なぜ薬剤師は、薬局で医師と同じことを聞くのか しっかり答えた方が良い理由は?
- 作成:2021/11/05
病院で医師の診察を受けて処方箋をもらい、その処方箋を持って薬局へ行く・・・医薬分業が進んでこの流れは当たり前のように行われています。しかしこの時、「さっき病院で医師に聞かれたことと同じことを、また薬局で薬剤師から聞かれる」という経験をした人は多いと思います。一見すると、ただの二度手間のように感じるこのやりとり、いったい何のために行われているのでしょうか?
この記事の目安時間は3分です
医師と薬剤師は、全く異なる視点で治療を見ている
基本的に、医師と薬剤師では専門が全く異なります。通常、医師は患者さんから聞き取ったお話や検査の結果から、その患者さんの不調やトラブルの原因はどういったところにあるのかを「診断」し、それをどう治療していくかという「治療方針」を決めます。どんな症状があるのか、その症状はいつから始まったのか、どんな時に強まるのか・・・つまり、医師が行う質問は、主に目の前にいる患者さんが「どんな病気かを見極める」、そして「どんな治療方針で進めるかを決定する」ために行われている、ということです。
医師が治療方針を決めたら、“どんな薬をどのように使うか”を記載した「処方箋」を発行しますが、薬局の薬剤師は、この「処方箋」を受け取るところから仕事が始まります。薬剤師は、その患者さんが「処方箋」に書かれた薬を使って治療を行うにあたって、何か大きなリスクに繋がることはないか、ということを確認します。どんな診断をされたか、他にどんな持病があってどんな薬を使っているか、日常的に使っている市販薬や健康食品・サプリメントはないか、場合によってはどんな職業に就いているか、どういった生活をしているか…つまり、薬剤師が行う質問は、主に目の前にいる患者さんが「この薬を安全かつ効果的に使うために何か問題はないか」を確認するために行われている、ということです。
そのため、もし同じような質問をされているように感じたとしても、その質問の意図や目的は大きく違います。より良く安全な治療を受けるために、面倒くさがらずにしっかりと返答することが大事です。
「良い治療」がたくさん重なった結果、「あまり良くない」事態になることも
高齢化が進む日本では、「無病息災」ではなく、1~2つほど何かしらの病気を抱えながらも長生きする、という社会になってきています。こうした社会では、例えば高血圧は循環器内科で○○の薬を、腰痛は整形外科で□□の薬を、水虫は皮膚科で△△の薬を・・・といったように、国民はいくつかの病院にかかって色々な薬を使う機会が多くなります。当然、個々の病院では1つの病気に対してベストな治療が選ばれますが、色々な病院の診療科でそれぞれのベストな治療が選ばれた結果、総合的に見るとあまりベストではない組み合わせになってしまっている・・・といったことは、よく起こります。
こうした“あまり良くない組み合わせ”のまま治療が進んでしまうことを避けるためには、「薬の飲み合わせ」に関する専門知識を持つ薬剤師の目で確認してもらうのが一番です。実際、薬剤師が何か処方に問題を見つけた場合には、「疑義照会」で医師に薬の変更などを提案することになりますが、この「疑義照会」は処方箋36枚につき1回ほどの頻度で行われており、その4回に3回は薬が変更されている、というデータもあります1)。気付かないところで、薬剤師は我々の安全を守ってくれているという事実があります。
薬剤師ともしっかりコミュニケーションを
薬局での薬剤師とのやりとりを「面倒」「二度手間」と感じている人も多いと思います。これには、薬局側の対応のまずさや説明不足が影響している部分もあるかもしれませんが、基本的に全て「患者さんが安全な治療を受けるため」のものです。いい加減な受け答えをすると損をしてしまうのは自分です。より自分に合った治療を進められるよう、薬局の薬剤師ともしっかりコミュニケーションをとっておくことをお勧めします。
1) 平成27年度 全国薬局疑義照会調査報告書
執筆:薬剤師K 調剤薬局勤務、薬剤師10年目
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