限らず「ビタミンK」を豊富に含む食品全般に注意する必要があります。しかしその中でも納豆が特に話題になるのには、いくつか理由があります。
まず納豆は、たとえ10gという少ない量であっても、体内の「ビタミンK」の量を大きく増やす2)ことが知られています。通常、納豆は1パック40~50g程度、納豆巻きには20gが含まれることを考えると、たとえ一口程度であっても薬の効果に影響する可能性が考えられます。
また、納豆は食品中に「ビタミンK」を豊富に含んでいるだけでなく、納豆菌が体内で「ビタミンK」をしばらく作り続けます。実際、納豆を食べてから3日後でも「ビタミンK」を作り続けている3)、という研究結果があります。そのため、薬への影響も長期間に渡って続く恐れがあります。
つまり、納豆はたとえ少量であっても、「ワルファリン」の効果に長期間に渡って影響し続ける可能性がある、ということです。
「血液サラサラの薬」には、色々ある
しかし、こういった注意が必要なのは「血液をサラサラにする薬」のうち、抗凝固薬というものに分類される薬の中の「ワルファリン」という薬だけです。巷で「血液をサラサラにする薬」という風に呼ばれる薬には、下記のような色々な薬が含まれているため、納豆を全く避ける必要のない人までが納豆を避けているケースも珍しくありません。自分の薬がどれに該当するのか自信がない人は、一度かかりつけの医師・薬剤師に相談してみてください。
「ネバネバの食べ物」「発酵食品」「大豆食品」は全部ダメ、というわけでもない
「ワルファリン」の効果を弱めてしまう可能性があるのは、ネバネバした食べ物ではなく、「ビタミンK」を豊富に含む食べ物です。納豆のイメージが先行するあまり、ネバネバした食べ物や発酵食品、大豆食品が全てダメだと勘違いしている人も少なくありません。
しかし、たとえばオクラ・長いも・ジュンサイといったネバネバした野菜には大して「ビタミンK」は含まれていないため、特に制限する必要はありません。チーズやヨーグルト、キムチといった発酵食品も避ける必要はありません。
また、納豆に「ビタミナK」が豊富なのは納豆菌の働きによるものです。味噌は、納豆と同じ大豆の発酵食品ですが、納豆菌で発酵させていないため「ビタミンK」の量はそこまで多いわけではありません。同様に、豆腐やきな粉・煮豆などの大豆食品も問題ありません。
一方、緑黄色野菜や海藻類には「ビタミンK」を含んでいるものがあります。その含有量を事細かに把握しておく必要まではありませんが、同じものを大量に食べたり、あるいは全く食べない日があったり・・・といった極端な食生活は避けた方が無難です。
健康食品やサプリメントを使う際も、事前に医師・薬剤師に相談を
健康食品やサプリメントは薬の効果や安全性に影響を与えることがない、と考えている人は多い4)ですが、そんなことはありません。健康食品やサプリメントが薬の効果に影響を与えてしまう事例はたくさんあります。特に、健康食品やサプリメントの使用状況は医師・薬剤師にも伝えていないケースがほとんど5)で、何か不都合が起きた際にも気付かれにくく、重症化しやすい傾向にあります。医師や薬剤師には、自分が使っている薬だけでなく健康食品やサプリメントまでしっかりと情報共有するようにしてください。
なお健康食品やサプリメント等では、実際には「ビタミンK」を含んでいるのに「ビタミンKが入っている」と記載がない商品もかなりたくさんあります6)。「ワルファリン」を飲んでいる人は、たとえビタミンKが入っていなさそうな健康食品やサプリメントであっても、自己判断で使い始める前に必ず医師・薬剤師に相談するようにしてください。
(参考文献)
1) ワーファリン錠 添付文書
2) 日本血栓止血学会誌.7(3):239-243,(1996)
3) Artery. 1990;17(4):189-201.PMID:2360879
4) 医療薬学.29(2):237-246,(2003)
5) 内閣府「消費者の「健康食品」の利用に関する実態調査(アンケート調査)」
6) 医学と薬学.51(2):343-45,(2004)
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